記念すべき40回目のLink Upのブログは、夏の間もスキーのことを書き続けて(と言っても2回ですが)、やっと冬の足音が聞こえてきたので、遂に来たな、と思っている秋山が担当します。
今回のテーマは、”スキーガイド”。スキーガイドってなんでしょう。ゲレンデの隅々まで知っていて、スキー場内を一緒に滑るのとはちと違います。それはゲレンデガイドというやつですね。
基本はバックカントリー。スキー場ではない場所、手入れをしていないエリアを新雪目当てのお客さんに安全に滑ってもらうのが、スキーガイドの約目ですね。カナダの場合、スキーガイドの活躍の場としては、ヘリスキー、キャットスキー、山の中にあるロッジ起点で歩くツアリングロッジ、そして日本でもおなじみの道路に停めてそこからあるき始めるいわゆるバックカントリー、全て含まれます。私の場合は主にキャットスキーでガイドし、その他日本に外人と行くツアーや、日本人がカナダに来る際にご案内、と言うかたちでガイドをさせて頂いております。
そんなガイドですが、資格がないとできません。正確にはできないわけではなく、カナダでは国立公園以外ではガイド資格がなくても違法ではありません、また日本では全面的にガイド資格がなくても、俺ガイドと名乗れば、その日からあなたはガイドです。
でもカナダの場合は、ガイド協会から認定を受けたガイドでないと、ガイド会社に雇われることもなければ、お客さんもガイドを依頼してくる事はありません。ガイドと言う文化が根づいているカナダですので、ガイドって名乗る以上は皆同じレベルを持つ、カナダ山岳ガイド協会(以下ACMG)から認定されているガイドということになります。
では、ACMG公認のスキーガイドにはどうやってなれるのでしょうか?
カナダの場合スキーガイド資格の段階は2段階。
ApprenticeとFullです。
Apprenticeとは直訳で”見習い”。でも見習いと言ってもヘリスキーのガイドもできますし、1人で山に行って自分の判断でガイドもします。ただ毎日スーパーバイザーへの報告が義務付けられていという点がApprenticeなのです。
Apprenticeで最低1シーズン、最高3シーズンガイドした後はFullガイドの試験に進まなくては行けません。この辺は日本の日本山岳ガイド協会(JMGA)のスキーガイドと違うところです。ApprenticeはあくまでもApprentice。そのポジションにずっととどまっている訳にはいけないのです。Fullガイドの資格を強制的に受けさせられる。これは結構大変なことなのです。でもガイドのレベルを高い位置で保つという意味では必要な措置といえます。
日本の場合はステージ1と2で別れていて、それぞれが違う職能範囲(ガイドできる範囲が異なる)を持っているというだけで、ステージ1分しかガイドしないので、それ以上は良いやと思えばそこにとどまる事はできるようです(2016年10月現在)。
ということで、そのACMGスキーガイドになる過程を、気になるお金とともにみていきましょう、って言うか自分も今までいくら払ったのか知らないので、この記事を書きながらびっくりしていきたいと思います。
ACMGのスキーガイドコースに行く前に必要な資格
1. Wildernsss First Aid 80時間 10日間で825ドル
→ 北米でアウトドアに関わる人間がまず最初に取る資格が、山での応急救急法です。
80時間なので、たっぷり2週間。聞いたことない医学用語を聞きながら、血まみれ(フェイクですが)の患者を助ける練習を延々します。練習中に何人殺したことか。。
2. CAA AST1コース 2日間 210ドル
→ 雪崩の基礎中の基礎のコース。2日間の座学と実地のコースです。
3. CAA AST2コース 4日間 600ドル
→ 雪崩中級編のコース。AST1よりもっと実地を重視したコースです。
4. CAA Level1コース 8日間 2000ドル
→ 雪に関わる職業(パトロール、ガイドなどなど)の人が取る最初のコースです。
ここまで受け、書類選考にとおるとACMGのApprenticeスキーガイド資格への道が開かれます。
小計24日間、3,635ドル
ガイドコースに行く前に雪崩関連は多く取っておく必要がありますね。
5. ACMG Apprentice ski gudie Alpine skill course 5日間 970ドル
→ 氷河上でのロープ、アイゼン、ピッケルワーク、クレバスレスキューなどを学びます。
6. ACMG Mechanized Course 7日間 2435ドル
→ メカナイズド(Mechanized)とは機械を使ったスキーのことです。機械とはヘリとかキャット(雪上車)ですね。この辺のガイドテクニックは若干特殊なので、それだけにフォーカスしたコースです。
7. ACMG Ski Touring Course 7日間 1850ドル
→ スキーツアリングですので、自分の足で登っていくスタイルのいわゆるバックカントリーガイドとしてのコースです。
上記5-7の成績が良く、試験官達がこいつは受かるなと思うと、次の試験に行くお墨付きがもらえます。明らかに落ちそうなやつは、この時点で来年に回されます。私はスキーが下手だったので、次の年に回された派です、てへ。
8. ACMG Apprentice ski guide Exam 9日間 約3000ドル
→ 上記8行程を終えたらようやく試験にたどり着きます。期間は8日間。精神、体力共にすり減る1週間です。しかも今思えば、本試験に比べてApprentice資格の時はやっぱり楽だったなと、思える自分に乾杯。
小計 28日間、8255ドル
見事Apprentice Ski Guideの試験に受かると、ここでようやくガイドして仕事ができることになります。おめでとー。 ってここまでに既に52日間、11,890ドルかかっていますね。
ぶっちゃけトークですと、このレベルのガイドだと1日日給190-250ドルぐらいです。
そして2年後までにFullスキーガイドの試験に進む必要がありますので、頑張って受験しましょう。
とその前に、雪崩の資格を上級編にあげておく必要があります。
9. CAA Level2 モジュール1 4日間、1200ドル
→ 雪崩のプロとなるコースの座学です。心理学なども入ります
10. CAA Level2 モジュール2 5日間、1500ドル
→ 座学+実地。雪についてからレポートの書き方までみっちりと。
11. CAA Level2 モジュール3 7日間、2000ドル
→ 主に実地。自分がリーダーとなり雪崩チームを率いる練習です。
合否のある試験が最後の数日間あります
12. ACMG Fullスキーガイド Exam 8日間 約3000ドル
→ 1人前のガイドとして旅立てるかどうかを見極める試験です。日中はほとんど試験官からのコメントはなく、黙々とガイドをしていきます。黙って俺についてこい!っ的な感じ出ないと受からないでしょう。
小計 24日間、7700ドル。
ApprenticeとFull合計で、76日間、約2万ドル。これ以外に、コース中、前後の宿泊費、食費、そもそもコース中働けないので無給、コースに入る前に個人の山行記録が必要なので、それに費やす時間。お金に換算すると3万ドルぐらいでしょうか? 日本円で約300万。
そして忘れていけないのが英語。もちろん全部英語でコース、試験は行われます。
これを全てコミットできるのであれば、晴れてガイドになった暁には、”カナダで好きなことやって生きていていいですねー、羨ましい!”って言われるようなバラ色の生活が待っているわけです。
更に国際ガイドになろうと思うと、スキー資格プラス、クライミング系の資格(Apprentice Rock, Apprentice Alpine, Full Alpine)が必要になります。Wilderness First AidとCAA Level1とLevel 2は被りますので、純粋に倍ではないですが、カナダで国際ガイドになるにはざっと合計500万円ぐらい必要でしょうね。
ガイド業界のギャグとして、このガイドバッチ買うのに500万したよー、シーン。みたいのがあります。
左が200万のガイドバッチ、右は日本山岳ガイド協会のバッチです。そうです私日本山岳ガイド協会の資格も持っているんですよー。 |
なんか、秋山さんのガイド料高いなー、なんて一度でも思ったあなた!
高くないんです、高いのは授業料なんです、信じるか信じないかはアナタ次第!
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