どうもご無沙汰しております。山田トシです。日もすっかり長くなりロッキーには春が来ました。ただ、暖かくなったと同時に数十年ぶりの雪崩のサイクルに入ってしまい山はもちろん、道路にも影響が出るほど大きな雪崩がロッキー中で起こっているので思うようには登れていません。まあ来週には落ち着くと思いますが。
今回のテーマは私が今季ロッキーで行ったウィンタークライミングを振り返りながらざっくばらんに思ったことを書きます。ロッキーで学んだことを踏まえて書きますので読者の方の参考程度になればと思います。環境が人を育てるというのは本当でロッキーに来て約3年アイス、ミックスクライミングに対する自信は少しずつですが付いてきました(まだまだなのは百も承知ですが)。アルパインクライミングを生きがいにしている自分にとってはこの二つのクライミングは欠かすことはできないので本当に有難いですね。
写真は今シーズンにトライした[MIXED MONSTER M8]の1ピッチ目です。
その2ピッチ目終了点からの写真。
ロッキーにはハードなミックスやアイスクライミングが体験できる自分のクライミングが伸びたのはこの環境のお陰です。
写真はその3ピッチ目。
ウィンタークライミングはフリークライミングと違い多くのギアを使います。まずはリーシュ(赤矢印の紐のこと※クライマーが持つアックスの落下防止)について書いていきます。日本人はリーシュをつけている人がほとんど。カナダ人はほとんどつけていない。どちらがいいのか。私は状況に応じて使い分けるのがいいという結論に達しました。クライミングはシンプルであればあるほどカッコイイし楽ですね。アイスやミックスに慣れてきたらスタイルをこだわるのもイイと思います。道具は昔と違い進歩してますからね。リーシュがない方がはっきり言って疲れないし早く登れる。アイスクライミングならたとえマルチピッチだとしても付けないことが多いです。氷に刺さっているアックスは余程のことがない限り落としません。今まで落としたことは一度だけあるんですが、それはビレー点で適当に刺したアックスを触ってしまい落としたもので登っている時はありません。ミックスクライミングは傾斜の緩いM6,7-位までなら付けた方が良く、それ以上はない方がいいと思っています。理由はムーブが妨げられない、落ちた時(難しいから落ちる可能性が高い)に自分にアックスが跳ね返ってくることがある。傾斜が緩い壁は基本的にホールドが浅くアックスがホールドから抜ける可能性が高くプロテクションを取る時などに引っ掛けていて外れることがある。アルパインクライミングは山で落としたらその後の行動と金銭面的にも致命的なのであった方がいいですね。
写真その4ピッチ目。(写真:Micheal Kadaz)
ハードなミックスの場合最近はシングルロープで登ってバックロープを引いていくことにしています。こうすることでロープの交差を気にせずクライミングに集中できる。ロープが半分以上出ていたとしても懸垂することができる。アックスを落としたり何かアクシデントがあってもパートナーに助けてもらえる。荷上げ用にも使える。
この写真のピッチで派手にフォールしてブチ切れたリーシュの金具が歯に当たって前歯が少し
欠けました。なのでハードなピッチはリーシュレスを推奨します。
写真は今年開拓されたばかりの[Nasty Habit]を登る谷。
写真のように氷の後ろが壁から浮いていたり宙に浮いている氷柱(ハンギングダガー)を登る場合。
登れるかどうかは正直氷の状態を間近で見てみないと分からない。登れるかどうか私の思考回路はこんな感じ。
1・氷を恐る恐る叩いて見ること→氷を叩いて氷に亀裂が入ったら厳しいですね。
2・音と振動→中が空洞でバリバリ壊れる場合は厳しいですね。氷を叩いてぶ〜んという音とともに振動が激しい場合も考えものですね。ドスという音の場合は経験上登れる可能性が高いです(判断は自己責任でお願いしますね)。
3・何とか身体を保持してくれそうな氷柱だと判断した場合氷柱の破断ラインを確認します。写真の氷の場合は赤線より下が破断ライン(壁から浮いている所です)。その線より下を叩いたり乗ったりしたら氷柱が折れる可能性があります。そのラインではプロテクションは取れません。(氷柱が大きい場合や下と繋がっているものは取りますよ)
4・できる限り破断ラインに近い部分、その上の部分から取り付くように努力する。上に行けば行くほど支持力が強いです。
5・後はムーブを確認して思い切って乗移りましょう。完全に乗り移ってしまえば後はいつも通りアイスクライミングをするだけです。ただ破断面より腕や足が下にある場合は強く叩いたらダメですよ。
他の人はどう判断して登っているのでしょう?気になります。
写真は[Ohlala 1p目 上部氷柱に移る直前 M8](写真:石原幸江さん)
ミックスクライミングの核心は氷の乗移りの場合が多いです。ドライツーリング(岩をアックスで登ること)で消耗した腕にアックスを振る動作は拷問に近いです。しかもプロテクションはすぐに取れないのでランナウトが基本になります。アイスクライミングで強くなりたいならアックスをたくさん振ることだと思います。状態の悪い氷を登る場合は氷の表面を壊さなくてはいけないしまだ誰にも登られていない氷は自分で穴を作らないといけません。アイスクライミングの難しさはグレードではなく氷の状態であると言っても過言ではありません。誰も登っていないWI4はたくさん登られたWI5よりも難しいです。プロテクションが取れない状況(状態の悪いアイス)ではアックスの効きだけが頼りです。引っ掛けに頼らずしっかりと打ち込む癖を付けた方がいいと思います。グレードではなく色んな状態の氷を登ることで強いアイスクライマーになるはずです。
写真は今シーズン結構通った我がドラツーゲレンデ[エルドラド]で登るボブ菊池。
ロッキーに数あるゲレンデの中でもロケーション、交通費、ルートの質、日当たりどれを取ってもNo.1だと思います。ドライツーリングはパンプしてからが勝負。何度極限のパンプを体験してアックスを放り投げたことか。パンプした状態からいかに一定のパワーをレストで回復、維持できるか。淀みなくムーブをこなせるかがキーですね。来シーズンは今年の宿題を片付けるのに忙しくなりそうです。
写真は今シーズンの目標の山(正面のやつです。壁の標高差1000m以上あります。)への偵察山行の時のもの。
久々に重荷を背負っての行動は疲れましたが、大きな山を前に気が引き締まりました。やっぱり山はいいですねー。なんとか登れる状態を本番まで保ってくれてればいいのですが。。。
最後に日本から友人が遊びに来てくれた(現在進行中です。)ので一緒にプチアルパインクライムへ。正面の頂上(Lodder Peak)を一緒に目指しました。国は違えど同じ山岳ガイドを目指す仲間です。懐かしい話に盛り上がりながらいい刺激をもらうことができました。
本当に雑感で終わってしまい申し訳ないですが、今回はここまでにしておきます。来週は兼岩がビシッと決めてくれるので安心です。メンバーに感謝!!私の方は来週からプチアルパイントリップへ出かけてきます。それではまた。
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