チーム「Link∞UP」は日本と北米の‘愉快で有益な’「マウンテンライフ」情報を日本と英語圏において共有をすること。 その生活を‘一生懸命楽しんでいる人達’のコネクション強化を図ることを目的に活動しています。 日本や北米でのマウンテンライフについて情報の欲しい方や私達に興味のある方はお気軽にご連絡下さい。

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2024年1月15日月曜日

カナダのヘリスキーのガイドトレーニング

 




明けましておめでとうございます。
谷です。
昨年末にCMH(カナディアン・マウンテン・ホリデイズ)のシーズンインのためのトレーニングを4日間で受けてきました。

内容としては雪崩救助、ファーストエイド、ロープレスキューのアップデート。パウダースキーの教え方。ゲスト、同僚へのコミニケーション。メンタルヘルス(ストレスのコントロール仕方)。スキーのビンディングの調整するための資格講習。エアバックの取り扱い方。会社のポリシー、仕事の仕方の再確認。過去の雪崩事故のケーススタディ。野生動物、自然保護への取り組み。先住民のコミニティとの連携。地球温暖化防止の為のカーボンニュートラルへの取り組み等、正直頭がパンパンになる感じだが、毎年こういうトレーニングを給料が出て受けられるというのは本当にありがたいことだと思います。

ちなみにこの会社は世界で初めてヘリスキーを始めた会社であり、世界最大の山岳ガイド会社(一企業でガイド協会とか組合ではない)でもあります。

ガイドの総勢は150人以上、ヘリスキーのための12個の山域と山小屋(一つ一つの山域が大体日本の立山劔くらいの広さ)から成り立っています。また山小屋のスタッフや事務所のスタッフなどを入れれば総勢500人近くなると言われています。

また同じ国際ガイドやACMGスキーガイドと共に仕事する(所属する山小屋によって違いが毎回7−10人)というのはガイド業界では世界を見ても極めて少なく、ガイド=お山の大将(自分の意見が通らないことない)、というのは全く違う話なのです。



搬送訓練。滑る斜面が崖やクレバスなどが地形の危険度が高いのでビレイが必要なことが多い。やっていることはスキーパトロールの上級職みたいな感じ。


たくさんのガイド同士で仕事するというのはある意味日々のガイディングが毎日試験を受けているようなストレスを感じることもあり、お客だけでなく同僚(プロ)評価を下されるわけでこれ以上ないほど成長できる場所と思う。

なぜなら山岳ガイドというものを考えると常に自分より弱いゲストを連れており、仕事しているのは自分のみのことが多い。何か同レベルの人から指摘されることは少ないし、技術をアップデートするにも自分で求めなければ年に数回だけとかになる傾向にあり、自分より知識があったり、技術的に優れていたり、身体的にすごい人と一緒にいる時間があまりにも少ないというのが個人的な意見である。


シートを外してのヘリに実際に傷病者を乗せるトレーニング。ここでは自分たちが救助隊でもある。


今回受けてみて興味深かったのはやはりメンタルヘルスやコミニケーションの講習で、いかにチームを動かしていくかということとそれに伴うストレスへの向き合い方、自分の向き不向きへの考え方などとても勉強になった。


無数の山々と斜面があるカナダ、その一つ一つが地形や雪のコンディションが違うため、ゲストを連れて滑る前にチェックが必要なことが多い。


リードガイド(チームを率いていくガイドのこと、僕がいるエリアは10人の山岳ガイドからなる)になるためにはスキーがある程度上手くなければガイドできない上、技術的に優れていなければ同僚は認めてくれない。雪崩や救助の知識も高くなければ仲間が信じてくれない現象が起こり、チームを率いていくのは難しい。つまりまずプレイヤーとしてしっかりしていることが大前提。

さらに自分が新人や中堅のガイドを率いてガイディングを行い、指示を出し、教え、時に口論し、いいもの(いいガイディング)を作り上げていく。さらにここにはパイロットと整備士(別にとても山が好きではない人たち)との信頼関係も必要だし、山小屋のスタッフとも助け合って一つの商品を作って遺わけで人間的に成熟していないとできない。

さらにこれに通常のガイド(自分が受け持つグループのゲストのことも楽しませて行かなければならないわけで)あり非常に山岳ガイドとして高度な部類に入るといえよう。

つまり監督業とプレイヤーを両方やらなければいけないというかできる人のみがこの地位に上がっていくのだと感じた。

第二言語でこれをするのは僕個人は99%不可能であり、割り切ってプレイヤーに徹した方が、他のガイドよりもクライミングや山が強いガイドとして評価され、居場所がある感じがする。こういう自分の向いていること、向いていないことを把握するのはとてもいいトレーニングだった。

また同じプロである他のガイドを使って、色々なことをするのは非常に難しいのとストレスを感じるというのがわかったことが収穫だったであろう。そしてこの二つができれば、ガイドの試験官や山岳救助隊の隊員をカナダでなれるかもしれないなという部分も見えてきた。



室内での講習。今回のプレゼンターはカナダ・スキーのナショナルトレーナーの一人。

どのようなタイプのストレスを自分が今被っているか理解することもとても重要だという。なぜならストレスは人を成長させる要因でもあるから。


総括するとチームで仕事することはまた違うチャレンジがあり、そのための能力を必要とする。もちろんカナダにもチームワークに向いていない人はいてそういう人は個々で仕事をしているがこうしてチームで仕事ができる環境もあり、選べるのはとてもいいことだと考える。

世界を見ても日本人でヘリスキーのガイドができるのは約10人程度(テールガイドじゃない)。その中でさらにリードガイドとなればわずか数人わけで、正直限られた人間しかできない世界なわけです。(ちなみにCMHの歴史上、日本人ガイドはたった2人のみ、昔日本人がお客さんとしてたくさんヘリスキーにカナダに来ていた時にガイドになる日本人がいればまた違った形もあったんでしょうが今となっては後の祭り。)

世界中のお客さんをカナダとヨーロッパのプロガイドたちを使って仕事するなんてめちゃくちゃクールなこと。そしてこれが世界中での夏のガイドやクライミングにもつながってると思うとすごい世界ですねやっぱり。

選手権監督を第二言語でできれば、山岳ガイドだけでなくもっとできることが広がるはずだし、日本の若い人たちにはもっとこういう本場で勝負してもらいたいと思う。










2019年5月8日水曜日

Vol.172 Mt ランドル カナディアンロッキーの登頂 その12



ご無沙汰してます。
谷です。

さて今回はバンフから見えるあの象徴的な山、ランドル山の登頂をご紹介。
せっかく滞在したならぜひ行って起きましょう。車もいりません。
バンフの街からバスに乗り普通に登ることができる素晴らしい山です。
ただ、標高差約1500mを一日で行って帰ってくるので、上高地から前穂の往復ができる人じゃないと厳しいですね。
もちろんカナダはワイルドなんで、ここに山小屋あるでしょって場所に何もありません。
なので技術は何も必要ないですが、とにかく体力は入ります。
ちなみに過去のロッキーの登頂ブログのリンクはこちら🔽

Mtヤムナスカ
バウンダリーピーク
ハーリンピーク
バカブー イーストポスト
ロダーピーク
テンピークス Mtリトル
ウィルコックスピーク
Mtバルディ
ワプタ Mtトンプソン
Mtアシニボイン
ウィンドタワー

始まりはボウ川沿いのゴルフコースです。
ちょっとわかりづらいので地図乗っけときます。
バスでバンフスプリングスホテルまで行って歩けばバンフのどこに滞在してても相当近いですね。ちなみにキャンモアからもバスがあります。
橋を渡ったら右手のコースを横切ります。


するとこんな感じの景色
これからあそこに登るぞー。
するとこういう看板がすぐ出てきます。
しばらく(5−10分)歩くと
割れてますが看板がもう一つ。ジャンクションになっていて向かって左側の登山道を取ります。看板は直ってるかもしれませんが基本一緒。
登山道は最初こんな感じで緩やか。


途中からこのようなガリーを横切りますが、このあたりはまだ道標あり。

道標がなくなってくるあたりから急で道が不明瞭ですが、木の皮に傷がつけてあって
一応わかるようになっている。

森林限界を過ぎると、ドラゴンズバックと言われる難所のスラブ
上から見た感じ。
ちなみにクライミングしたことある人なら歩きなので何の問題もなし。
経験がない方はガイドを頼みましょう。両サイドが切れ落ちて滑ると危険な場所です。
がれ場を抜けるとファーストピークが見えてくる。
カスケード山やボウ川も眼下に。
ちなみにがれ場が本当にひどいです。ルートファインディングも難しい。日本でがれ場歩いたことない人はガイドといった方がいいです。ベストなラインを登らせてくれます。
がれ場の不安定さは三歩進んで二歩下がる的な感じ。

はい登頂です。


所要時間、登山口のゴルフコースから約9−11時間。
特別な技術は入りませんがヘルメットあってもいいかもしれません。
体力に自信がある方、元気な方、ぜひトライしてください。
バンフの街に戻れば振り返ればいつもランドルがあります。最高ですよ。


2019年3月29日金曜日

Vol.166 ウィンドタワー カナディアンロッキーの登頂その11




ご無沙汰してます。谷です。
もう春めいてる日本ですよね。
ロックのシーズンですか?まだ春山?それとも里山ハイキングでしょうか?
こちらバンフも今日は最高気温15度で暖かいです。
さて夏も近づいてきたので、登頂シリーズをUPしてモチベーション上げて行きましょう。
ちなみに過去のロッキーの登頂ブログのリンクはこちら🔽

Mtヤムナスカ
バウンダリーピーク
ハーリンピーク
バカブー イーストポスト
ロダーピーク
テンピークス Mtリトル
ウィルコックスピーク
Mtバルディ
ワプタ Mtトンプソン
Mtアシニボイン

今回紹介するのはウインドタワーというキャンモアから車で30分ほどのカナナスキスというエリアにある山で、特殊な技術がなくても登れるロッキーの数少ない山の一つ。

しかもそんなに長くなく、眺めは最高というスクランブルの山としては珍しく?程よい山です、なので若者のクライミングのレスト日にも、もってこい。


駐車場が少しわかりづらいのでデータ載せておきます。
キャンモアからグラッシーレイク側、ハイウェイ742号線を南下しましょう。30分ほどで写真にあるSpurling creekという沢に差し掛かります。小さな駐車場なので見逃さないように。わからない人はグーグルマップであらかじめ調べておいた方がいいと思います。

冒頭の写真はキャンモアの街側から見ているのですが、裏側は緩やかな優しい山容。
標高2410mのこの山は行程は往復約10km、約900m登りになります。
時期は5月の後半から10月半ばの雪が降るまでが適期ですね。
実はこのくらいの中級レベルの登頂の山は本当にロッキーには少ないのです。
日本人が知ってるロッキーの登山はハイキング道が整備されていて、簡単で登頂なし。
か、デカくて難しいクライミングと氷河の山しか基本、紹介されません。
僕が今まで何個か紹介してますが、このウインドタワーが初級者から中級者にもってこいの本当にオススメの山の一つ。
だいたい約5−6時間で行って帰ってこれるので気軽に取り付けるし、何より登頂ができるってやはり嬉しいですよね。


登山の始まり、このような森を抜けて森林限界を目指す。
ウィンドパスにて。早い人ならここまで1時間ほど。ここまででも来る価値があり!
ウインドパスからハイウェイ1号線を眺める。
パスから頂上。眩しい。
がれ場と簡単な岩場を通過していく。
特に難しい箇所もなく眺めはどんどん広がる。

最後のがれ場の登り。ちなみにロッキーは登山者が少ないので、
がれ場はいつも安定しない。
つまり日本やヨーロッパに比べるとがれ場が格段に悪い。
がここのがれ場はかなり安定しているので、日本人にも楽しめる。

頂上からキャンモア側を眺める。
やはり登頂の醍醐味はこれ。高い場所がここ以上ない。


アイスラインとか、ラーチバレー、レイクオハラのアルパインコースと同じレベルで頂上まで登れる感じですね。

さらに僕の主観だと、登頂できるスクランブルの他の山、バルディ、ハートマウンテン、ヤムナスカ、EEOR、ハーリンと比べても安全に登れるピークと感じます。
ぜひこの夏の日帰り登頂に入れて見たらいかがですか?
もし自分だけで不安ならガイドを雇えば安心安全です。

では夏が待ちどうしくなったところでアイスクライミングのガイドに行ってきます!!






2019年1月21日月曜日

Vol.158 カナダのドライツーリングのチッピング、そしてチョークによるマーキングについて考える


久しぶりです。谷です。というかあけましておめでとうございます。年明けのガイドの繁忙期が終わったかと思いきや。なんかハリウッドの仕事?をする羽目になり、急遽先週の当番をどろどろスキーヤー兼岩に変わっていただいた形です。カズキほんまありがとー。死ぬほど忙しい二週間が終わり、ようやく普通のアイスガイディングに戻ってるところです。いやー日本でもCMや映画の仕事したけどハリウッド、金持ってますね。ミーハーなんで感動しました。

なんてことしているうちに、書くこと考えてたんですが、12月のアルパインクライミングの記録や今年発売のギア(ノミック、BDウルトラライトスクリューなど)をぶっ壊したりしまくったのでそれについてだとか、前に残した宿題の登山やガイド資格に対する補助金や奨学金など、色々書くことあるんですが、日本の忍者返しの一件を読んで、カナダでも沸き起こっている、ドライツーリングやミックスクライミングのチッピングやチョークでのマーキングについて書いてみようかなと思います。

かなり私見が入るので読みたくない人は、ここでやめた方がいいかもですし、読む人も気楽に読んでもらえたらと思います。

日本で今、問題が起こっているチッピング、グルーイングなど、自然にある課題を人工的に変えるという行為はこのカナディアンロッキーでも90年代まで普通に行われていました。また、それにより、強いクライマー(特にミックス)が生まれたという事実は一応歴史として知っておいていいと思います。ただ、今のこの地域の共通的な考え方は基本夏のクライミングに関してはチッピングはなし!ということですね。わかりやすい。

色々理由はありますが、遠くまで岩場に行く時間もお金もない、ジムないとこに住んでる、もっと難しいものに登りたい、または有名な課題を登りたい(でもみんなが使ってホールドがズルズルだから最初の形にするためにホールドを荒くする)などありますが、
やっぱりだめです。じゃあなたクライミング以外、別のことやればいいでしょって話なんで。クライミング以外にも楽しいことたくさんあるし、所詮は何も生み出してない遊びですから。遊びのために死ぬ必要もないし、遊びのために他のもを傷つける必要もない。ジムが近場になく、岩場に行くお金や時間ないというなら、働く、もしくはその中でできることすればいいじゃんって話です。
ちなみに日本って相当恵まれてますよ。カナダの真ん中の州マニトバなんかに生まれたら
クライミングエリアまで1500キロほど離れてますから。
他の平〜な大陸に生まれた人のこと考えたら文句なんて言えないですよね。

もうこれを話し出したら、世の中なんでこんななの?俺の思い通りになれと言ってるようなものでしょ。自然にあるものを、楽しませてもらっているわけですから、極力何も足さない、引かない。これ別にクライミングに限ったことじゃないです。僕の知り合いの女性が忍者返しの一件について、このような発言をしてて

「自分の娘が将来忍者返しをトライすることはもう永久的にできないと、人の手が加えられたことによってもうあれは忍者返しではない」

という趣旨を言ってたのが心に響きました。

本当に悲しい言葉だなと、クライミングが生涯スポーツと言われる時代、自分の子供たちとその喜びや大変さを共有できないというのはもうほんと、ダメです。そして一部の強強クライマーだけでなく、初中級者の意見や発言する場所もしっかり作らないといけないですよね。山はみんなのものですから(次の世代を含めて)。

さて、ここまではいいとして(ここまでですでに疲れたね。)ここカナダでも冬(アイスアックスとアイゼンによるスポーツドライツーリング)については曖昧な形でした。なぜなら、まずやる人口が圧倒的に少ない、そしてロッキーの岩質がドライツーリングに適していなかったこと、なのにもかかわらずアイスには非常に適していてアイスクライミングのメッカであることなどが挙げられます。またドライツーリング自体、自然の岩を引っ掻いている行為に等しいので、なんとも言えないですよね。やはりロックの方が岩に優しいのは間違いない。

ロッキーの岩質はほとんどが石灰岩で、石灰岩はご存知の通り、海の堆積(サンゴ礁みたいなイメージ)からできており、ミクロの穴が無数に空いており、脆く、急傾斜の岩場が多いです。そして染み出しがすごいです。その染み出しのおかげで冬アイスがどこからかできてきて楽しく登れる寸法な訳ですね。

ただ当たり前ですが、クラックなどの摂理は少なく、ナチュプロで登れるかというと、ほとんどがボルトになってしまいます。さらに摂理が少ないということはフッキングする場所がなく、かなりの数(特にゲレンデ)がドリルによって作られたものになってます。

え?じゃボルトはどうなのって話ですが、カナダはバリーブランチャード(キャンモア在住)パタゴニア初代アルパインアンバサダーの意見が結構、アルパインクライマーには浸透していて、確か2007年のバンフフィルムフェスティバルでの会合で強く述べてますが、もしアルパインの壁で、自分の実力では登れないブランクセクションがあったら俺は登らないと。それは次世代のために残しておくべきだと。そうこうしてるうちに自分のプロジェクトだったマルコ・プレゼリとスティーブ・ハウスが冬のノース・ツウィン登っちゃったよね(笑) みたいな。

未だにそういう経緯を知らないクライマーがボルトをうち足したり、ガイドが安全のためやガイドしやすいために、(特にラペル)打ち足してます、これに関しても議論は尽きないですが、(やはりよくない)脱線が半端ないので戻します。

ボルトないからってこれは無理でしょ。って話。

そして今回カナダで起こった議論の発端は、エルドラドという、キャンモアから車で15分のグロットマウンテンにあるドライツーリングゲレンデで起ったもので、ウィル・ガッドというレッドブルクライマー(キャンモア在住)がエルドラドのあるルートにおいてフッキングする場所に赤のマークをつけてレッドポイントをトライしていたところ、ここの岩場を開拓した一人ラファエル・スワロンスキー(カルガリー在住)ピオレドールクライマーがそれに対して発言したのが始まりです。

もちろん彼らは友達で同じBDアスリートでもあるのですが、畑が違う。同じ超高難度のクライミングをしますが、ラフはアルパインクライマーでウィルはコンペクライマー。違うアプローチで世界を牽引している彼らの意見にみんなが注目してました。

ラフの最初の発言はエルドラドという岩場はなるべく、ナチュラルなフッキングができるルートしか開拓していない。そしてアルパインクライマーのトレーニングになるようにマーキングをして欲しくない、スタンレーヘッドウォールでチョークの跡、見たことないでしょ?という趣旨でした。

それに対してマーキングした、ウィルの言い分はこうでした。

1.ドライツーリング(特に高難度は)非常にオンサイトが難しい。
2.ハンドホールドに比べてフッキングが非常に小さい。
3.手を使わずピックなためなのとブラインドのホールドをフックするのが極めて困難。
4.エルドラドはゲレンデであること(アルパインクライミングではない)


これやった人しかわからないのですが、僕このウィルの言い分よくわかります。
ピックには神経通っていないので、一撃を狙ってる場合本当に難しいですよね。

またラファエルも元々あったフッキングスポットを壊さないため(クライミングエリアやルートを守るという考え方の元)のチッピングについては
容認しているスタンスでした。これは初心者がそのエリアに行ってドライツーリングした場合、結構な確率でホールドや足の置き場を壊すので、それを防ぐために少し穴を大きくしておくということです。

でもその後、色々な意見が飛び交いましたが、まず開拓者であるラフが、エルドラドに数々のヨーロッパクライマーを連れてきていることに言及し、(ヨーロッパは残念ながらドラツーはチッピングのゲレンデが多い。)そのほとんどがマーキングの跡、またはドリルホールドがないことに感激していたそうです(特にスコティッシュクライマーのグレッグ・ボズウェルとフレンチクライマーのジェフ・マーサー)。そして彼らはそのほとんどをオンサイトして帰ったようです。

さらにハフナーやリアルビックドリップなど、先人たちは、チッピングしなくても登れるラインにしかボルトを打たなかったと。ロッククライミングと一緒ですよね。(ただ、これに対してもボルトはいいのって意見もある)それを踏まえた上で、マーキングがなくて登れる、ドリルホールドがなくても登れるならそれが一番いいよねということでこの論争も落ち着く方向のようです。なので今あるゲレンデは今後も維持されますが、今後は新しいチッピングによってドライツーリングのエリアができることはないでしょうね。


もともとウィルとラフは仲良しなので、まあカナダトップクライマーの意見がみんな聞けたのは良かったですよね。結局のところチッピング、岩を汚すマーキングを残す行為など、自然に対して山をやらない人が見ても傷つけたり、汚す行為は良くないですし、クライマーとしても自分以外の人がそのルートをトライするのを邪魔します。


ボルトないからってこれは無理っしょ2

日本も海外の素晴らしいクライマーを平山ユージさんたちがアテンドしたりしていますが、やはり一番いい日本の岩場に連れて行ってあげたいと思うのではないでしょうか?自分の大切な人をクライミング連れて行くときにチッピングしたルートに連れて行きますか?最初に戻りますが、これも一つの答えにならないでしょうか?チッピングのルート登りたいなら、そのルートに行きましょう。そこには歴史が詰まってます。ですが、今、登れるものをチッピングする必要性はやはりどう考えてもないのではないでしょうか?

こうやって他の国でも同じような問題が起こっていること、「知る」ということはとても重要なことかもしれませんね。

自分だけじゃなく、他の人の可能性を削いでしまうチッピングという行為。1000年後の進化した人類なら今、不可能な課題も登ってしまうかもしれないですね。ただ人類のせいでそれまで地球があるかわからないですが(苦笑)。

ではオチがついたところで、また次回。




2018年12月16日日曜日

Back number Vol.150 The truth of Alpine Climbing industry and its future

This story was written by Takeshi Tani
                                                                                                              Translated by Yumiko Mori
Finally with some snow fall in the town of the Rockies just a few days ago, it announced the arrival of the good winter season that many of us are anxiously waiting for.

Already amidst of the full on winter in the mountains, our member Bob and I tried a mix line called Dark Nutue at Lake Louise - Photo above

 Climbing is rapidly gaining popularity in Japan- maybe worldwide as it became a sport that will be competed during the Tokyo 2020 Olympics.
Although various opinions are heard, I definitely believe that having climbing gyms close by gives us great opportunity to boost the craze.
I can't help but feel the sense of envy for people who decided to start climbing at this time. When I started climbing back in Japan many many years ago, the only options were to join Alpine club in the university, community based hard core club or taught by a guide.

I would say last 10 years have shown that rock climbing field opened its door to the public more.

However the opportunities of learning alpine climbing aren't increasing yet or else declining in many countries.
The reasons can be very easy and simple. "Too many uncertain factors that alpine climbing has"
In other words, there are always dangers that you can't control and the high possibility of getting involved in the accident and lead to serious injuries or life threatening experience.


With that being said, popularity of Big Wall free climbing at Yosemite among the top climbers gives the best example in this case.While pushing your limit, you can remove as much uncertainties like avalanches, falling rocks and weather as possible. And even if you got hurt rescue is practically reachable. So there are no doubts that this field has a promise of gaining popularity.

In short, alpine climbing is an activity that you have to accept and manage all of this uncertainty.

Especially when attempting a first ascent, information like snow condition, weather and the affect of the geographical feature that you can get in preparation phase are extremely scarce. Also even minor accident during the attempt like breaking bones can lead to fatal accident.
Scary formula...Breaking bones ⇨Unable to walk⇨frostbite ⇨ hypothermia⇨death
What alpine climbers do is accepting the all possible scenarios and besides finding the best possible line at the edge of your limit.
That's why the sense of accomplishment can't be described in any easy words and makes us to pursue another new line afterwards.

 Nobody wants to lose your life.

Maybe too direct but it's definitely the truth. So if you set your mind and trying to pursue your passion for alpine climbing you will face a huge setback in finding a partner. Furthermore, there are extremely limited opportunity that you can meet someone that you can follow their steps or find any institution that offer a course of pure alpine climbing not to be an Alpine Guide.


Although alpine climbing does contain various factors and you can't entirely rely on your experiences, there is still no doubt that going mountains with experienced alpine climbers provides you with the best lessons.


As I am an Alpine Guide and not an Alpine Climber if you are striving to be an Alpine Climber and took course from a Guide like me, it might not result in meaningful experience. Rather, I would say finding someone who is an Alpine Climber and striving to make effort all the time and trying lines with them would be the best way to enhance your alpine climbing knowledge and skills.

When I was in Japan "Winter Climbers Meeting" was something that is an example of what I just said.This got its idea from UK's "Climbers Meet" and now this meeting took place every year either summer or winter alternatively.

Leading Alpine Climbers from around the world gather and interact with the local climbers.And some find their partners or next project. Sometime this opportunity lead to an amazing results in places like Himalayas.This can be said absolutely great system for aspiring Alpine Climbers.

However in order to participate in this meeting, you need to be at a certain level and it's like representing country in the alpine climbing to attend these meetings.

For people who would like to know how to reach the level, I am going to cover some of other countries approaches in terms of helping new Alpine Climbers improve their skills and abilities.



US/ Alpine Mentors

Term: 2 Years
Fee: Free
Age: It said up until 30 before but I don't see any now
Launched: 2012
Details can be seen via the link above. It's led by a known Alpine Climber and Mountain Guide Steve House.

This year, they are divided into two groups. Surprisingly they hired many Patagonia Ambassadors as an instructor and the field is worldwide. Also this programs yield many first ascents.



Slovenia /Slovenian young alpinists group        *Website not found
Term: 3Years
Fee: Unknown
Age Restriction: Unknown
Launched: 2012
10 young participants are picked from Alpine Association of Slovenia then they chose the objective by themselves. There will be a full support in terms of training, equipment and skills. This tells the strong passion for the Alpinism in Central Europe.


New Zealand/New Zealand Alpine Team
Term: 3Years
Fee: Unknown but I assume it's free
Age:  Between 18-27 
Launched: 2012

It's small group consisting of 3−4 people and they climb and ski everywhere in the world such as Yosemite, Canadian Rockies, Peru, Patagonia and Himalayas to name a few. In the application process there are some trials and looks like trad climbing skills and overall stamina occupy the major part of the criteria to pass the screening. Please refer to the link above for the further details.
 Personally I met one of the teams in the Rockies while doing ice climbing but they are exceptional...
While chatting with them, they told me that the alpine climbing community in New Zealand is also disappearing and they are desperately trying to find solutions to combat the issue and facilitate the growth of new promising alpine climbers.



Austria /Naturfeunde Alpinekader Website not found
Term: 3Years
Fee: Unknown 
Age:   Unknown
Launched 2012
First year started off with sport climbing and then winter mountaineering. From the second year, they began sending members for expeditions. Peru expedition in 2014 is also recorded as their achievement.

All the programs introduced above are launched within last 5-8 years. Sense of crisis for the declining alpine climbing field from each country can be found from this trend.

Other than that, there are Germany, France and Spain but they all took similar system.
France started in 1991, Spain in 1997and Germany in 2000. Most of them are run by its national Alpine Club of each country such as Alpine club of Germany and the programs are generally 2-3 years long. The total of 12 young members consisting of 6 males and females.

Although there are programs run by Alpine Club of Canada called "Leadership Program", to participate, you have to pay the fee and only a couple of one week long courses are currently run throughout a year.
However, there are plenty of scholarship opportunities for mountaineering and avalanche education so there are still some good aspects as well. I would dig deeper specifically about this topic some other time.


Those programs can't necessary cover the whole topics but most programs spent 2-3 years and this means they are gradually getting new young Alpinists ready for their own adventures.Above all, most of them are free and specialize in youth to support the next generation of Alpine Climbers.
Despite the common belief of in order to be stronger and good at it, you need to practice as much as you can and push your limit but in alpine climbing, things doesn't go in that way.

We can all learn from mistakes and like popular saying goes "practice makes perfect" but in alpine climbing even a small mistake can take away your life or serious consequences. So making mistakes often takes away from you doing a second shot.

Especially young people tend to push themselves than they are suppose to be and they do have that vitality to do so. That's why the relationship built through the mentoring system between young aspiring alpine climbers and experienced climbers benefit them significantly.


Just a little bit of off topic, when doing rock climbing, as long as you have solid understandings and skills, pushing your limit can be achieved practically in a easy and safe manner. Also there are plenty of learning opportunities the community like I said at the beginning.  The chance of getting hit by avalanche and falling rocks are significantly lower and even if you break bones the likelihood of dying due to the hypothermia is very slim.

Also the moves on the rocks are extremely fun and you can be creative. This is what makes differences.
Photo above: Crack climbing at Zion

When pushing your limit in the alpine ski field, almost same degrees of danger as alpine climbing accompanies. Even minor mistakes cause avalanche and you can easily lose your life. However, in terms of learning opportunity, ski industry itself has a huge community and popularity. And with the larger amount of the opportunity to be sponsored by companies together with the population of competitive skiers being significantly larger make the industry strong.

                                                                                                                 Photo above: Caribou traverse

Furthermore, in comparison, alpine climbers are always exposed to the dangerous situation whole day or even a couple of days in row but skiers are exposed to the danger less than an hour...

Nonetheless I believe alpine climbing is the very base of mountaineering and in order to reach the peak, you are required to do everything you can, accept and manage all the possible risks and dangers and overcome everything.

I am not expecting sudden blossom of alpine field, but hoping that if we can create a community in which new generation of aspiring climbers can learn and be ready for their alpine climbing.

After researching other countries' programs, I have realized again that it's truly hard to raise new generations of alpine climbers and at the same time I found myself looking for ways to support those programs in my community. To make my dream come true, I need to pursue my own alpine climbing not only my guiding skills to be an Alpine mentor.

Thank you for reading!








2018年11月30日金曜日

Vol.150 世界のアルパインクライミングの学校や師弟制度

ご無沙汰してます、谷です。

冬に入って来ましたが、いかがお過ごしですか?
冒頭の写真はリンクアップの仲間のボブといったDark Nutueというレイクルイーズにあるミックスライン、ロッキーは冬全開ですね。

さて昨今の東京五輪へ向かってのクライミングブームすごいみたいですね。
色々な話をよく耳にするのですが、ジムがあるというのは素晴らしいですね。
ある意味、登山の講習会や学びの場が駅前にあるわけですから。
僕が始めた頃は、登山を学ぶと言うのは大学や社会人のクラブ(山岳会)に属するか、ガイドの講習会くらいしか選択肢がありませんでした。
ここ10年でインドアクライミングに関しては門戸は非常に広がったと言えるのではないでしょうか?
さてそんな中、アルパインクライミング(氷雪を含む)を学ぶ場所というのは未だに増えていません。というか国によっては廃れていく傾向にあるようです。
理由は非常に簡単で、不確定な要素が高すぎる。これに尽きると思います。
もう少しわかりやすくいうと自分の能力でどうにもできない危険が存在し、
それに巻き込まれて怪我または致命的な事態に陥るということです。

トップクライマーのヨセミテビックウォールフリーの記録が一番いい例だと思います。
自分の限界を押し上げる行為の中で不確定な要素(雪崩、落石、気象など)
を比較的避けた状態でトライできる、また怪我をしたとしても救助などが比較的しやすい(天候が安定している、雪崩の危険がない、携帯が通じるなど)
今後このジャンルがもっと伸びていくのは間違い無いでしょう。

さて話を戻してアルパインクライミングはこの全てを自分で受け止める行為とも考えられます。
特に初登攀、初登頂などは情報が少なく、そのエリアの雪質、天候、地形の影響など
全て受け入れ、しかも事故があった場合、足の骨折でも、その結果、歩けない→凍傷、低体温→死亡と簡単な怪我でも死に至ります。
それを全て加味した上で最大限安全なルートを選び、最大限、限界に近いラインを引いていくわけですのでベクトルとしては真逆になります。
だからこそ壁を抜け頂上に立った時の達成感は何者にも代え難いですね。

しかし、みんな死にたくない。
なのでパートナー探しに苦労しますし、師弟関係や登山学校(ガイドになるためや商業的なものは除く)など学びの場は非常に限られます。


アルパインクライミングには色々な要素が本当にあって、全てが経験だけで語れないのですが、やはり経験のあるクライマーといくのが一番の学びであることは変わりません。

僕らガイドはアルパインガイドであってアルパインクライマーでは無いですので、
ガイドに学んだところでアルパインクライマーを目指す若者にはあまり意味のないことかもしれません。やはり今も第一線で登りたいラインを探し、日夜登っている人と一緒に登るこれが一番いいと思います。

僕が日本にいた時はウィンタークライマーズミーティングがそれに当たっていたと思いますが、これはイギリスのクライマーズミートにアイデアを得ており、昔は2年に一回だったクライマーズミートも今は毎年あり、一年は夏、一年は冬、というようにおこなられています。
世界各国から生きのいいクライマーが集い、地元のクライマー達と登り、交流を深め、そしてパートナーを見つけ、ヒマラヤなどで素晴らしい結果を収めていく。素晴らしいシステムだと思います。

ただこれじゃここに参加するってことは国代表じゃんって話ですが、残念ながらそうですね。参加する時点である程度のレベルを求められているのは間違い無いでしょう。

じゃ俺どうやったらそこに行けるの?って話ですが、日本以外の他の国では次世代アルパインクライマーに対してどのような取り組みがおこなられているか見てみましょう。
さーて前置きが長くなりましたが、ここからが本題ですね。


アメリカ/ Alpine Mentors

期間 2年
費用 無料
年齢制限 昔30歳までって書いてたんですが、今見たら見つからないですね。
発足 2012年
詳細はリンクひらけばですが、基本的に世界的アルパインクライマーのスティーブ・ハウス氏が主宰するプログラム。
今年は2グループに分かれて動いてるようですが、講師がパタゴニアアンバサダー目白押しなプログラムですね。
世界中の山々が登れるすごいプログラムですね。
First ascentも結構してますね。

スロベニア/Slovenian young alpinists group ウェブサイト見つからず
期間 3年のプログラム 
費用 不明
年齢制限 不明
発足 2012年
Alpine Association of Sloveniaの中から10人の若者を選出し
彼ら自身で登る山を決め、それに向かってのトレーニング、や装備、技術など全ての面での技術を支援する、とのことです。
熱いですね東欧は。

ニュージーランド/New Zealand Alpine Team
期間 3年
費用 不明ですが多分無料
年齢制限 18−27歳まで
発足 2012年
3−4人の少人数でなるプログラムで、ヨセミテ、カナディアンロッキー、ペルー、パタゴニア、ヒマラヤと世界各地で登り滑る。ニュージーランド人のみも書かれてますね。
参加するには書類選考以外にトライアルがあるようですね。トラッドと体力テストが核心のようです。
詳しくはリンクで。
このチームとはロッキーのアイスで数回会いましたが、マジですごいですね。話を聞くとやはり NZもアルパインクライミングが廃れてきててなんとか若いクライマーを死なないように、育てていくプログラムを必死で考えてるっていってました。

オーストリア/Naturfeunde Alpinekader ウェブサイト見つからず
期間 3年
費用 不明 
年齢制限不明
発足 2012年
最初の年はスポートクライミングから始まり冬山登山、2年目からは遠征が多数あり
2014年はペルーに行ってるようですね。

ここまでは5−8年ほどで立ち上げたプログラムがほとんどです。どの国もアルパインへの危機感があるのでしょう。

あとドイツ、フランス、スペインがあるんですが、すべて似てます。
フランスは1991年からのプログラム、スペインは1997年、ドイツは2000年からです。
このほとんどが国の山岳会によるもので(ドイツ山岳会など)
2−3年のプログラムです。次世代の6人の男性、6人の女性からなるグループで構成されてます。
残念ながら、カナダ山岳会は、リーダーシッププログラムという名前ではあるのですが、
有料で、一週間のコースが年複数回あるだけですね。
ただ登山や雪崩教育の奨学金はかなりあるので、その部分はいいですね。
この話はまだいつか話せたらいいですね。

最後に、
全てを網羅することはできませんが、
こうしてみると2−3年の長い期間でじっくり育てようとしてくれてるのがわかります。
そのほとんどが無料であり、若い世代に限定した特別なプログラムですね。

強くなるためには山に行って自分の限界を押し上げて行くわけですが、アルパインはなかなかそうはいきません。
なぜなら失敗は成功の母と言いますが、
アルパインクライミングではどんな簡単なルートでも
失敗が重大な結果(死)に繋がるという非常に危険な行為でもあるからです。
なので死なない程度に失敗という話はなかなか難しいわけです。


やはり若い頃は無茶をしがちと言いますが、まさに若い時こそ、こういう第一線で活躍するアルパインクライマーと師弟関係を結べる場は素晴らしいと思います。しかも複数年。

他と少し比較しますが、
ロッククライミングで限界を押し上げる場合、
技術がしっかりしていれば、比較的安全に学ぶことができ、
講習も頻繁です。上級者と必ずしも一緒に登る必要性がなく、それでも上手くなっていきます。アルパインと比べ成長の伸び率が早く今やジムはどこにでもあります。
雪崩や落石に遭う確率も格段に低く、骨折しても凍死する可能性は低いと言えます。
しかもロックはムーブが多彩で楽しい!!ここがアイスやミックスと違いですね。
写真はザイオンのクラック。

山岳スキーは限界を押し上げていく場合、同じような危険を伴いますね。危険です。雪崩、少しのミスも命取りですね。ただ業界としてコミュニティーとして学ぶ場所、メーカーのサポート、そしてなりより競技人口などは格段に山より多く、ゲレンデで練習できる、スキー競技のバックグラウンドがあるなど、いろんな意味でも、まだアルパインより学ぶ機会は多い気がします。これに関しても必ずしもメンター(師匠)を得る必要性はなく、仲間で技術をある程度まで押し上げて行くことができると思います。(もちろんいたほうが早い)

さらにいうとアルパインクライマーは一日、いや数日以上全ての危険に晒されますが、
スキーは数十分だけその危険に晒されてることになりますので、やはり危険度で言えば
アルパインクライミングが流行らないのはよくわかります。
写真はカリブー氷河縦走の一コマ。


しかしながらアルパインクライミングというのが登山の原点であり、頂上に行くためには
全てをこなし、全ての危険を受け入れ、そしてそれを乗り越えていく力が必要なわけです。
そのアルパインクライミングが流行らなくてもいいですが、少しづつでも育て応援できるようなコミュニティーを作っていけたら素晴らしいですね。
今回、他の国の登山の教育プログラムを調べてみて改めて若手アルパインクライマーを育てるって難しいんだなと思う反面、やはりそれを頑張っている若者を応援したいと強く感じました。
さて僕もガイドだけでなく、自分の登りも追求し続けないと、アルパインメンターにはなれないですね〜。がんばろー。
ではまた次回。










2018年10月2日火曜日

Vol .143 山について僕が思うこと、(クライミングギアとそれに付随する知識、技術 編)

ご無沙汰してます。谷です。
夏のシーズンも終わり、これから秋のクライミングシーズンですね。カナダはもう冬の様相ですが(涙)さてクライミングシーズンということで今回はクライミングギアの強度に対して、僕たちクライマーがどのような技術使った方がいいのか掘り下げてみたいと思います。色々調べてみると面白いですよね、クライミングは理論的にも。インドアなら基本理解しなくていいものも、外に行く場合、特マルチピッチ以上の登山をする場合、こういう知識はしっかり勉強しておいた方が損はないです。まあわからない場合はぜひ僕に講習頼んでいただいてもいいですよ!


クライミングのカラビナやスリングはなぜ22〜24KNなのか?これは人間の骨盤が破壊されるのが11KNだと言われているので(第1次世界大戦で空挺部隊のハーネスを作成するときに出た指標、ちなみに1KNは大体100kgと考えましょう。厳密には違いますが。)
その2倍の強度を目指しているというところです。なのでどのクライミングギアもマージンを取って22KN前後です。わかりやすいですよね。
ではなぜ2倍か?墜落した場合、支点には2倍の荷重がかかるためですね。
これはみなさんわかりますよね。リードビレイというのはカウンターバランスを使ってるので、
落ちた場合、ビレイヤーの体重も支点にかかるわけです。
そうすると、クライマーに骨盤が折れるほどの荷重(11KN)がかかった場合、ビレイヤー及びロープなど反対側のシステム全てに11KNかかってクライマーの衝撃荷重を止めることになるので、クイックドローなどの支点には22KNかかるわけですね。ランナーが全て吹っ飛んだ場合、アンカーにこの衝撃がかかる可能性がある。なのでアンカーも22KN。
ちなみにこの考え方は、テンションする時も役に立ちます。普通にダメなプロテクション、特にアイスなど
スクリューが良くない場合はフィフィなどでぶら下がった方が、自分の体重のみが支点にかかりますが、テンションしてしまうとビレイヤーの体重もかかることになるので支点が吹っ飛ぶ可能性が高くなります。
なのでアルパインやアイスなどは自分でカラビナやフックを使ってぶら下がるのが賢明ですね。




図で見るとわかりやすい。
リードビレイのシステムでは単純に60kgの人を止めようと思うと60kgの何かが必要なんですね。
ロープやカラビナの摩擦があるので吸収されてビレイヤーにかかる荷重は軽減されるのですが、支点にはクライマーの衝撃の約2倍かかると考えてくれればわかりやすいです。(ちなみに日本だとプリー効果という名前で支点にはで1.7倍かかるはず)

カラビナに数字があるのご存知?この写真でいうと横向き25KN、縦向き10KN
ゲート開き7KN。これ見てわかるようにカラビナの向きにも注意が必要。
なのでトップロープなどの常時チェックできない、向きを直せない場合はカラビナ二個。
そして向きを治せる手に届くところにある場合、ビレイループなど安全環一個で僕たちビレイしてるわけです。
いつでもロックカラビナ二個というわけではないですよね。ちゃんと理由があるのです。

あとアンカーにいっぱいカムとか使う人いますが、経験則だけでなく、この22KNという数字を目指して作ってるんですね。C4の大きなカムなら14KNありますが、小さなカムになれば8KNと強度は落ちます。
またナッツにもちゃんと書いてあるのでその数字を元にアンカーを作成しましょう。
つまり、ちゃんとセットできた場合、大きなカムはいい!!小さなカムは、もう一個またはナッツやハーケンも必要ってことになるわけです。
ちなみにアイススクリューはいい氷の場合一本約10KNです。
氷の質、日射などによっても変わるので、アンカーには3本オススメします。


ルベルソーなどで支点ビレイする場合はカウンターバランスを使いませんので、より小さな荷重しかかかりません。これはすごくいいことですね。支点に優しいわけです。
これは技術によって支点にかかる荷重が減らせるいい例です。
あと、カナダのガイド業界ではリードのビレイも支点ビレイに切り替わってます。
ビックフォールが予想される場合。ムンターで支点ビレイした方が、ビレイヤーへの衝撃がない上、ブレーキハンドを離す確率が少ない、つまりガイドが死なないということですね。

またカナダ山岳ガイド協会では、アンカーは20〜25KNのものを作ることを徹底してます。
理由は上記の通りですね。それ以上のものを作っても人間の骨盤が折れて内臓が潰れ死んじゃうのでカムが六個やボルトが4つのアンカーなんていらないということです。時間の無駄ですね。

ちゃんとした数字を目指せば、感覚ではなく、安全なプロテンクションやアンカーを作ることができます。
しかもギアも減らせて軽い荷物で登頂なんてことにもなるわけです。
プロテクションの数字を見てちゃんとした理由でアンカーを構築できればいうことないですよね。



さて次はスリングやシュリンゲ(こっちだとコードレット)に行きましょう。
ペツルのページを使わせていただきました。
これで見ると日本語でいうと左から6.5mmシュリンゲ、ナイロンスリング、ダイニーマ、ケブラーになります。
ケミカルとかお値段とか省きます。
最初の図で重要なのは伸び率。
ダイニーマとケブラーは全く伸びません。なのでこれで少しでも落ちた場合、非常に危険です。これでセルフとって数十センチ落ちた場合、骨折るかアンカーが崩壊する可能性ありです。
フォールファクター(墜落係数)については今回は触れませんが、伸びないギアを使うことで危険度が高まるシチュエーションがあると考えましょう。
ちなみにナイロンスリングは伸びるんで衝撃荷重がかかった場合強いですね。
勿論シュリンゲはロープと一緒ですので伸縮性が高く、衝撃を吸収してくれます。
僕たちはセルフをロープでとるのはギアを少なくできるからもありますが、最悪のケースの時、
アンカーへの衝撃を減らすためにロープにクローブヒッチでセルフとってるんですね。
なので、どうしてもロープ以外でセルフとりたいという場合ダイニーマより、コネクトアジャストなどいいということです。
さて次に進みます。


この項目で重要なのは熱、そしてエッジ(岩角)に強いかどうかですね。
クライミングで考えられる熱は勿論、摩擦熱。プルージック、クレイムハイストなどフリクションヒッチを
使う場合、レスキューや懸垂のバックアップなど、ダイニーマがいかにダメか出てます。
147度で溶け出すので非常に危険です。
自己脱出の時も使うのは気をつけましょう。プルージックが滑った場合、溶ける可能性がかなりあるということです。
あとエッジですね。落石や岩角に擦れて切れる可能性はシュリンゲはすごい弱いです。ナイロンスリングも弱いですね。パンパンに荷重をかけた状態で懸垂の支点にぶら下がってる時など、上から鋭利な石が落ちてきたら一瞬で切れて、はいさよならです。
じゃあさっき言ってたダイニーマは伸びないからダメって言ってたじゃんって話ですが、ルートによって変わるわけです。例えばアイスクライミングのルートで落石がないとかならシュリンゲがよく、落石が多そうなラペルならダイニーマがいいということになります。重要なのはどのギアがいいというわけでなく、強度や用途を理解して状況に応じたものを選択する、これすなわち技術ですよね。今日のテーマです。

なのでダイニーマは伸びない、カットに強い、そして熱に弱い。
ナイロンスリングは少し伸びる、カットに弱い、熱にはまあまあ強い。
シュリンゲは伸びる、カットにめっちゃ弱い、熱にまあまあ強い。
ケブラーは全く伸びない、カットに強い、熱にも強い。
という結果。

ビジュアルで見たい人はこちらをクリック⇩
DMMのスリングテスト動画

あとスリング類についてもう一つ。
ノット(結び)を作ることによって最低でも30%の強度が減少します。ひどいものは50%。
なので固定分散を作る時どれくらいの強度が失われるか考えておきましょう。
せっかくカムやボルトで20KN以上のものを作ってもスリング類のノットの作り方で
弱いアンカーになってしまう可能性があるからです。

ちなみにガイドはこれらのこと全て考えて、技術を投入してるんですよ。
試験でもこういう理論が常に質問されます。なんでここダイニーマ使ったのって?なんでここにノット作ったのって?なのでガイドはクライミングの上手い人がなるのではなく、クライミングの安全理論がしっかりしてる人がなるんですね。僕たちはロープ職人。

ガイドについてはこちらをクリック⇩
山について僕が思うこと、山岳ガイド編

さてこれで今回は最後、経年劣化。こっちでいうライフタイムです。
以下メーカーに表示されていたものを載せておきます。
こういうことを知っておけば、その場にあったギアやスリングを使い
その場にあった結び方やビレイの方法を使い、安全かつ、楽しく登ることができるわけですね。

耐用年数
この製品の耐用年数は、主に使用の頻 度や状況、その他の外的要素に影響さ れます。
合 成 繊 維 ( ポ リ ア ミド 、 ポ リ エ ス テ ル 、 ダイニーマ)製の製品は、たとえ未使 用でも経年劣化は避けられません。 経 年劣化は、紫外線やその他の環境要因 によって起こります。

最長耐用年数:
未使用かつ適切な状態で保管された場 合(「保管」の箇所を参照)10 年
使用頻度が低い場合:
使用頻度が低く、また保管や使用方法 が正しく、目立った消耗箇所が無い場合 6年
使用頻度が高い、または過酷な状況
で使用する場合:
墜落(落下率< 1)回数が多い場合、 懸垂下降やトップロープでよく使う場合、 砂などの粒子が入った場合、磨耗が激 しい場合(岩角との接触等)は、ロー プが著しく消耗し、寿命を数週間程度に 短くしてしまう場合があります。

さてこれで今回の考察は終わりです。
まだまだ網羅したりませんね、マニアックな課題ですから。
しかしこれで怖いのがC4ウルトラライト買ったのはいいけど、中のワイヤーがダイニーマになって軽量化されてるんで10年しか使えんってことやん。あんなに高かったのに。となるわけです。

オチがついたところでまた次回。


2018年8月12日日曜日

Vol.136 カナディアンロッキーの登頂 その10 Mtアシニボイン



谷です。

さて、この登頂シリーズ記念すべき10回目。
アシニボイン3654mです。
このシリーズはカナダの山をもっと知って欲しいために
基本皆さんが知らないであろうピークを書いて来ましたが、
カナダにクライミングにくる若者も増えて来たので、ぜひ彼らにも町から近い岩場で夏を過ごすのではなく山に登って欲しいという願いを込めクラシックと言われる名峰も
書いてみたいと思います。
ちなみに過去9回のバックナンバー(ぜひ見てください。こんなにカナダの登頂できる山を掲載してるサイトはここだけ!!)
Mtヤムナスカ
バウンダリーピーク
ハーリンピーク
バカブー イーストポスト
ロダーピーク
テンピークス Mtリトル
ウィルコックスピーク
Mtバルディ
ワプタ Mtトンプソン

この山自体の説明はたくさん色々なとこに書かれているので省きます。
簡単にいうとアシニボイン族のテントの形に似ていて、そのテントの中にストーブと煙突があってテントから煙がたなびいている姿が、この山と雲と似ていたという説があります。
よく北米のマッターホルンと言われますが、ヨーロッパのガイドからすればマッターより難しく危険のでガイドあんましたくない、というのが本音だそうです。
理由は、人がいなさすぎるので、整備が基本的にされていない。踏み跡すらよくわからない。
これに尽きます。カナダの山は基本的な登山を日本でしているだけでは登れません。
なぜなら、山の本質である、冒険的要素が残っているからです。
ほぼ人の痕跡がない場所。魅力あるでしょ!!
ハインドハット
小さいがいるものは寝袋と自分の食料のみ。あとのコンロなどの生活用具はは全部小屋にある。

さてまずアプローチですが、アシニボイン登山のベースになるハインドハット(要予約、予約は簡単emailか英語話せるなら電話)へは3つのオプションがあります。
まず、
一つ目、 Flight in 
キャンモアから車で50分ほどのMtシャークというエリアからヘリでアシニボインロッジへ飛び、3時間〜5時間のアプローチをこなしてハインドハットへ。一番楽なのでガイド登山は基本これ。でも金はかかる。ちなみにクライミング慣れてない人はこれも楽じゃない。アプローチのモーザーハイウェイは岩場5.3位。
アシニボインロッジからこれがアプローチのライン。
終点にハインドハットがある。
モーザーハイウェイのアプローチ。これより急なとこもあるし、
ルートファインディングの能力必須。

二つ目、 Mt. Shark trailhead
Mtシャークから35km歩いてアプローチ(もちろん登り降りあり)
元気な子で10ー12時間かかるかな。なんで通常14時間。
若者へは最も定番。理由は車がしょぼいのと金がない。ランニングシューズ使用おすすめ。
道標もあるし間違いようないのでアシニボインパスを超えてロッジへ、そのあとは一つ目と一緒。遠い

三つ目はSettlers Road trailhead 
これはBC州サイドから登るのだが四駆必要なので元気で四駆があるか、レンタカーできればこれが一番近い11kmのアプローチ(6−8時間)
一応グーグルアースの写真載っけときます。アシニボインレイクを超えて氷河超えてがれ場超えてみたいな感じ。



まずアプローチで結構疲れる。キャンプはハインドハットが満室の時のみハットのそばでできるが、基本誰もチェックしに来ないので背負える体力があるやつは暗黙の了解的に許されている現状。
トイレはハットの裏にあり、水場もハットの裏にあり。

この時点で登る人は相当少なくなっているのでルートの不安定さは半端じゃない。
浮石がすごい。

グレイバンド手前のチムニー。


さて肝心の登りですが、一番簡単なルートはN ridge。
僕からいうと、実はここまでくれば晴れて雪がなければかなりの確率登れる山。
核心の二つのバンド、(レッドとグレイ)5.5と書いていますが、すごく短いので
それほどの難しさは感じないはず、ただ雪が付いていた場合と下りは大変。
だいたい登った時間と同じ時間かかります。6−8時間
ちなみにお客さんだと10ー12時間行くことはざらです。
なぜなら懸垂できる支点は数カ所しかないので基本ダウンクライミングなんですね。
ちなみに懸垂の支点は2015年にパークスカナダに打ち変えられてます。
下記詳細

これみてわかるようにロープは1本50mでなんとかなる。でも60mおすすめ。

基本雪がないであろう7月中旬から8月中旬が適期になりますね。
ロッキーは夏でも雪が降るんで天気が悪いあとは雪が付いていると思った方がいいですね。
こうなっていたら基本的にやめましょう。時間かかりすぎで危ない。

さてあとは写真で見て来ましょう。
ハットからはこんながれ場ばかり。
雪が付いているレッドバンド。こうなると基本登頂は難しい。
サミットリッジまで出ればもう終わったも同然。ただの歩きです。
ただこれは全体の3%ほど。


頂上にはサミットレジスターというメモを残せる箱があるので、名前残してもいいですね。ちなみに道標や十字架など一切の人工物なし。なのでガスってた場合高度計とこのレジスターのみです。カナダって感じでしょ。でも多分山の本質ですね。ピークに何もない。

海外のサイトですが写真でイメージしやすいhttps://mountainwagon.com/the-blog/assiniboines-north-ridge-is-a-chossy-mess


さてみなさんも登って見ませんか?アシニボイン。
登攀に最低限必要な技術装備まとめておきます。
装備
カム0.5-2 ナッツ
ビレイ器
アルパインクイックドロー4本
アンカーキット 2組
60mロープ 1本
捨て縄
アイゼン
ピッケル
ハーネス
ヘルメット

技術
地図が読める
ルートファインディング
基本的なクライミングテクニック
クレバスレスキュー(BCアプローチ)
アルパインクライミングの経験(前穂北尾根、北鎌尾根など登れていればOK)
登山靴で5.5登った経験
体力一日15kg背負って20時間以上行動したことある
標高差1500mを一日で往復したことがある
暗闇の中で4時間以上行動したことがある
食べなくとも、寝なくとも行動したことがある
起きてすぐに行動できる
グローブを着けたままノットを素早く作れる。

これだけできたら多分大丈夫ですね

若者は挑戦して見てください。不安な人はガイドを頼みましょう。
では頂で待ってます。