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2018年11月15日木曜日

Vol.149 地獄のスライドショーとトシという怪人

こんにちは、イクメンくそやろうです!巷ではウルトラライトスタイルに凝る人を、親しみを込めて「ウルトラライトくそやろう」と呼ぶそうですが、「イクメンくそやろう」は普段巧妙に育児をしている風に見せながらも、自分の山は決して諦めない、ガチなくそやろうです。というか、まぁ、できる限り自分の子供の世話をするというのは、別に「イクメン」とかいうやつらの特権ではなくて、普通の「父親」としての役割の1つであるように思えます。しかし、そこを過大に表現してしまうとしたら、それは世間へのアピールや弁解であって、それはなんとなくダサい気がします。

御岳での子連れハイキング

しかし、なぜそんなダサいことをするかという部分を少し掘り下げると、くそやろうの中に潜む闇の輪郭が浮かび上がってくるように思います。それは、時に子供をほったらかして登山やクライミングという危険な遊びに興じている罪悪感を誤魔化すためであったり、自身が社会の一員でありその責務を全うしているんだぜ、というポーズをとっておくためだったりするのでしょう。こうして私がしょうもない記事を書いている間も、私は何らかの共同体の一員であり、そのための貢献を求められているのです(このリンクアップのブログなんかもまさにそうですね)。そういう意味で、子供を置いて山に行くということが最も自然なのは、そこへ行くことが、所属する共同体もしくは公共の利益になることなのです。

それには例えば、「マンモス捕まえてみんなの食糧にすんべ」とか「ここ寒いから南下すべし。俺ら命かけて南の方偵察してくんぜ」とか「あの崖に生えてる草、マジ万病に効くから採ってくんぜ」とかいうような、大義のようなものが必要なのです。さすれば、我々は「普段はイクメンやってるから」とか「独身だから」とか言い訳せずに、野山を駆けずり回ることができるのです。なぜならそれがその共同体にとっての生きる道であり、正義だからです。

最近は近場で週一クライミングが限界

しかし、遺伝子組み換えやハウス栽培、AIによって選別される摘み取り作業などで高度化した農業、マシーンで餌やりや屠殺から解体まで行われるような食肉産業、バイオだとかゲノムだとかで成長を続ける製薬会社とかによって、そんなことは全くもって不要なわけです。むしろ、時には遭難により救助にあたるものの身をも危険に晒し、時には怪我や病気によって後々まで障害が残るようなリスクを負ってまで、まるで何の生産性も無い行為に身を委ねることは、どちらかというと悪であり、控えめに言っても害悪であるような気さえします。

私はたまに思う。「人工知能とか、ゲノムとか、ドローンとか、フィンテックとか、マジもうどっかいってくれ」と。そして、「マンモスと未知なる土地への希望と不安、そして崖にしか生えていないような薬草をもっとくれ」と。おそらく、私は生まれてくる時代を間違えたのでしょう。なんだか、いつも同じような愚痴を書いているような気がします...。

公開・トシのポケットの中身

前置きが長くなりましたが、そんなような想いをオブラートに包んで表現すべく、私も怪人・山田利行(以下、単に「トシ」とする)の巧妙な罠にハマり、10月に名古屋の地へ赴きました。テーマは「いかにして現代におけるマンモス狩りを正当化するか」です。正直なところ、私はスライドショーなんてやりたくなかったし、自らが主体的になってこのようなイベントに参加するようなことは、当初、彼から世間話的な感じで「やってよ~」みたいな綿毛のように軽いノリのメッセージに、「しょうがねぇな」的な返答をした時は思ってもみませんでした。

そもそも、私にはわざわざ人前で話すような大それた体験や、人のためになる機知に富んだ小話のストックが無かったし、それでも笑って許してくれるような寛容なお客様像も思い描けませんでした。ブログであれば無料だし、読みたい人だけが読んでくれればいいし、その反応も「いいね」のだとかリーチだとかビュー数だとかの無機質な数字と向き合うだけで良いのですが、リアルなイベントとなると話が違ってきます。物理的に人が動くし、反応は表情に如実に表れるから、逃げようがない。確かにスライドショーも興味のある人だけが来るのでしょうが、お金を払って来てもらうというのは、結果に対する心理的なプレッシャーが重いのです。しかも、言い出しっぺであるトシのビジョンはブロッケン現象のように朧気で掴みどころがない。その割にイベントオーガナイザーの朝日様のような善意の第三者を巻き込んで、話を進めている。

瑞浪は午後の「原住民」に苦戦するクライマー・トシ

こいつは危険だ。なんとか抜け出す術はないかと最後まで模索しておりましたが、最終的に朝日様が会場を押さえてしまったので諦めることにしました。それまで私なりに必要最低限のギリギリの積極性でこの企画に携わってきましたが、これを機に「やらねば」と思うようになりました。単純に、このスライドショーなるものが惨めな結果に終わるのが恐かったからであり、ようやく当事者意識が生まれてきたからでもありました。ただ、最も大きかったのは、これが名古屋というトシの地元でやるということで、彼のつながりによる集客がある程度見込めたから、というのがありました。私ともう1人のメンバーであるケンムラさんには名古屋在住の山関係の知り合いなどほとんどいなく、結局のところ集まっても集まらなくても、トシの「おかげ」や「せい」にできるというのは心理面でかなり楽でした(笑)。

そして、その結果、当日はほとんど満員になりました。当日自分が話したことは既に脳内メモリーから消去しましたが、私が記憶している限り、来てくださった方々の反応は控えめに言っても悪くありませんでした。だいたいの講演会にありがちな「すごい人のすごい話」ではなく「身近な人の楽しい話や頑張ってる話」みたいな内容だったこと、本当に三者三様に内容が違ったことが、新鮮に写ったのではないかと思います。

岩場のテラスから見るのどかな田園風景

私にとっては、何より名古屋のクライミングや登山のコミュニティに触れられたことが新鮮でしたし、普段の「いいね」やリーチなどからは見えてこない、普段ブログを読んでくれている方々に初めてお会いしたり(メンバーのケンムラさんに会ったのも初めてでした)、カナダ、白馬時代のお知り合いと再会したりする貴重な機会となりました。中にはこれからカナダに行くことやガイドになることを真剣に考えていて、遠方からわざわざ足を運んでくださった方々、現地でショップを営む方、山スキーのようなニッチなジャンルに情熱を注ぐ若者たちにも、飲みの席ではありますが会話することができました。そんな当日足を運んでくださった皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました。

とはいえ、こういう講演会を当事者の一人としてまたやりたいか、というと断じて「否」であります。少なくともスピーカーとしては御免こうむりたい。この企画が無事実現できたのはメンバーと朝日様(と当日手伝ってくれた若者)それぞれの貢献によるところが大きいと思うのですが、何より怪人・トシの情熱によるものであるとも思います。トシというのは常にニヤニヤしていて細かい部分はテキトーなのですが、ポジティブシンキング、実行力、義理堅さと情熱はそれを補って余りあり、実はかなり真面目な人間です。今回はそんなトシのために集まってくれた人がほとんどだったのではないだろうか、と思うのです。

公開・トシのワードローブ

「これ無理だろ」というようなサイズのマンモスに「行けるっしょ」くらいのノリで一人無謀に突進しているかのように見えて、実は後ろからのサポートと勝率をそれなりに計算している。そして実際に人と結果がついてくるような不思議な男というのが、今回私が見たトシ像でした。そして山もクライミングも頑張っているのが、彼のスライドショーや無駄にゴツイ体躯から伝わってきました。

そんな訳で、だらだらと長くなってしまいましたが、そろそろ息子に歯を磨かせて寝かしつけなければいけませんので、終わりにしたいと思います。これからもそんなトシとリンクアップを宜しくお願いいたします。

追伸:北海道出身のリンクアップメンバーでありかつイクメン山スキーヤーとしては初の「5.12aを登る」という私の壮大な目標は、超お買い得な12a(11dとも言う)を2テン(ムーブは全部できる)というところまで近づいております。今年は雪が少ないので立山は諦めましたが、12月までにはこれを片付けて気持ちよくスキーをしたいと思っておりますので、冬将軍様、どうか宜しくお願いいたします。

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