チーム「Link∞UP」は日本と北米の‘愉快で有益な’「マウンテンライフ」情報を日本と英語圏において共有をすること。 その生活を‘一生懸命楽しんでいる人達’のコネクション強化を図ることを目的に活動しています。 日本や北米でのマウンテンライフについて情報の欲しい方や私達に興味のある方はお気軽にご連絡下さい。

2018年11月30日金曜日

Vol.150 世界のアルパインクライミングの学校や師弟制度

ご無沙汰してます、谷です。

冬に入って来ましたが、いかがお過ごしですか?
冒頭の写真はリンクアップの仲間のボブといったDark Nutueというレイクルイーズにあるミックスライン、ロッキーは冬全開ですね。

さて昨今の東京五輪へ向かってのクライミングブームすごいみたいですね。
色々な話をよく耳にするのですが、ジムがあるというのは素晴らしいですね。
ある意味、登山の講習会や学びの場が駅前にあるわけですから。
僕が始めた頃は、登山を学ぶと言うのは大学や社会人のクラブ(山岳会)に属するか、ガイドの講習会くらいしか選択肢がありませんでした。
ここ10年でインドアクライミングに関しては門戸は非常に広がったと言えるのではないでしょうか?
さてそんな中、アルパインクライミング(氷雪を含む)を学ぶ場所というのは未だに増えていません。というか国によっては廃れていく傾向にあるようです。
理由は非常に簡単で、不確定な要素が高すぎる。これに尽きると思います。
もう少しわかりやすくいうと自分の能力でどうにもできない危険が存在し、
それに巻き込まれて怪我または致命的な事態に陥るということです。

トップクライマーのヨセミテビックウォールフリーの記録が一番いい例だと思います。
自分の限界を押し上げる行為の中で不確定な要素(雪崩、落石、気象など)
を比較的避けた状態でトライできる、また怪我をしたとしても救助などが比較的しやすい(天候が安定している、雪崩の危険がない、携帯が通じるなど)
今後このジャンルがもっと伸びていくのは間違い無いでしょう。

さて話を戻してアルパインクライミングはこの全てを自分で受け止める行為とも考えられます。
特に初登攀、初登頂などは情報が少なく、そのエリアの雪質、天候、地形の影響など
全て受け入れ、しかも事故があった場合、足の骨折でも、その結果、歩けない→凍傷、低体温→死亡と簡単な怪我でも死に至ります。
それを全て加味した上で最大限安全なルートを選び、最大限、限界に近いラインを引いていくわけですのでベクトルとしては真逆になります。
だからこそ壁を抜け頂上に立った時の達成感は何者にも代え難いですね。

しかし、みんな死にたくない。
なのでパートナー探しに苦労しますし、師弟関係や登山学校(ガイドになるためや商業的なものは除く)など学びの場は非常に限られます。


アルパインクライミングには色々な要素が本当にあって、全てが経験だけで語れないのですが、やはり経験のあるクライマーといくのが一番の学びであることは変わりません。

僕らガイドはアルパインガイドであってアルパインクライマーでは無いですので、
ガイドに学んだところでアルパインクライマーを目指す若者にはあまり意味のないことかもしれません。やはり今も第一線で登りたいラインを探し、日夜登っている人と一緒に登るこれが一番いいと思います。

僕が日本にいた時はウィンタークライマーズミーティングがそれに当たっていたと思いますが、これはイギリスのクライマーズミートにアイデアを得ており、昔は2年に一回だったクライマーズミートも今は毎年あり、一年は夏、一年は冬、というようにおこなられています。
世界各国から生きのいいクライマーが集い、地元のクライマー達と登り、交流を深め、そしてパートナーを見つけ、ヒマラヤなどで素晴らしい結果を収めていく。素晴らしいシステムだと思います。

ただこれじゃここに参加するってことは国代表じゃんって話ですが、残念ながらそうですね。参加する時点である程度のレベルを求められているのは間違い無いでしょう。

じゃ俺どうやったらそこに行けるの?って話ですが、日本以外の他の国では次世代アルパインクライマーに対してどのような取り組みがおこなられているか見てみましょう。
さーて前置きが長くなりましたが、ここからが本題ですね。


アメリカ/ Alpine Mentors

期間 2年
費用 無料
年齢制限 昔30歳までって書いてたんですが、今見たら見つからないですね。
発足 2012年
詳細はリンクひらけばですが、基本的に世界的アルパインクライマーのスティーブ・ハウス氏が主宰するプログラム。
今年は2グループに分かれて動いてるようですが、講師がパタゴニアアンバサダー目白押しなプログラムですね。
世界中の山々が登れるすごいプログラムですね。
First ascentも結構してますね。

スロベニア/Slovenian young alpinists group ウェブサイト見つからず
期間 3年のプログラム 
費用 不明
年齢制限 不明
発足 2012年
Alpine Association of Sloveniaの中から10人の若者を選出し
彼ら自身で登る山を決め、それに向かってのトレーニング、や装備、技術など全ての面での技術を支援する、とのことです。
熱いですね東欧は。

ニュージーランド/New Zealand Alpine Team
期間 3年
費用 不明ですが多分無料
年齢制限 18−27歳まで
発足 2012年
3−4人の少人数でなるプログラムで、ヨセミテ、カナディアンロッキー、ペルー、パタゴニア、ヒマラヤと世界各地で登り滑る。ニュージーランド人のみも書かれてますね。
参加するには書類選考以外にトライアルがあるようですね。トラッドと体力テストが核心のようです。
詳しくはリンクで。
このチームとはロッキーのアイスで数回会いましたが、マジですごいですね。話を聞くとやはり NZもアルパインクライミングが廃れてきててなんとか若いクライマーを死なないように、育てていくプログラムを必死で考えてるっていってました。

オーストリア/Naturfeunde Alpinekader ウェブサイト見つからず
期間 3年
費用 不明 
年齢制限不明
発足 2012年
最初の年はスポートクライミングから始まり冬山登山、2年目からは遠征が多数あり
2014年はペルーに行ってるようですね。

ここまでは5−8年ほどで立ち上げたプログラムがほとんどです。どの国もアルパインへの危機感があるのでしょう。

あとドイツ、フランス、スペインがあるんですが、すべて似てます。
フランスは1991年からのプログラム、スペインは1997年、ドイツは2000年からです。
このほとんどが国の山岳会によるもので(ドイツ山岳会など)
2−3年のプログラムです。次世代の6人の男性、6人の女性からなるグループで構成されてます。
残念ながら、カナダ山岳会は、リーダーシッププログラムという名前ではあるのですが、
有料で、一週間のコースが年複数回あるだけですね。
ただ登山や雪崩教育の奨学金はかなりあるので、その部分はいいですね。
この話はまだいつか話せたらいいですね。

最後に、
全てを網羅することはできませんが、
こうしてみると2−3年の長い期間でじっくり育てようとしてくれてるのがわかります。
そのほとんどが無料であり、若い世代に限定した特別なプログラムですね。

強くなるためには山に行って自分の限界を押し上げて行くわけですが、アルパインはなかなかそうはいきません。
なぜなら失敗は成功の母と言いますが、
アルパインクライミングではどんな簡単なルートでも
失敗が重大な結果(死)に繋がるという非常に危険な行為でもあるからです。
なので死なない程度に失敗という話はなかなか難しいわけです。


やはり若い頃は無茶をしがちと言いますが、まさに若い時こそ、こういう第一線で活躍するアルパインクライマーと師弟関係を結べる場は素晴らしいと思います。しかも複数年。

他と少し比較しますが、
ロッククライミングで限界を押し上げる場合、
技術がしっかりしていれば、比較的安全に学ぶことができ、
講習も頻繁です。上級者と必ずしも一緒に登る必要性がなく、それでも上手くなっていきます。アルパインと比べ成長の伸び率が早く今やジムはどこにでもあります。
雪崩や落石に遭う確率も格段に低く、骨折しても凍死する可能性は低いと言えます。
しかもロックはムーブが多彩で楽しい!!ここがアイスやミックスと違いですね。
写真はザイオンのクラック。

山岳スキーは限界を押し上げていく場合、同じような危険を伴いますね。危険です。雪崩、少しのミスも命取りですね。ただ業界としてコミュニティーとして学ぶ場所、メーカーのサポート、そしてなりより競技人口などは格段に山より多く、ゲレンデで練習できる、スキー競技のバックグラウンドがあるなど、いろんな意味でも、まだアルパインより学ぶ機会は多い気がします。これに関しても必ずしもメンター(師匠)を得る必要性はなく、仲間で技術をある程度まで押し上げて行くことができると思います。(もちろんいたほうが早い)

さらにいうとアルパインクライマーは一日、いや数日以上全ての危険に晒されますが、
スキーは数十分だけその危険に晒されてることになりますので、やはり危険度で言えば
アルパインクライミングが流行らないのはよくわかります。
写真はカリブー氷河縦走の一コマ。


しかしながらアルパインクライミングというのが登山の原点であり、頂上に行くためには
全てをこなし、全ての危険を受け入れ、そしてそれを乗り越えていく力が必要なわけです。
そのアルパインクライミングが流行らなくてもいいですが、少しづつでも育て応援できるようなコミュニティーを作っていけたら素晴らしいですね。
今回、他の国の登山の教育プログラムを調べてみて改めて若手アルパインクライマーを育てるって難しいんだなと思う反面、やはりそれを頑張っている若者を応援したいと強く感じました。
さて僕もガイドだけでなく、自分の登りも追求し続けないと、アルパインメンターにはなれないですね〜。がんばろー。
ではまた次回。










2018年11月22日木曜日

特別レポート「グランドキャニオンでトレラン Rim to Rim to Rim 78㎞」



皆様、初めましてリンクアップフレンドのタカヤです。私は現在ワーホリでカナダに滞在しています。先日まで約2ヶ月間のアメリカtripへ行っていました。特別レポートとしてアメリカトリップの模様を「グランドキャニオンでのトレイルランニング」と「アメリカの名峰登山」に分けてご紹介したいと思います。今回はトレイルランナー必見のグランドキャニオンでのトレイルランニングをご紹介したいと思います。


ルートは大体こんな感じです。




1人旅でパートナーもいない、技術もない私にできることはなんだろうと考えた結果がピークハントとトレイルランでした。

チャレンジしたのはグランドキャニオンのRim to Rim to Rim 78km
グランドキャニオンと言えば数億年という歳月が造り上げた大自然の造形美の大峡谷でユネスコ世界遺産にも登録されており、North RimSouth Rimの2つの入口があります。それを1dayで往復するコースをRim to Rim to Rimと呼ばれています。やっている日本人が少ないのも魅力的でした。過去に熱中症で何人もの人が亡くなっており、実際に今回も谷底の気温は40度近くあり熱中症の危険があり、さらに毒ヘビやサソリも生息しているため足元にも気を遣う必要がありました。

ルート内容は、North Rim2529mNorth Kaibab Trail Colorado River750m)→South Rim 2100mBright Angel Trail→North Rimの往復約77km。



当日は朝3時半にNorth Kaibab Trailを出発しました。気温は、1桁で走るには丁度良い気温。風邪を引いていたが体調は良かった。



コース自体は良く整備されていて暗闇でも快適に降ることができたが、何箇所か崖になっていてスピードを出しすぎによりつまずきで滑落に注意しなければなりませんでした。
途中アナグマに出会いびっくりさせてしまったが、夜間行動をすると普段は見られない動物を見られるから割と好きです。最初のキャンプ場Cotton wood Camp groundを通過したところで明るくなってきました。

夜が明け遥か彼方に見える赤焼けたSouth Rim

初めて見た野生のサボテン(花付き)

ピーピー鳴くコウモリ

午前中、谷底には日が差し込まないがもう蒸し暑い。直射日光を浴びるよりはマシだけど。



Phantom Ranchには4時間半で到着しました。1泊2日を目指す人はココを目指すといいかもしれません。シャワー付きでご飯も美味しいらしい。人気のため予約はお早めに。

割腹の良いリス
リスに噛まれて狂犬病になるケースもあるらしいと看板に注意書き有


遂にコロラド川を越える




ココから10分ほどでBright Angel Camp Groundを経由して、遂にコロラド川を越えSouth Rimへ向かいました。ここからはトレイルを選択することができますが、S.kaibab Trail は日陰が少ないと事前情報に書いてありBright Angel Trailを進むことにしました。




日に当たると汗が一瞬で乾く世界。日差しが痛いしとても暑い。突然の鼻血に見舞われなかなか止まらず20分かかってようやく治まりました。
暑い。Indian Garden Campgroundでは豪快に全身を濡らしてみた。すると快適に走れることがわかる。がすぐに乾く気候。

振り返ればあんなに遠くにNorth Rimが見える

広大な景色が広がり、ココでまた鼻血が違う穴から出て20分ほど休憩しました。



出発して10時間半でようやく反対側のSouth Rimに到着しました。この時すでに足が悲鳴をあげていた。栄養、水分を補給し、身体を休息させる。辛い身体に鞭を打ち、全身に水をかぶり再びNorth Rimへ向かって走り出しました。
溢れかえる観光客を避けながら谷底へ向かいます。鼻が塞がっていて思うように呼吸が取れなずすぐに喉がカラカラ。風邪も悪化し始め咳が止まらない。苦しい状態の中、なんとかBright Angel Camp Groundに到着しました。水を3ℓ補給し、また水をかぶるが水分はすぐに蒸発していく過酷な環境が続く。South Rimからここまでは、日陰が少なく常に日光に照らされるため、熱中症には注意が必要です。Phantom Ranchの水は枯れていました。

ミュールに遭遇。割と珍しい

可愛いトカゲに疲れが癒される


辺りは暗くなるも谷底では経験したことのない熱風が私の体を蝕み、ビバークしたいところだが、暑いし地面には毒ヘビやサソリもいるので走り切るしかないのが現実でした。途中、小川が流れているが、濁ったぬる水で飲めるような代物ではないです。水分を身体から逃がさないようにシャツを脱いで走ります。細かい砂が入り、擦れ、水膨れができて思うように走れません。ヒリヒリする痛みと今まで感じた事のない筋肉痛に襲われながら満点の星空の中、誰もいない空間を走り抜ける。なんだかとても気持ちがいい。長時間行動により胃が食べ物を受け付けなくなる。無理矢理栄養を水と共に押し流す。Cottonwood Campgroundに着くと案の定水は出なかった。普通はここで万事休すになるのだが、前の水場で多く補給しておいたのが項を奏しました。残り僅かの水を身体に吸収させる。谷底を抜けて、あとは標高約1300mを稼げばゴールになります。ひたすら登り坂を歩いていく。悪化した咳が止まらない。ゴールまであと少しだ。最後の水場もやはり出ない。標高が高くなり、上着を一枚羽織って丁度良い気温で良かった。いつの間にかゴール地点に倒れこんでいた。2時30分でした。
強烈な達成感と身体中の痛みと様々な感情や感覚が頭の中で駆け巡った状態のまま駐車場で寝てしまいました。
次の日、近くにいたおじいちゃんに記念写真を撮ってもらいました。

夜が明けて見事に逆光



少し離れたピクニックテーブルにて朝食。清々しい朝のはずが、小鳥のさえずりと共に『ピッ』と閉まるドア。カギは車の中。近くにいる人に状況を説明し、Visitor Centerまで乗せていってもらいました。セキュリティの人に助けてもらい、充実したトレイルランを終えることができました。

今回のルートは「Rim to Rim to Rim 78km」
タイムは23時間かかりました。普通にトレランをやられている方だと20時間は切れると思います。
7〜9月は40度を超えるためオススメできません。
スタート時間は0時が好ましいかと。夜間走って暑さを避け快適なRunを!
コース全体は、とても整備されています。水場は、Cottonwood Campground – Phantom Ranch間はありませんのでご注意を!その他の区間は数カ所設置されてあります。ただ、水が出なくなるトラブルもありますのでビジターセンターなどで事前に調べましょう。

装備 
普段通りの基本装備。ミスって熊スプレー持って行ってしまいました。給水速乾のタオルを持ってくと濡らして首に巻いたり、日光を避けるために帽子の下に被り大変役に立ちます。肌を焼かずに済んだ。

食料 
Clif Bar 11個、ミネラルサプリ10個以上、BCAAを溶かした水1ℓ、緊急用でポカリ粉末1袋 、持ち合わせで済ましていたがやはり、エネルギージェルが良いと思います。
もしも何かあった時のためにRanger Stationに届け出を出して行きましょう。届け出は義務です。

グランドキャニオンの大峡谷は約4000万年前からコロラド川による浸食が始まり現在見られるような峡谷になったのは、約200万年前のこと。そして今も尚、浸食は続いており、最古でおよそ20億年前の原始誕生時の地層を浸食しています。その歴史を肌で感じるにはやはり自分の足で谷底まで降りる他ありません。その景色はあなたをきっと感動させてくれると思います。体力に自信のある方は、ぜひチャレンジしてくださいね!




2018年11月15日木曜日

Vol.149 地獄のスライドショーとトシという怪人

こんにちは、イクメンくそやろうです!巷ではウルトラライトスタイルに凝る人を、親しみを込めて「ウルトラライトくそやろう」と呼ぶそうですが、「イクメンくそやろう」は普段巧妙に育児をしている風に見せながらも、自分の山は決して諦めない、ガチなくそやろうです。というか、まぁ、できる限り自分の子供の世話をするというのは、別に「イクメン」とかいうやつらの特権ではなくて、普通の「父親」としての役割の1つであるように思えます。しかし、そこを過大に表現してしまうとしたら、それは世間へのアピールや弁解であって、それはなんとなくダサい気がします。

御岳での子連れハイキング

しかし、なぜそんなダサいことをするかという部分を少し掘り下げると、くそやろうの中に潜む闇の輪郭が浮かび上がってくるように思います。それは、時に子供をほったらかして登山やクライミングという危険な遊びに興じている罪悪感を誤魔化すためであったり、自身が社会の一員でありその責務を全うしているんだぜ、というポーズをとっておくためだったりするのでしょう。こうして私がしょうもない記事を書いている間も、私は何らかの共同体の一員であり、そのための貢献を求められているのです(このリンクアップのブログなんかもまさにそうですね)。そういう意味で、子供を置いて山に行くということが最も自然なのは、そこへ行くことが、所属する共同体もしくは公共の利益になることなのです。

それには例えば、「マンモス捕まえてみんなの食糧にすんべ」とか「ここ寒いから南下すべし。俺ら命かけて南の方偵察してくんぜ」とか「あの崖に生えてる草、マジ万病に効くから採ってくんぜ」とかいうような、大義のようなものが必要なのです。さすれば、我々は「普段はイクメンやってるから」とか「独身だから」とか言い訳せずに、野山を駆けずり回ることができるのです。なぜならそれがその共同体にとっての生きる道であり、正義だからです。

最近は近場で週一クライミングが限界

しかし、遺伝子組み換えやハウス栽培、AIによって選別される摘み取り作業などで高度化した農業、マシーンで餌やりや屠殺から解体まで行われるような食肉産業、バイオだとかゲノムだとかで成長を続ける製薬会社とかによって、そんなことは全くもって不要なわけです。むしろ、時には遭難により救助にあたるものの身をも危険に晒し、時には怪我や病気によって後々まで障害が残るようなリスクを負ってまで、まるで何の生産性も無い行為に身を委ねることは、どちらかというと悪であり、控えめに言っても害悪であるような気さえします。

私はたまに思う。「人工知能とか、ゲノムとか、ドローンとか、フィンテックとか、マジもうどっかいってくれ」と。そして、「マンモスと未知なる土地への希望と不安、そして崖にしか生えていないような薬草をもっとくれ」と。おそらく、私は生まれてくる時代を間違えたのでしょう。なんだか、いつも同じような愚痴を書いているような気がします...。

公開・トシのポケットの中身

前置きが長くなりましたが、そんなような想いをオブラートに包んで表現すべく、私も怪人・山田利行(以下、単に「トシ」とする)の巧妙な罠にハマり、10月に名古屋の地へ赴きました。テーマは「いかにして現代におけるマンモス狩りを正当化するか」です。正直なところ、私はスライドショーなんてやりたくなかったし、自らが主体的になってこのようなイベントに参加するようなことは、当初、彼から世間話的な感じで「やってよ~」みたいな綿毛のように軽いノリのメッセージに、「しょうがねぇな」的な返答をした時は思ってもみませんでした。

そもそも、私にはわざわざ人前で話すような大それた体験や、人のためになる機知に富んだ小話のストックが無かったし、それでも笑って許してくれるような寛容なお客様像も思い描けませんでした。ブログであれば無料だし、読みたい人だけが読んでくれればいいし、その反応も「いいね」のだとかリーチだとかビュー数だとかの無機質な数字と向き合うだけで良いのですが、リアルなイベントとなると話が違ってきます。物理的に人が動くし、反応は表情に如実に表れるから、逃げようがない。確かにスライドショーも興味のある人だけが来るのでしょうが、お金を払って来てもらうというのは、結果に対する心理的なプレッシャーが重いのです。しかも、言い出しっぺであるトシのビジョンはブロッケン現象のように朧気で掴みどころがない。その割にイベントオーガナイザーの朝日様のような善意の第三者を巻き込んで、話を進めている。

瑞浪は午後の「原住民」に苦戦するクライマー・トシ

こいつは危険だ。なんとか抜け出す術はないかと最後まで模索しておりましたが、最終的に朝日様が会場を押さえてしまったので諦めることにしました。それまで私なりに必要最低限のギリギリの積極性でこの企画に携わってきましたが、これを機に「やらねば」と思うようになりました。単純に、このスライドショーなるものが惨めな結果に終わるのが恐かったからであり、ようやく当事者意識が生まれてきたからでもありました。ただ、最も大きかったのは、これが名古屋というトシの地元でやるということで、彼のつながりによる集客がある程度見込めたから、というのがありました。私ともう1人のメンバーであるケンムラさんには名古屋在住の山関係の知り合いなどほとんどいなく、結局のところ集まっても集まらなくても、トシの「おかげ」や「せい」にできるというのは心理面でかなり楽でした(笑)。

そして、その結果、当日はほとんど満員になりました。当日自分が話したことは既に脳内メモリーから消去しましたが、私が記憶している限り、来てくださった方々の反応は控えめに言っても悪くありませんでした。だいたいの講演会にありがちな「すごい人のすごい話」ではなく「身近な人の楽しい話や頑張ってる話」みたいな内容だったこと、本当に三者三様に内容が違ったことが、新鮮に写ったのではないかと思います。

岩場のテラスから見るのどかな田園風景

私にとっては、何より名古屋のクライミングや登山のコミュニティに触れられたことが新鮮でしたし、普段の「いいね」やリーチなどからは見えてこない、普段ブログを読んでくれている方々に初めてお会いしたり(メンバーのケンムラさんに会ったのも初めてでした)、カナダ、白馬時代のお知り合いと再会したりする貴重な機会となりました。中にはこれからカナダに行くことやガイドになることを真剣に考えていて、遠方からわざわざ足を運んでくださった方々、現地でショップを営む方、山スキーのようなニッチなジャンルに情熱を注ぐ若者たちにも、飲みの席ではありますが会話することができました。そんな当日足を運んでくださった皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました。

とはいえ、こういう講演会を当事者の一人としてまたやりたいか、というと断じて「否」であります。少なくともスピーカーとしては御免こうむりたい。この企画が無事実現できたのはメンバーと朝日様(と当日手伝ってくれた若者)それぞれの貢献によるところが大きいと思うのですが、何より怪人・トシの情熱によるものであるとも思います。トシというのは常にニヤニヤしていて細かい部分はテキトーなのですが、ポジティブシンキング、実行力、義理堅さと情熱はそれを補って余りあり、実はかなり真面目な人間です。今回はそんなトシのために集まってくれた人がほとんどだったのではないだろうか、と思うのです。

公開・トシのワードローブ

「これ無理だろ」というようなサイズのマンモスに「行けるっしょ」くらいのノリで一人無謀に突進しているかのように見えて、実は後ろからのサポートと勝率をそれなりに計算している。そして実際に人と結果がついてくるような不思議な男というのが、今回私が見たトシ像でした。そして山もクライミングも頑張っているのが、彼のスライドショーや無駄にゴツイ体躯から伝わってきました。

そんな訳で、だらだらと長くなってしまいましたが、そろそろ息子に歯を磨かせて寝かしつけなければいけませんので、終わりにしたいと思います。これからもそんなトシとリンクアップを宜しくお願いいたします。

追伸:北海道出身のリンクアップメンバーでありかつイクメン山スキーヤーとしては初の「5.12aを登る」という私の壮大な目標は、超お買い得な12a(11dとも言う)を2テン(ムーブは全部できる)というところまで近づいております。今年は雪が少ないので立山は諦めましたが、12月までにはこれを片付けて気持ちよくスキーをしたいと思っておりますので、冬将軍様、どうか宜しくお願いいたします。

2018年11月7日水曜日

Vol.148 リンクアップスライドショーを終えて 企画裏話編


リンクアップフレンドである切り絵アーティスト伊藤美沙さんとの
コラボで作成したリンクアップステッカー
日本とカナディアンロッキーの最高峰である
「富士山とマウントロブソン」
当日、美沙さんへの活動募金としてステッカーを配りました。
こんにちは。日本帰国中の山田です。先日、今年度の一大イベントであったリンクアップスライドショー「カナダの山、日本の山」~仕事、家庭、時間 三者三様の自然との向き合い方~を無事に終えることができました。
講演に来て下さった皆様及び、協力してくれた朝日さんにまずお礼申し上げます。
終わってみると楽しさと充実感しかなく、あっという間だった気がします。が、それなりに苦労もありました。今回はそんな裏話(内輪ネタ)をここで共有したいと思います。

裏話その1・「半年もの構想時間」
 この話が持ち上がったのははっきりとは覚えていませんが、兼岩がFB上でメーリスを作ったのが4月だったので、足掛け半年以上もメンバー三人でこのイベントに対して考えてきたことになります。リンクアップを結成して3年が経ったこともあり、発起人としては「何か形になることをメンバーと共にしたい」という気持ちが大きかったのです。周りが呆れるくらいオプティミストである私は当初はイベントに対して気楽に捉えていましたが、メンバーの真剣な意見を取り入れ、話し合い、それらをまとめていくには多くの時間が必要でした。「物事はそれにかけた時間と労力に比例して満足感を与えてくれる」そんなことを実感できる充実したイベントになったと思います。

裏話その2・「俺らってなんの集まりなんだ?」
 今回のイベントで最も苦労したのが「テーマを決める」ということです。従来の山のイベントならば、自身の遠征の話やら今までの山行の話をテーマにすればいいのですが、私たちはチームでありながらやってることも住んでいる場所もバラバラでした。それがリンクアップの自由で面白い部分であると自負しているけれど、一つのメインテーマに沿って話すというのは明らかに矛盾していました。3年もやっていると結成当初の命題などは頭の片隅に消え去り、俺達はなんで一緒のチームに居るんだ?という愚問にぶつかってしまいました。一度初心に戻り、リンクアップは「カナダの山、日本の山のマウンテンライフの情報を共有すること」を目的としていたことを再確認しました。(知らなかった人はこちらへ)。更に僕たちメンバーに共通するものを考え、「メンバー全員がカナダで暮らしたことがあるまたは、暮らしている」、「山で活動している」、「自然と向き合いながら生活している」という3つの共有点を見つけ出すことができました。それが一番素直な形でメインテーマ、サブテーマとなり、3人で1時間半という短い時間でしたが、カナダと日本のアウトドア情報を含めた、それぞれの自然との関わり方を伝えることができました。

裏話その3・「参加費は取るの?取らないの?」
 今回は1000円という参加費を頂いて開催しました。今イベントの最大の目的はリンクアップを知ってもらい、面と向かってカナダや日本のアウトドアライフを紹介したいということでした。営利団体でもなく、山の世界において無名の私達の講演に対して参加費を取っていいものか、すごく悩んだ部分です。今後リンクアップでイベントや活動を続けていく上で最も重要な部分でもあります。参加費を取ることによって、人が集まらなかったり、スピーカーとして良い講演を提供しなくてはというプレッシャーを感じる部分もあり、メンバーと真剣に話し合いました。しかし、発案者の私としては東京から来る兼岩、富山から来る劒村の交通費は捻出しないといけないという想いがありました。二人は「最悪自腹でもいいよ」と言ってくれ気は楽でしたが、実際は最後まで冷や冷やしました。結果、朝日さんの協力もあって、当日は満席でした。会場費を含め、二人の交通費も捻出することができました。お客さんの真剣な顔や笑顔を見て私たちの判断は間違ってなかったと思いました。



兼岩の講演


劒村のカヌートリップ

ロッキーのアルパインクライミング

満員御礼

話が大分長くなりそうなので、今回はここまでにしておきます。次回はこの続きとして、スライドショーのまとめや反省、メンバーへの想い、協力してくれた方々について触れたいと思います。

今回私たちに多大な協力してくれた登る人オーガナイザーの朝日陽子さんが講演会の内容を文章でまとめてくれました。非常に読みやすいので、是非一読して見て下さい。私の方はもう少し日本滞在を楽しみたいと思います。それではまた。

※ちなみに今回のブログで使われた写真は全て朝日陽子さん提供

リンクアップスライドショー レポート













2018年11月1日木曜日

Backnumber Vol.137 Hidaka Mountain Range - Hokkaido Ridge walk through Mt.Poroshiri to Mt. Fushimi

This story was written by Chiharu Hoshino

                                                                                                               Translated by Yumiko Mori

Despite its nothernmost location, Hokkaido experienced a sweltering summer this year. This year might be the worst as you can literally feel the heat even at the peaks of the mountains.
Adding to this crazy weather, we also had first snow fall at Mt. Kuro (Daisetsuzann) late in August which was surprisingly early for the year.


This time we embarked on our adventure that connects Mt.Poroshiri−Highest mountain in the Hidaka Mountain Range and Mt. Fushimi by the ridge.  Although there are multiple routes that lead to the peak of the Mt. Poroshiri, we chose the one starting from Birotori town side. (Furenai course) Since you will walk through the gorge, wading shoes are needed. Yet personally this trail is by far my favorite one. The trail takes you to the woods, gorge, flower beds and ridge that allows you to see breathtaking cirque view below. In a hot and uncomfortable summer, walking through gorge is the only possible escape from the heat. However it's also known as notorious route when it rains, rapid increase of the water volume makes it impossible for people to go through the route.



Walking against the stream like this.  Depending on the amount of the water it varies, but it was little above knee at the deepest spot for this time.

Poroshiri hut that locates at the end of the gorge. They don't serve meals but there is always a custodian staying in the hut. Reservations are required for an overnight stay at the hut.


 After pushing your way through the steep hill you will get to the ridge where you can see the beautiful cirque below including Poroshiri North Cirque and Seven Marshes Cirque.  You might spot a bear if you are lucky.

Mt. Totta Bestu  Photo above

The ridge connects from Mt.Totta Bestu, Mt. North Totta Bestu and Mt.1967.  Along the ridge, there are sections that's narrow,  sections that you have to push through dense shrubs and bushes and sections for scrambling. Overall my review for the trail overseeing the Hidaka Mountain Range are phenomenal. Furthermore there aren't so many people on the trail. We were the only ones at the peak of  Mt. North Totta Betsu.




After passing though the Mt.Pipairo, Mt.Fushimi awaits. In spite of the fact that this is the only stepped hiking trail in Hidaka Mountain Range, there aren't many spots you can obtain water. To make matters worse, depending on the season it can be very hard to get water once you are on the trail. Some sections on the ridge require you to go down along the gorge to get water. So I highly recommend you to do some research to know the spots that you can get water before your trip.


Thank you for reading!!