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2018年1月9日火曜日

Vol.106 ACMG(カナダ山岳協会)アルパインガイドトレーニング ーアイスクライミング編ー


リンクアップ読者の皆様、明けましておめでとうございます。山田トシです。祝2018年ですね。今年も楽しく実りあるマウンテンライフを送りたいと思っていますので、どうぞ宜しくお願い致します。

私の年明けはというと、いきなり夏のアルパインガイド試験のためのアイスクライミング試験&講習に参加していました。結果は無事に通過し、ホッと一息ついています。今回はその中で学んだこと、そして全てのアイスクライマーが注意しなければならないことを、ガイド試験の一日に沿って少しだけご紹介したいと思います。写真は私の人生カナダ初アイスの一枚で、カナナスキスにあるKidd Fall(WI4)を登る谷です。
まずカナダのアルパインガイド試験を受けるにあたって大前提となるのが、アイスクライミングができることです。※具体的にはマルチピッチのWI5が自信を持って登れる技術が必要です。定番の試験コースには有名なWeeping Wallも含まれています。
ロッキーにおけるアルパインガイドの冬の仕事はアイスクライミングがほとんどです。世界中からアイスクライミングをするためにロッキーへやってきます。


アイスクライミングガイドの一日はウェザーオブザベーションから始まります。
目的のルートに合わせた地域の天気予報、今までの雪のコンディションそこから出された雪崩の情報を集めます。そしてその結果から、そのルートがコンディションに対して適当な目標であるのか、今日のコンディションに対してどのような危険が内在しているかを総合的に判断し、予定通りに行くのかプランBに変更するべきなのかを決定します。写真のような完全な雪崩地形のルートへ行く場合はこのプロセスが何よりも重要です。最近のACMGスタンダードではアイスクライミングのガイドでもアバランチギアを携行するように推奨されています。今回の試験では実際に雪崩の危険があるルートにはアバランチギアを携行したまま登りました。
※冬のロッキーにおける具体的な気象情報と雪崩の知識等に関してはメンバーの秋山と谷がこのブログ内でかなり詳しく紹介済みなので、そちらを再読して見てください。

アイスクライミングの注意点 谷
https://8linkup.blogspot.ca/2016/12/vol52.html
https://8linkup.blogspot.ca/2017/02/vol59.html

ビーコンについて 秋山
https://8linkup.blogspot.ca/2017/12/vol103.html

雪崩の危険度評価 秋山
https://8linkup.blogspot.ca/2017/10/vol96.html

写真 R&D(WI4)へ向かうボブ

駐車場に着いたら大事なのが装備確認ですね。基本的なことですが、人間なので忘れ物がないとは限りません。長いアプローチをこなした後にクランポン忘れた。。。なんてことがないように、出発前にメンバー全員で再確認します。これは夏ももちろん同じですが、装備の多いアイスクライミングでは特に重要だと思います。もし、ビーコンを持っていく場合にはこの段階で一度全員のビーコンをチェックし合いましょう。電池が切れていたり、ビーコン同士の相性が悪く反応しないこともあるかもしれません。


目標の滝が見えて来ました。この写真を見てどんな危険が想像できますか?ヒントとしては滝に日が当たっていますね。この滝は日当たり良好なロケーションに位置している訳です。そこから考えられる危険性は1.滝の落ち口の雪面から雪崩が起こる。(上が雪崩地形の場合)2.滝の左側の垂れ下がっている氷(ハンギングダガー)が崩壊して落ちてくる。3.氷が暖められて氷が緩む。その結果自分が濡れる、ロープが濡れて凍る、打ち込んだスクリューが緩むなど様々な危険性が判断できます。そういったルート上の危険性を認知し、判断することが大事です。どのようなアプローチをするべきか、どこでビレイをすべきか、どのように登るべきかなどを決定してより安全にアイスクライミングを楽しみたいですね。※危険性はルートとその日の気象条件(気温、天気、雪のコンディションなど)によって変わります。
写真 Oh Le Tabernac(WI5+)。


ようやくクライミング開始です。アイスクライミング中に一番注意しなくてはいけないのが、オーバーヘッドハザードです。リードや他のクライマーが落とした氷がビレイヤー当たって意識不明なんてこともありえます。フリークライミングのビレーと違い、たとえビレーのロープが緩むとしても離れた場所、岩陰になるところなどを選んでビレーすることが必要です。写真のビレイヤーはグッドプレイスでビレイしてますね。
写真 Cascade Kronenbourg P1(WI6)


人気のエリアでは他のパーティと一緒に登らなくてはならないことが多々あります。エリアの小さい日本ではこの可能性はもっと高いと思います。そんな時に大事なことはやはりコミュニケーションです。いくつもラインが取れる場合は写真のようにお互いに意思疎通をし同じスピードで並行して登って行けば、オーバーヘッドハザードを回避しながら同時に登ることができます。ガイドはそのような状況も上手くコミュニケーションを取り円滑に全てのクライマーを尊重しながら登ることも必要になります。
ロッキーではこの冬にこの問題を解決するために一つの安全規約が提案されました。
谷がブログにまとめてくれているので、リンクを張っておきます。

アイスクライミングの安全規約 谷

写真 Weeping Wall


ビレイ解除―。の後はフォローが登り始めます。フォローが登ってくる上でも注意すべき所があります。今回、試験中に一つの事故がありました。別パーティーのフォローが7mほど登った所でフォールし、グランドフォール。その結果足首を解放骨折し、レスキューされたというものです。ビレイは普通にされていたそうですが、写真のようにハーフロープを使っていたため、伸び率が高くグランドフォールしてしまいました。アイスクライミングでは固い氷そしてクランポンの装着によって足を骨折する可能性はかなり高くなります。フリークライミングでも同じですが、出だしのフォロービレイはタイトにするという意識を少し高く持った方がいいと思いました。
写真 Whiteman Falls(WI6)


楽しいクライミングの後は懸垂下降で取り付きに戻ります。アイスクライミングでの懸垂下降で一番良く使う技術と言えばV-thread、日本だとアバラコフですね。アバラコフ作成でもっとも大事なことは氷質が良い所で作るということです。氷は基本的に内側の方が状態が良いことが多いので、表面の氷質が悪い場合は丁寧にアックスで削り内側の良い氷質の所を自分で作ります。氷質が悪い場合はV-threadを二つ作り連結させて下降するのもいいと思います。必ず最初に懸垂するクライマーはバックアップをスクリューで取り下降することは当然ですね。前のパーティーが作成したV-threadを使用する場合は必ず丁寧にチェックして下さい。ガイド的にはV-threadのスリングがしっかりと穴を通っているのを確認できない場合は使用しないですね。もしかしたらV-threadの末端が新たな氷結によって凍っているだけの場合もあります。実際にロッキーではそのような事故が過去にあったと聞きました。一つの失敗が大事故につながる懸垂下降は丁寧にやりましょう。
他の危険性で言えば、凍ったロープでの懸垂下降はロープのスタックやフリクションが利きづらくなるということもあるので、注意が必要です。
写真 Whiteman Falls

夏のアルパインガイド試験を乗り越え、来冬には多くの人にロッキーのアイスクライミングを紹介できるように、精進していきたいと思っています。


今回の試験で行ったルートを調べていたら自分が三年前に登っている動画を偶然見つけました。へたくそですが、友人がユーチューブに挙げてくれていたので、添付します。
「Nothing but the Breast」by Tylor R Davidson。

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