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2017年10月13日金曜日

Vol.93 子連れ登山 ~1歳半・ベビーキャリア編~

紅葉する笠ヶ岳と朝日岳

赤子がいる、しかし山には行きたい。土日両方ともとは言わない。いや、嫁の許可が下りそうな気配が少しでもあるなら、すかさず両日とも山に捧げたいと申し出るだろう。気持ちはある。気持ちはあるが、勇気はない。子育てを手伝ってくれる親族は周りにいない。子育てを共有あるいは分散できるママ友やママ衆はほとんどいなく、ベビーシッターを雇う金銭的な余裕はまあ無い。そんな状況でいかにして山に行くかということについて考えた時、いくつかの選択肢があると思う。

  1. 妻子を連れて行く
  2. 赤子のみを連れて行く
  3. ダメージを最小限に抑えた上で、妻子を置いていく
  4. 無策のまま妻子を置いて家を出る

本稿のテーマはあくまで1.と2.であり、その具体的な方法についてだが、念のためそれ以外にも簡単に触れておく。

左からマチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢


4.は俗に言う「フリーソロ」と呼ばれるやり方で、クライミング中は中間支点もビレイ点も無く、当然ロープも無い。あるのはチョークバックとクライミングシューズ、そして己の肉体のみ。1つのミスが死に直結するクライミングの中でも最も危険なスタイルである。言い換えると、留守中は妻子と共ににいてくれる友人も義祖母もおらず、当然ベビーシッターもいない。あるのは帰宅した時に誰もいないのではないかという一抹の不安と罪悪感、そして世間からの非難のみ。1つのミスが家庭の崩壊に直結する生き方の中で最もボールドなスタイルである。これを選択することは理論上は可能。昨シーズン、厳冬期のピーカン時には何度か敢行したが、できれば避けたいハイリスクハイリターンな方法である。

行きたい時はどうしても行きたい


次に3.だが、私は主にこれを採用してクライミングや山スキーに出かけてきた。といっても、嫁方の家族の有難いご理解とご協力を賜り、他力本願でなんとか束の間を自由を与えられたに過ぎず、自分で機会を作れたことはほとんど無い。いや、一度も無い。手段は家族ぐるみ(私は関与しない)で遊んでもらう、一時的に実家に帰ってもらう、実家から誰かに遊びに来てもらう。妻の気分転換にもなり、上手く行けばダメージはゼロ。しかし、ヒューマンスキルの欠如により、自らきっかけを作ることができないため、どうしても機会は散発的になる。ならばベビーシッターはどうか。正直金銭面で諦めていたが、最近は時給千円〜であるらしい。どうしても山に行きたい冬は要検討かも知れない。

戸倉城山は里に近く、眺望もある手ごろな山


1.と2.は子供を連れて行くという意味で共通しているが、パートナーが山歩きをリクリエーションとして楽しめるかどうかによって意味合いと効果が微妙に変わってくる。基本的には奥様次第。山歩きを求めているなら一緒に行く、家で一人穏やかに過ごす時間を必要としているなら嫁を置いて息子と出かける方が良い。当家はどちらかというと後者なのだが、子離れができていなかったのか、それとも私が信用されてなかったのか、つい最近まで子供と二人だけで山に出かけることはできなかった。

子供は現在一歳半で歩行も少し安定し、ちょっと躓いてもリカバリーできるようにはなってきた。が、もちろん山歩きをさせるにはまだまだ心もとないため、担ぐ必要がある。大したノウハウも無いのだが、以下に気づき事項をまとめてみた。

大岳山に続く縦走路


目的

率直に申し上げて私の気分転換であり体力維持である。完全燃焼はできないが、二日間も家で腐っているよりは大分マシだ。副次的な目的としては、子供の教育である。

歩けないとはいえ、自然の中で過ごす体験は幼児に少なからず良い影響がある。そういう研究結果も複数件報告されているだろう。なんの権威付けもしないが、ほぼ間違いなさそうだ。そう確信めいたものを感じている。

それは私が近くのジムにポケモンを配置しに出かける時、顕著に現れる。子供は玄関で「僕も連れてってくれ」と両手を宙に差し出して泣くのである。気持ちは痛いほどわかる。こんな金太郎飴のように没個性的で周囲に自然も無い家に二日間もいては息が詰まるのである。最近になって強く感じるのは、子供が父母それぞれに異なるものを求めていることだ。母親には安らぎを、父親には刺激を求めているような気がするのだ。

白毛門の鎖場。ベビーキャリーでは避けるのが無難?


行き先

目的地としての第一条件は、子供の体調や気分が急変した時、すぐになんとかできる環境があることだろう。具体的には、里に近く、エスケープルートが取りやすく、できれば近くにロープウェイ等歩き以外の手段があることだ。転滑落のリスクが高くなるテクニカルなルートはできれば避けたい。落石、落雷、増水、鉄砲水等々外的なリスクもできるだけ排除したい。距離が長すぎて時間がかかると子供が泣き出したり、脱糞したりする可能性があるので、山行時間も抑制する必要がある。

そうすると、起伏が無い森林限界以下の低山がメインで、周囲が急な斜面に囲まれるおそれのある沢地形以外ということになるだろうか。そうすると、自然と初心者向けの山になってしまい、紅葉の行楽シーズンはどうしても人が多くなってしまう。自然に触れたくて山に入っているのに、人に囲まれてしまっては元も子もない。ここが行き先選定の核心である。

西沢渓谷は涼しくて夏でも快適だが、濡れていると滑りやすい


そんな観点でここ一年で以下のような山歩きをしてきた。

山名
山域
時期
年齢
山行時間(hr)
歩行距離(km)
登り標高差(m)
1. 三頭山
奥多摩
11月
7ヵ月
4.0
5.32
573
2. 石割山
富士・御坂
12月
8ヶ月
2.5
4.47
337
3. 日和田山
奥武蔵
12月
8ヶ月
3.0
7.19
441
4. 戸倉城山
奥多摩
2月
10ヶ月
3.0
3.89
331
5. 子ノ権現
奥武蔵
6月
1歳2ヶ月
5.0
11.33
571
6. 西沢渓谷
奥秩父
7月
1歳4ヶ月
3.5
10.96
991
7. 大岳山
奥多摩
10月
1歳6ヶ月
5.0
13.69
1,105
8. 白毛門
谷川
10月
1歳6ヶ月
6.0
6.05
992


控えめに言って1.~5.までは悪くない選択だったと思うが、次第に距離と標高差が高くなっているのが気にかかる。去る日曜日に行った白毛門は鎖場等があり、思っていたよりも山っぽく、ベビーキャリーでの登山には適さなかった。自分の体力的な満足度と妻子の状態を上手くバランスさせられる目的地を選ぶのは結構難しい。少なくとも自分が行きたい山とはかなり変わってくるので、別なモチベーションと調査が必要になる。


注意点

子供の年齢や性格によってかなり異なるため一概には言えないのだが、私は特に体温に気を配る必要性を感じた。背負って歩いている当人は温かく、動き続けている限りその背中も発熱しているのだが、ふと気がつくと子供の手先、足先が冷たくなっていることがあった。手袋や靴下、レッグウォーマー等で末端をカバーすると共に、定期的な確認が必要だ。あと、歩き出してしばらくすると振動のせいか寝入ってしまうことが多い。寝ると子供の体勢が崩れ、背負っているザックの重心が変わったり、顔が少し飛び出したりするので、歩き方や周囲の障害物(特に枝)に気を付ける必要がある。最も避けなければならないのは転滑落で、子供の将来(特に年末年始にこたつでみかんを食べる自由と権利)を奪ってはならない。

なんでも食べてくれるようになると楽になる

補給については、自身の補給と子供の補給の両方を考える必要があるため、少し複雑だ。子供が寝ているとザックが下せず自分が水分補給できないため、ハイドレーションが好ましい。子供の飲食はぐずり出したタイミングや定期的な休憩時に行う範囲で今のところ大きな問題は無い。あと、有難いことに今のところ山中での排便は無い。

ギア

以下に最低限必要なものを列挙してみた。他にもある気がするので、気が付いたら加筆修正していきたい。

  • ベビーキャリー:Macpac POSSUM。貰い物
  • ツェルト:二人用
  • 飲み物:ゼリー状のもの、お茶、ジュース等いくつか用意
  • 食べ物:電子レンジで温める必要のないもの
  • おやつ:2種類程度をその時の気分に合わせて提供
  • 替えのオムツ:山ではパンツ型の方が履かせやすい
  • ティッシュ:多い方が良い
  • ジップロック:汚物やゴミの回収用にいくつか
  • レジャーシート:厚めのクッション性がある方がベター
  • 上着:防風性、保温性のあるもの
  • 靴:開けた場所で歩かせられるように
  • レッグウォーマー:背負った時にできるズボンと靴下の隙間を埋めるため
  • 日よけ帽
  • 手袋


以上、イクメン見習いのカネイワでした。

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