チーム「Link∞UP」は日本と北米の‘愉快で有益な’「マウンテンライフ」情報を日本と英語圏において共有をすること。 その生活を‘一生懸命楽しんでいる人達’のコネクション強化を図ることを目的に活動しています。 日本や北米でのマウンテンライフについて情報の欲しい方や私達に興味のある方はお気軽にご連絡下さい。

2018年4月25日水曜日

Vol.121 成長を感じた4年目のアルパインシーズン

マウントキッド西壁 核心部を登る山田 写真:ボブ菊池

 皆様ご無沙汰しております。今回は山田トシです。
表題の通り、今季のアルパインクライミングは少し自身の成長を感じることができた。とは言っても自分の思った通りのクライミングができた訳ではない。もっと登りたい山もあったし、ルートもあった。もっとハードなミックスクライミングもしたかった。でもそれを差し引いても今季は「一歩進むことができた」と感じた。
アルパインクライミングにおいて成長を感じることは結構難しい。スポーツのクライミングと違ってグレードだけではいい表すことはできないし、その時の壁の状況、季節、パートナーの違いでも内容は変わってくる。勿論、山や壁の難度は一応はグレーディングされているのだけれど。そんな中で今回感じた成長というのは、自分のアルパインクライミングに対する取り組み方を変えて、それを実践した結果だと思う。
 面白く無いかもしれないが、自身の今季のまとめ、そして少しだけ今後ロッキーへ来るアルパインクライマーの為に?今年実践したいくつかの取り組みと結果を書こうと思うので、どうぞお付き合い宜しく。

1.アルパインクライミングをすること。

昨年のマウントボールの敗退の敗因。ロッキーでの山のクライミング経験が少なすぎる。
※昨年のマウントボール報告書(https://8linkup.blogspot.ca/2017/05/vol71.html
→今季はマウントサーダグラス北西壁
+マウントキッド西壁+フルムーンコーナー初登
がマウントテンプル・スフィンクスフェース冬季第二登という結果に繋がった。

2.従来のプロテクションの見直すこと

ロッキーでアルパインクライミングをしていて、敗退の理由を考えてみるとやはり、プロテクションが取れずに敗退することが多かった。そこで、今までの自分のクライミングを振り返ってみると、登攀中にまともにハーケンを打ったことが無かったことに気が付いた。勿論、いつも持ってはいたが、下降の時に使うくらいで登攀時のプロテクションにしたことは皆無であった。更にその原因はハンマーを持っていないことだと気づいた。私の愛用するノミックにもハンマーは付いているだが、際どい登攀しながら使える代物ではなかった。

→フルムーンコーナーに向かう前の私とボブのやり取り。
 


左:早速購入したハンマー 真ん中:ハーケン各種 右:ノミック

この判断は本当に正解だった。ロッキーでのアルパインにおいてハーケンほど有効なものはない。マウントキッド西壁の核心部取り付きでなんの摂理も無い中、ボブと二人で一時間くらい探してようやくハーケン二枚を打ち込むことができ、登頂することができた。またフルムーンコーナーもテンプルも核心部の際どい個所のプロテクションはどちらもハーケンだった。摂理の多い花崗岩ならいざ知らず、脆いロッキーの壁にはハーケンしかない。

3.山やクライミングに入る前に自分のコンディションをベストにしておくこと。

これは当たり前のことだけど、中々難しい課題。仕事をしていると当然、生活リズムも狂うし、意識をしないとベストのコンディションに持っていくのは難しい。

→今季は一日約12時間働いて、二週間に一回は三、四連休を取り、何時でも山に行ける準備をしておいた。仕事終了の翌日は移動と軽めのクライミングに充て、目標はその次の日とした。
→ルートセッターという仕事柄クライミングはほぼ毎日していたが、それに加えて自分の弱点である部分のストレッチや筋トレも家でできるだけ行った。

有名なマンヨガ2p目

自身のスケジューリングと身体のケアをしたことによってクライミングのパフォーマンスは大分良くなった。安定感が増した様に感じた。

コロンビアアイスフィールド・リトルスノードーム頂上にて。
テンプルの前の予行演習

4.臨機応変に立ち回れるように常に目標を思い描くこと

強いアルパインクライマーは結果を残してくる。たとえそれが当初の予定では無かったにしても状況に応じたベストの目標(自分たちにとって満足の行く)を登ってくる。

→昨年はボールという目標にこだわり過ぎていたため、それが登れないと分かった途端モチベーションが無くなってしまった。今回はロッキーでの冬季登攀の為に10日間の休みを取った。が、本来はテンプルではなく別の山が目的であった。登山許可を取ることができずに第3案であったテンプルを登った。壁のコンディション、天候、そしてまだ冬季は1パーティーしか登られていないという冒険的要素をも考えて、ベストな目標を考え、切り替えることができた。

マウントテンプル 北面
赤:今回のスフィンクスフェース
黄:以前谷と登ったライン

5.少しのアクシデントで諦めないこと

今回、スフィンクスフェースを登攀中にボブのクランポンが壊れるというアクシデントが発生。

→直すことが不可能な状況で、一瞬沈黙が流れたがなんとか持っていた捨て縄で応急処置をすることができた。メンバーの一人でもここで止めようと言っていたら登りきることはできなかっただろう。リスクを考えた上でそれを受け入れ先へ進むことで、それが経験となってさらに強いクライマーになれると思う。アルパインクライミングでは言い訳をして敗退することはいつも簡単だ。

スフィンクスフェース
威圧的な壁を見上げるボブ

スフィンクスフェース・ヘッドウォールはもう近い

クランポンの故障、寒いビバークを乗り越えて核心部を突破

悪天候へと変わる中、トップアウト
今季自分のFBで一番好評だった写真 
フルムーンコーナー取り付きにて
写真:ボブ菊池


来年はそろそろ海外遠征か?ロッキーから世界へ。これからも自身の成長を糧に登り続けます。でもその前にアルパインガイドの試験がやって来る。。。ナーバスですが、どちらも自分にとっての冒険だと思って頑張ります。

最後になりますが、いつもサポートして下さってるミレーの皆様、一緒に登ってくれたパートナー、心配してくれている家族に対してこの場を借りてお礼申し上げます。









0 件のコメント:

コメントを投稿