明けましておめでとうございます。
内容としては雪崩救助、ファーストエイド、ロープレスキューのアップデート。パウダースキーの教え方。ゲスト、同僚へのコミニケーション。メンタルヘルス(ストレスのコントロール仕方)。スキーのビンディングの調整するための資格講習。エアバックの取り扱い方。会社のポリシー、仕事の仕方の再確認。過去の雪崩事故のケーススタディ。野生動物、自然保護への取り組み。先住民のコミニティとの連携。地球温暖化防止の為のカーボンニュートラルへの取り組み等、正直頭がパンパンになる感じだが、毎年こういうトレーニングを給料が出て受けられるというのは本当にありがたいことだと思います。
ちなみにこの会社は世界で初めてヘリスキーを始めた会社であり、世界最大の山岳ガイド会社(一企業でガイド協会とか組合ではない)でもあります。
ガイドの総勢は150人以上、ヘリスキーのための12個の山域と山小屋(一つ一つの山域が大体日本の立山劔くらいの広さ)から成り立っています。また山小屋のスタッフや事務所のスタッフなどを入れれば総勢500人近くなると言われています。
また同じ国際ガイドやACMGスキーガイドと共に仕事する(所属する山小屋によって違いが毎回7−10人)というのはガイド業界では世界を見ても極めて少なく、ガイド=お山の大将(自分の意見が通らないことない)、というのは全く違う話なのです。
搬送訓練。滑る斜面が崖やクレバスなどが地形の危険度が高いのでビレイが必要なことが多い。やっていることはスキーパトロールの上級職みたいな感じ。
たくさんのガイド同士で仕事するというのはある意味日々のガイディングが毎日試験を受けているようなストレスを感じることもあり、お客だけでなく同僚(プロ)評価を下されるわけでこれ以上ないほど成長できる場所と思う。
なぜなら山岳ガイドというものを考えると常に自分より弱いゲストを連れており、仕事しているのは自分のみのことが多い。何か同レベルの人から指摘されることは少ないし、技術をアップデートするにも自分で求めなければ年に数回だけとかになる傾向にあり、自分より知識があったり、技術的に優れていたり、身体的にすごい人と一緒にいる時間があまりにも少ないというのが個人的な意見である。
シートを外してのヘリに実際に傷病者を乗せるトレーニング。ここでは自分たちが救助隊でもある。
今回受けてみて興味深かったのはやはりメンタルヘルスやコミニケーションの講習で、いかにチームを動かしていくかということとそれに伴うストレスへの向き合い方、自分の向き不向きへの考え方などとても勉強になった。
無数の山々と斜面があるカナダ、その一つ一つが地形や雪のコンディションが違うため、ゲストを連れて滑る前にチェックが必要なことが多い。
リードガイド(チームを率いていくガイドのこと、僕がいるエリアは10人の山岳ガイドからなる)になるためにはスキーがある程度上手くなければガイドできない上、技術的に優れていなければ同僚は認めてくれない。雪崩や救助の知識も高くなければ仲間が信じてくれない現象が起こり、チームを率いていくのは難しい。つまりまずプレイヤーとしてしっかりしていることが大前提。
さらに自分が新人や中堅のガイドを率いてガイディングを行い、指示を出し、教え、時に口論し、いいもの(いいガイディング)を作り上げていく。さらにここにはパイロットと整備士(別にとても山が好きではない人たち)との信頼関係も必要だし、山小屋のスタッフとも助け合って一つの商品を作って遺わけで人間的に成熟していないとできない。
さらにこれに通常のガイド(自分が受け持つグループのゲストのことも楽しませて行かなければならないわけで)あり非常に山岳ガイドとして高度な部類に入るといえよう。
つまり監督業とプレイヤーを両方やらなければいけないというかできる人のみがこの地位に上がっていくのだと感じた。
第二言語でこれをするのは僕個人は99%不可能であり、割り切ってプレイヤーに徹した方が、他のガイドよりもクライミングや山が強いガイドとして評価され、居場所がある感じがする。こういう自分の向いていること、向いていないことを把握するのはとてもいいトレーニングだった。
また同じプロである他のガイドを使って、色々なことをするのは非常に難しいのとストレスを感じるというのがわかったことが収穫だったであろう。そしてこの二つができれば、ガイドの試験官や山岳救助隊の隊員をカナダでなれるかもしれないなという部分も見えてきた。
室内での講習。今回のプレゼンターはカナダ・スキーのナショナルトレーナーの一人。
どのようなタイプのストレスを自分が今被っているか理解することもとても重要だという。なぜならストレスは人を成長させる要因でもあるから。
総括するとチームで仕事することはまた違うチャレンジがあり、そのための能力を必要とする。もちろんカナダにもチームワークに向いていない人はいてそういう人は個々で仕事をしているがこうしてチームで仕事ができる環境もあり、選べるのはとてもいいことだと考える。
世界を見ても日本人でヘリスキーのガイドができるのは約10人程度(テールガイドじゃない)。その中でさらにリードガイドとなればわずか数人わけで、正直限られた人間しかできない世界なわけです。(ちなみにCMHの歴史上、日本人ガイドはたった2人のみ、昔日本人がお客さんとしてたくさんヘリスキーにカナダに来ていた時にガイドになる日本人がいればまた違った形もあったんでしょうが今となっては後の祭り。)
世界中のお客さんをカナダとヨーロッパのプロガイドたちを使って仕事するなんてめちゃくちゃクールなこと。そしてこれが世界中での夏のガイドやクライミングにもつながってると思うとすごい世界ですねやっぱり。
選手権監督を第二言語でできれば、山岳ガイドだけでなくもっとできることが広がるはずだし、日本の若い人たちにはもっとこういう本場で勝負してもらいたいと思う。