こんにちは。今回は山田トシがブログを担当いたします。今年のロッキーは20年に一度と言われているブリティッシュコロンビア側の山火事の影響で、ロッキー中を煙が包み込んでしまい中々厳しいガイディングに奮闘しております。しかし、どんな状況でもポジティブ精神の私は問題ありませんがね。
まあそんな仕事の話はさて置き、楽しいクライミングの話に戻りましょう。今回はこの夏に自分が満足できたクライミングについて書きたい思います。
今年はスポーツクライミングでグレードを追求!!なんて思いながらもいつも心の中には大きな壁を登ってそのてっぺんに立ちたいという欲求みたいなものがあり、しかも忙しいハイキングシーズンに、ガイドトレーニング、と同時進行でやらなくてはいけないこともあっていつも充実したスケジューリングになってしまいます。
写真はそんな合間を縫って登ることができたリムウォール西壁(赤線が登攀ライン)です。この壁はカルガリーからキャンモアに向かう途中にハイウェイ沿いに見えている壁で、いつも運転しながら登りたいと思っていた壁でした。
リムウォール西壁には現在4本のルートが引かれていますが、その中でチョイスしたのがまだ数年前に拓かれたばかりの「Murder by Number 5.11, 450m」です。ルートの初登はロッキーのアルパインクライミングの第一人者の一人であるRaphael Slawinski。彼が山に拓くラインはナチュラルプロテクションをメインにした合理的なラインが多くクリーンで美しいクライミングをすることができます。摂理が乏しいロッキーの石灰岩の壁にこういうラインを引くことができる彼のクライミングセンスと経験にはいつも尊敬してしまいます。
写真は2ピッチ目をリードしている私(上)とフォローしているパートナー(下)です。大きな壁を登る場合、ある程度のランナウトは許容しなくてはなりません。グレードが10-といえど集中力が試されるクライミングを強いられました。
60mの大トラバースピッチ。実は写真中央付近にパートナーが写ってます。大きな壁を登るうえでトラバースパートは必ず出てきます。高度感があって気持ちいいクライミング。
何故クライミングをするのか?そこから見える景色がどんな有名な観光地よりも美しいからと答えても嘘ではない景色が広がっています。いつも見ている山や空や大地も自分の満たされた心と普段見ることのできない角度から見る景色は言葉にできないほど美しく心に染みます。写真はウィンドタワーとマウントロヒ―ド(奥)。
頂上を目指してパートナーと交互に登り、頂上を目指します。あるピッチでは大きなフェースに行く手を阻まれ、浅効きの0.4キャメロットから5メートル横にランナウトして10+のフェースムーブをこなさなくてはなりませんでした。5回以上行ったり来たりムーブを探り、2時間以上粘った末に何とか突破することができました。その後に続く11のピッチもこの粘りのクライミングのお陰かオンサイトすることもできて、チームオンサイトで素晴らしいルートを最高のスタイルで完登することができたのでした。
トップアウトした途端、ロッキーの夏特有の雹と雷の祝福があり、逃げるように下山しました。車から車で16時間の充実したクライミングでした。
ここからは充実したクライミング番外編です。モレーンレイクという観光地へ行く間に見えるマウントバベル西壁(11d、670m)(赤線が登攀ライン)です。こちらは1960年代に初登された大クラシックルートです。昔の人はほんと命かけて登ってますね。今年の夏の目標にしていた山でしたが、壁全体がボロボロで時間がかかってしまい、敗退しました。
壁の標高差600mを超える大物なので日の出と共に取り付く予定でしたが、アプローチにも難儀させられ時間を食ってしまいました。写真は取りつき手前から撮ったバベル西壁です。
見るからにボロイ。。。パートナーと今まで登った中でワーストの壁という意見で一致しました。
かなりヤバイ下部の核心(ボロボロの壁をキャメの00番で5.10のフェースムーブ)は超えたものの、このままではビバークはほぼ確実のため敗退を決定しました。
大きな壁では敗退することも良い経験になります。今回はまだ下部だったのでとてもスムーズに敗退することができました。今回でこの壁の情報や下部の状態も知ることができたので次は完登できるでしょう。パートナーは壁がボロイからあんまり乗り気はしないみたいだけど。。
結果は敗退でも自分が登りたいと思っていた山に挑戦して、今できるクライミングをできたので過程としては充実していたなと思える日でした。
写真は敗退中に見たコンソレーションレイクス。いつも見慣れた湖も上から見ると全く違う色に見えるのが氷河湖の不思議ですね。
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