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2018年9月27日木曜日

Vol.142 東京から利尻島までのロードトリップ~2千キロ分の排ガスとジョン・ラスキンの名言~

前回の投稿から早くも6週間が経過し、ブログ当番が回ってきました。通勤電車で必死にスマホを叩きながら、この駄文を捻り出しているカネイワです。本来であれば下手なりにクライミングを頑張ってるアピールをすべきところ、指を怪我してしまいここ一ヶ月全く登れていませんので、今回は直近に行った旅の話をしたいと思います。


足袋前半の見どころである仏が浦の奇岩群

旅の目的はシンプルに「実家に帰ること」で、私の実家は北海道の小樽市というところにあります。かつては北海道開拓の玄関口として栄えた港町ですが、近年は人口が減少し、全国平均よりも早いペースで高齢化が進んでいます。様々な理由で故郷に残る人、故郷を離れる人がいますが、私の場合は後者でした。寂れゆく街の一部として自分が廃れていくような気がして怖かったこと、何より「広い世界を見たい」「どこかに理想郷があるはず」という夢見がちな若者であったこと、などが理由ではなかったかと思います。


津軽海峡の夕陽

そんな感傷はさておき、今回はそれに「家族旅行」という目的が加わり、小樽から利尻島を往復することになりました。最初は飛行機で新千歳空港入りすることも考えたのですが、コストが高く、現地で車を使えないデメリットがあったため、最終的にはコストが低い大間(下北半島)・函館間のフェリーを使用し、道中に東北観光や登山を含めます。往復はさすがにしんどいので、帰りは小樽・新潟間のフェリーを利用することにしました。車での移動は短く見積もっても2千キロを超えます。期間は2つの3連休をつないで10日間を確保しました。


場所の旅も乙かもしれない(小岩井農場の馬車鉄道)

「あらゆる旅は、その速さに比例してつまらなくなる」と言った人がいるようですが、私も概ねそのように感じています。そういう意味では徒歩や人力での縦断や横断というのが旅を充実させるためにはベスト、ということになりそうですが、私はこれまで一度もこのような試みをしたことがありません。つまり、「徒歩による日本縦断」や「人力による百名山」のような試みです。「移動」を目的地に着くための「手段」として捉え、目的の一部として捉えていなかったからだと思います。


登山は取付きまでは歩かなくてもいい?

以前、中学の英語の教科書(「Sunshine」でした)で英国人が、クミちゃんをロンドンの空港(ヒースローだと思う)で出迎えたタイミングで「How was your travel?」みたいなことを尋ねているのを読んで混乱したことがあります。「飛行機での移動なんて『travel』じゃねぇよ!本当の『travel』はこれから始まるんじゃ!」と思っていました。もちろん、クミちゃんは表面的な笑顔を取り繕いながら「This is an egg」的な文法的に正しい返事をしていましたが、心の底では私と同じことを思っていたことでしょう。

お祭り会場じゃなくても大迫力(ねぶたの家 ワ・ラッセ)

移動の速度や手段が旅の充実度にどう影響するのか、という問題は一旦横に置いて、この旅に求められたものの話をします。第一に家族の思い出作り
であり、また同時に旅の過程で家族の構成メンバーが個々の欲求を満たすことでした。それは私にとっては山と未だ見ぬ景色、妻にとってはねぶた祭り(でっかいハリボテ)とローカルフード、2歳の息子にとっては電車(乗り物)でした。家庭と山の両立というのが、私にとっては引き続き切実なテーマとなっております。


合体を待つ新幹線「はやぶさ」。新幹線の旅もものすごく速いだろう。

初日は深夜のうちに出発し、東北自動車道をひたすら北上。行ったことのある仙台や時間のかかりそうな平泉などは割り切って寄らないことにし、いきなり盛岡まで走りました。ここまでの道のりはほとんど記憶にないので、そこそこのスピードで旅を楽しんでいた(つまらなくなしていた)ことがわかります。ここでは「ソウルフード」と呼ばれる?福田パンのコッペパンを食し、盛岡駅で息子の愛する「はやぶさ」と「こまち」の合体を見学し、八幡平へ向かいました。


息子が「うみ!」と言って憚らなかった八幡沼

岩手と青森はほぼ初めて来る場所なので、寄れる場所にはできるだけ寄っておこうと、いくつかの百名山を旅のプランに忍ばせておきました。八幡平はおそらく百名山の中でも最もピークまでの距離が近く、標高差も無い山なので、夕方に駐車場を出て、子供をベビーキャリアに載せた状態で一時間で回ることができました。


広大な八幡平の森

深田さんは「八幡平の真価は、やはり高原逍遥にあるだろう」と書いていましたが、短い歩きの中でも湿地の美しさは際立っていました。また、「こういう地形は当然スキーには好適」とも書いておられましたが、個人的には斜度が無く滑りの楽しみが少なさそうに見受けられました。とはいえ、道路の除雪前であれば、人の少ない広大な原始の山になるはずなので、道路の除雪前に何日かかけてするスキーツアーなら楽しめそうにも思えました。

初日の宿。子供は好奇心旺盛なので常に注意が必要。

ハイキングの後は安比高原に移動し、冬ならスキー宿と呼べそうな個人経営の宿に泊まりました。宿泊は一人なら車で済ませたいのですが、家族旅行ともなるとそういう訳にもいかず、子供も一緒に寝れる部屋(できれば和室)で息子がおむつに「大」をしても即処理できるバス/トイレがある部屋を選ぶように心がけました。あとは、できるだけ安いことが条件です。

秋田犬ならぬ「あおもり犬」は奈良美智の作。

二日目は下道で北上しながら鉄道関連施設と美術館、そしてねぶた祭りで使われたハリボテを展示している場所へ行きました。妻は以前からこれが見たかったそうなので、1つの欲求が解消され、そしてこれでねぶた祭りには行かなくてよくなったので、一石二鳥です。私は人が集まる場所が何より苦手で、祭りなどの類はできるだけ避けたいのです。夏の暑い日に人が密集する場所に行くなどというのは、私には耐えられません。この日は早く寝て、三日目の早朝に妻子のいる宿を抜け出し、一路酸ヶ湯を目指しました。

八甲田山の湿原は聞きしに勝る美しさでした

八甲田大岳は子供を背負って行くにはやや長かったため一人で行くことにし、酸ヶ湯を起点に大岳を周回して約2時間。早朝の湿地が素晴らしく爽快で、ここも改めて訪れたい山となりました。岩手山、岩木山もいつかは行きたいのですが、どちらかというと斜度があって滑りも楽しめそうなので、冬の楽しみとしてとっておくことにしました。

恐山は快晴

早朝の登山を終え、再び青森市内の宿に戻ってもまだ朝です。ここまでで走行距離約800km。ガソリンが高止まりしているのがボディブローのように効いてきましたが、走り続けます。この日は鉄道関連施設として下北交通 大畑出張所へ行き、弘前でナポレオンなるものを食し、スピリチャルスポットとして憧れの恐山へ。今回はイタコのテントも無いし、ド快晴で地獄的な雰囲気が皆無の純粋な天国スポットでしたので、濃霧で視界がほとんどないときに、いつかイタコを訪ねたいと思います。また、登れるんじゃないの?と思っていた仏が浦の針峰たちは触ってみるとガビガビのモロモロでした。

一見登れそうな?仏が浦の奇岩群

最後に宿泊する民宿の近くでマグロとウニを頂いて床に就きました。下北半島は初めてでしたが、メジャーな観光スポットはある程度回れたように思います。あとは縫道石山でのクライミングをいつかやってみたいですね。ここまででだいたい半分の千キロとなりましたので、津軽海峡を渡るのは次回にしたいと思います。


ちょっと色は悪いですが、ミョウバンを使用しないそのままのウニ。

続きがあれば、またお付き合いください。

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