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2017年3月30日木曜日

Vol.65 「山と子育て」シーズン1終了


もうすぐ1歳の誕生日を迎える息子に今の心境を聞いてみました。

「vンbン hン」

以上がキーボードを通して伝えられた息子の声です。多少「ヴゥンヴゥン」言っているのが気になりますが、「育ててくれてありがとう」そんな感謝の気持ちがビンビンと伝わってきます。いやぁ、よくぞここまで成長してくれました!父として曲がりなりにも子育てに携わってきたので、喜びもひとしおです。これで来シーズンから心置きなく自分のやりたいことに専念できます!逞しく生きていくんだぞ!

となれば良いのですが、子育ての道のりは長い。まだ始まったばかりなのでしょう。Google に聞いてみたところ上の方に出てきたページを参考に、今後のスケジュールを確認します。



第1段階 夜の授乳が少なくなる頃

「生後半年は、毎日夜中に起こされるので、睡眠不足になります。」
「少しずつ夜中の授乳の間隔があくにしたがって、睡眠時間を取れるようになります。」

うちの場合は、約1年経過する今も2~3時間に一度起きて泣いている状況です。私も状況によって週に数回息子と一緒に寝ることがありますが、最終的な解決がママであり授乳である場合が多いので、その場合は寝ている妻の所へ連れていきます。しかし、赤ちゃんの泣き声に対する反応は、母親の方が断然感度が高いので、泣いているのに私は起きず、妻が起きてくるというケースもままあります。睡眠不足が解消されるとずいぶん楽になりそうですね。

第2段階 言葉を話し出す頃

「自分の気持ちを話したり、要望を言えるようになることで泣く回数が減ってきます。」

今のところ周りに人(特にママ)がいない時によく泣きます。とにかく寂しがり屋で「これから大丈夫だろうか」と心配になるくらいママにべったりです。周囲にいる人の数は多い方が良いらしく、実家に帰ったときなどはとても上機嫌です。人が好きみたいですね。私は人がいない山が好きなので、私と違って朗らかで愛される子に育ってくれるかも、と期待しております。


第3段階 ひとりで食事が出来るころ

「離乳食を過ぎ、自分でお茶碗とスプーンを持って食事が出来るようになると、かなり楽です。」

現在離乳食真っ只中ですが、私はごくたまに食べさせる担当です。が、気に入らなかったり、気分じゃなかったりすると全然食べてくれず、結構面倒。味にも好みがあるようで、甘い味のついたヨーグルトなら大体食べます。そのため、スプーンに盛った離乳食をヨーグルトでコーティングして食べさせることもしばしば。重要なのは栄養補給!

第4段階 オムツがはずれるころ

「オムツがはずれると、感動するくらい楽になります。」

早く感動したいですね。うちの子はやや便秘気味で二三日に一回大きいのをしますが、当たり前ながら臭くて大変です。

第5段階 イヤイヤ期が終了

これは最初からこないことを祈ります。

まとめると、4、5歳くらいには確実に楽になりそうですね?私が40歳になるまでは試練が続きそうです。



振り返ると、息子が生まれたのが昨年の4月第二週。その少し前から妻が里帰り出産で実家に戻っており、2月~3月は山放題でした。昨シーズン最後のスキーが4月第一週の五竜岳 Bルンゼ、白岳沢で、翌週平ヶ岳にツーリングと思っていたら大阪に呼び出され、息子と初対面しました。

あれから一年、長いようで短い時間でした。冬の山スキーをメインの活動と位置づけ、それ以外の山は自粛気味にし、冬に可能な限り自由をもらうという方針に基づき、行動してきました。その時間を確保するための戦略はシンプルに2つ。

1.子育てに差し障りない範囲で行う
2.子育ての役割を代わってもらう


1.では日帰りを基本としたり、泊りがけで出かける時もできるだけ午前中に帰宅するように、1.5日になるように心がけました。具体的にはサクっと午前中までにスティープな斜面を滑れる谷川岳に行ったり、白馬に行く時でも二日目は小日向山にしたりしました。

これまで谷川岳には縁が無く、ほとんど行ったことがありませんでしたが、今年は2度赴きました。一度は早朝から登り始めるも早く着きすぎて、肩の小屋で寒さに震え、マチガ沢本谷を確認するも安全性に疑問が残り、断念。すると対面の四ノ沢をサンライズヒルの「てんちょ」が滑らかに落ちていきました。スプレーの上がり具合、地形的にもこちらの方が安全とみて、この日はシュプールの入った四ノ沢を追随。帰って Facebook 見たら別の人が本谷滑ってました。まぁ、それは仕方がない。そういう日もある。


翌週、今度は初めてのパートナーと暗いうちから改めて本谷を目指した。今度は時間的には良いものの稜線はガスがかかり、再び肩の小屋で待機。そのうちロープウェイアクセスの RSSA お二人が登ってきて歓談する。続いて滑り手や大勢の登山者が登ってきて山頂付近は人だらけに。雪は安定。本谷のドロップポイントで小一時間ガス明けを待つもその日はダメで、そのまま西黒沢を下降しました。どうも天神平は晴れていたらしく、西黒沢はヒャッホーした人のシュプールだらけ。帰って Facebook 見たら RSSA のお二人は一ノ倉沢を滑ってました。まぁ、それは長年の経験と実行力の賜物として、翌日は晴れたというのは何ともやりきれなかった。

これにより精神的な傷を負い鬱となったため、谷川岳からは撤退しました。

その後は長い一日と半日を組み合わせた1.5日山行でそれなりに楽しめましたが、思うような成果は上がらずでした。2年ぶりに不帰2峰を滑れて良かったですが…。

話が飛びましたが、2.は「嫁の実家」これしか無いという無策ぶりではありましたが、3月頭に少し帰省してくれたのが大変な助けになりました。その後も「朝まで生テレビ」をほうふつとさせる妻との激論、裏取引等の末、今シーズンもそれなりの日数を雪山で過ごすことが出来ました。初滑りから数えた日数にして22日。カレンダー通りの土日祝日が約40日なので、半分くらいは山に行けたということになります。

 年々減り続ける山行日数に「それでいいのか?おまえの人生 たった一度きりの人生」と自問しつつも、子供はかわいいし、別れても養育費を払えるような財力も甲斐性も全く無いので、「山と子育て」は続きます。

2017年3月21日火曜日

Vol.64 ウィンタークライミング雑感

 どうもご無沙汰しております。山田トシです。日もすっかり長くなりロッキーには春が来ました。ただ、暖かくなったと同時に数十年ぶりの雪崩のサイクルに入ってしまい山はもちろん、道路にも影響が出るほど大きな雪崩がロッキー中で起こっているので思うようには登れていません。まあ来週には落ち着くと思いますが。
 今回のテーマは私が今季ロッキーで行ったウィンタークライミングを振り返りながらざっくばらんに思ったことを書きます。ロッキーで学んだことを踏まえて書きますので読者の方の参考程度になればと思います。環境が人を育てるというのは本当でロッキーに来て約3年アイス、ミックスクライミングに対する自信は少しずつですが付いてきました(まだまだなのは百も承知ですが)。アルパインクライミングを生きがいにしている自分にとってはこの二つのクライミングは欠かすことはできないので本当に有難いですね。
 写真は今シーズンにトライした[MIXED MONSTER M8]の1ピッチ目です。
その2ピッチ目終了点からの写真。
ロッキーにはハードなミックスやアイスクライミングが体験できる自分のクライミングが伸びたのはこの環境のお陰です。
 写真はその3ピッチ目。
ウィンタークライミングはフリークライミングと違い多くのギアを使います。まずはリーシュ(赤矢印の紐のこと※クライマーが持つアックスの落下防止)について書いていきます。日本人はリーシュをつけている人がほとんど。カナダ人はほとんどつけていない。どちらがいいのか。私は状況に応じて使い分けるのがいいという結論に達しました。クライミングはシンプルであればあるほどカッコイイし楽ですね。アイスやミックスに慣れてきたらスタイルをこだわるのもイイと思います。道具は昔と違い進歩してますからね。リーシュがない方がはっきり言って疲れないし早く登れる。アイスクライミングならたとえマルチピッチだとしても付けないことが多いです。氷に刺さっているアックスは余程のことがない限り落としません。今まで落としたことは一度だけあるんですが、それはビレー点で適当に刺したアックスを触ってしまい落としたもので登っている時はありません。ミックスクライミングは傾斜の緩いM6,7-位までなら付けた方が良く、それ以上はない方がいいと思っています。理由はムーブが妨げられない、落ちた時(難しいから落ちる可能性が高い)に自分にアックスが跳ね返ってくることがある。傾斜が緩い壁は基本的にホールドが浅くアックスがホールドから抜ける可能性が高くプロテクションを取る時などに引っ掛けていて外れることがある。アルパインクライミングは山で落としたらその後の行動と金銭面的にも致命的なのであった方がいいですね。
 写真その4ピッチ目。(写真:Micheal Kadaz)
ハードなミックスの場合最近はシングルロープで登ってバックロープを引いていくことにしています。こうすることでロープの交差を気にせずクライミングに集中できる。ロープが半分以上出ていたとしても懸垂することができる。アックスを落としたり何かアクシデントがあってもパートナーに助けてもらえる。荷上げ用にも使える。
この写真のピッチで派手にフォールしてブチ切れたリーシュの金具が歯に当たって前歯が少し
欠けました。なのでハードなピッチはリーシュレスを推奨します。

写真は今年開拓されたばかりの[Nasty Habit]を登る谷。 
写真のように氷の後ろが壁から浮いていたり宙に浮いている氷柱(ハンギングダガー)を登る場合。
登れるかどうかは正直氷の状態を間近で見てみないと分からない。登れるかどうか私の思考回路はこんな感じ。
1・氷を恐る恐る叩いて見ること→氷を叩いて氷に亀裂が入ったら厳しいですね。
2・音と振動→中が空洞でバリバリ壊れる場合は厳しいですね。氷を叩いてぶ〜んという音とともに振動が激しい場合も考えものですね。ドスという音の場合は経験上登れる可能性が高いです(判断は自己責任でお願いしますね)。
3・何とか身体を保持してくれそうな氷柱だと判断した場合氷柱の破断ラインを確認します。写真の氷の場合は赤線より下が破断ライン(壁から浮いている所です)。その線より下を叩いたり乗ったりしたら氷柱が折れる可能性があります。そのラインではプロテクションは取れません。(氷柱が大きい場合や下と繋がっているものは取りますよ)
4・できる限り破断ラインに近い部分、その上の部分から取り付くように努力する。上に行けば行くほど支持力が強いです。
5・後はムーブを確認して思い切って乗移りましょう。完全に乗り移ってしまえば後はいつも通りアイスクライミングをするだけです。ただ破断面より腕や足が下にある場合は強く叩いたらダメですよ。
他の人はどう判断して登っているのでしょう?気になります。
 写真は[Ohlala 1p目 上部氷柱に移る直前 M8](写真:石原幸江さん)
ミックスクライミングの核心は氷の乗移りの場合が多いです。ドライツーリング(岩をアックスで登ること)で消耗した腕にアックスを振る動作は拷問に近いです。しかもプロテクションはすぐに取れないのでランナウトが基本になります。アイスクライミングで強くなりたいならアックスをたくさん振ることだと思います。状態の悪い氷を登る場合は氷の表面を壊さなくてはいけないしまだ誰にも登られていない氷は自分で穴を作らないといけません。アイスクライミングの難しさはグレードではなく氷の状態であると言っても過言ではありません。誰も登っていないWI4はたくさん登られたWI5よりも難しいです。プロテクションが取れない状況(状態の悪いアイス)ではアックスの効きだけが頼りです。引っ掛けに頼らずしっかりと打ち込む癖を付けた方がいいと思います。グレードではなく色んな状態の氷を登ることで強いアイスクライマーになるはずです。
 写真は今シーズン結構通った我がドラツーゲレンデ[エルドラド]で登るボブ菊池。
ロッキーに数あるゲレンデの中でもロケーション、交通費、ルートの質、日当たりどれを取ってもNo.1だと思います。ドライツーリングはパンプしてからが勝負。何度極限のパンプを体験してアックスを放り投げたことか。パンプした状態からいかに一定のパワーをレストで回復、維持できるか。淀みなくムーブをこなせるかがキーですね。来シーズンは今年の宿題を片付けるのに忙しくなりそうです。
写真は今シーズンの目標の山(正面のやつです。壁の標高差1000m以上あります。)への偵察山行の時のもの。
久々に重荷を背負っての行動は疲れましたが、大きな山を前に気が引き締まりました。やっぱり山はいいですねー。なんとか登れる状態を本番まで保ってくれてればいいのですが。。。
 最後に日本から友人が遊びに来てくれた(現在進行中です。)ので一緒にプチアルパインクライムへ。正面の頂上(Lodder Peak)を一緒に目指しました。国は違えど同じ山岳ガイドを目指す仲間です。懐かしい話に盛り上がりながらいい刺激をもらうことができました。
本当に雑感で終わってしまい申し訳ないですが、今回はここまでにしておきます。来週は兼岩がビシッと決めてくれるので安心です。メンバーに感謝!!私の方は来週からプチアルパイントリップへ出かけてきます。それではまた。