チーム「Link∞UP」は日本と北米の‘愉快で有益な’「マウンテンライフ」情報を日本と英語圏において共有をすること。 その生活を‘一生懸命楽しんでいる人達’のコネクション強化を図ることを目的に活動しています。 日本や北米でのマウンテンライフについて情報の欲しい方や私達に興味のある方はお気軽にご連絡下さい。

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2019年2月24日日曜日

Vol.162 日本滞在記 帰省前にぶらり 白馬からの熊本編

どうも、ボブです。
先週に引続き、しつこく日本滞在記をお届けします。
ジャパンスキートリップ無事に終了ー

・三日目 雨..orz
2日間のピーカンパウダーツアーから一転2日目の夜中から雨。
フリージングレベルは標高2000mくらいだった模様。
2月の初旬でこんな天気は例外のようで、そんな状況で山に入るのは
楽しめ無いけれでも、何もしない訳には、、
ってことで岩岳スキー場にて久しぶりにコブ練しました。

・四日目 八方尾根
昨日の雨天、曇天からの今日はどうなるのか?
予報では晴れ。しかし2000m以下の雪は死んでるだろうと言う事で
手っ取り早くアルパインにアクセス出来る八方へ行きました。
メンバーは我々+白馬在住3シーズン目の横井君&彩乃ちゃん。
どこを落とすかは雪質次第ということで探り探り。

まず一本目
アプローチ中にチェックして良い事がわかって南東面を滑る事に。
標高2100mくらいまで登り、100m程滑りました。
クリーミーなパウダー。
仕事中のてんぺいさん
 天気の良い山は最高です! 

そこからサクッと登り返して同じ面の別のラインをおかわりにと考えましたがさすが競争率の激しい八方。登り返す頃にはどこも食べられてしまいました。
悩んだ挙句、ぼちぼち下山も視野にいれつつ、北東面を落として行くことに。
丸山手前の2300mのピークから尾根沿いに2本目。
少し登ってガラガラ沢の右岸1800m付近から北東面に最後のランとなりました。

上部は風に飛ばされた部分もありましたが少し沢に入るといい雪あり。下部は降雨による雪崩の跡が見えましたが、面ツルのパウダーに見えたので思い切って突っ込んだらガリガリの雪崩の爪痕が隠れており、バンプに耐えれず大転倒しました。
降雨後どんなコンディションか読めませんでしたが、行ってみるとフリージングレベルより上は雪。その下も降った雪が溜まってる場所もありで、結果行って良かったです。
ガラガラ沢 右岸の尾根を落とす横井君

八方尾根に来た事はありましたが、不帰二峰を滑った際に通った記憶しかなく、その時は途中の斜面を見向きもしませんでした。今回再訪し、いい斜面をたくさん見れてまた訪れて色々滑りたいと思いました。でもやっぱりかっこいいピークのトップから滑りたいなぁ。
不帰二峰。一人抜け駆けして行こうか一瞬迷いました。
でもこの日は過去最高に悪いコンディションだったそうです。

・最終日 杓子
この日は最終日なので気持ち良く終えたいの一心でしたが、予報もいまいち。どこに行こうかかなり悩みましたが、だめ元で八方尾根から対岸に良さげに見えた杓子のJPまで行ってみる事にしました。長い林道歩きがあるので5時にスタート。
だらだらと林道にそって無心に歩き、八時前に1500mの台地。
1500の台地にて。既にお疲れ気味。笑

思いのほか視界は良く、JPまでが近く見える。

台地からJPまで近く見えるが、残すとこ1000mちょい。
鬱陶しいデブリをトラバースしてまずは右に見える杓子尾根のコルを目指します。
デブリーランド

思いのほか登行面が固く歩きずらくてルート失敗(ごめんなさい)。意気消沈気味でしたが杓子尾根のコルに上がるといい雪があるじゃないですか。天気も下り坂で連日の山行で皆さんお疲れ気味だったのがいい暗示。2300mくらいまで登り、滑りがおろそかになる前に気持ち良く北東面に伸びる沢を落としました。
今回いい雪求めて悩んで歩いたら北東面には必ずいい雪がある感じがしました。
なんだかんだ楽しめました。

小蓮華も良さげ

横井君、彩乃ちゃん、二日間ありがとう~!

下山後はNIKU雅にて肉っ

 なんだかんだ最後までいい雪を堪能でき、最後はいい肉を食べて、無事にJapowトリップを終え、東京に寄り道し、熊本に向かいました。各地でお世話になった皆さん本当にありがとうございました。また会いましょう!

当然熊本に雪は無く、生まれ育った五ケ瀬スキー場は2月というのにクローズ寸前だった模様。1年前に亡くなった祖母の法事の後は馬刺し、日本酒、馬刺し、日本酒、ずーっと飲んで食べて、飲んで食べて、遅れてきた正月のような日を満喫しました。
大好きな熊本の寿司屋にて 塩にぎり


何より、10年ぶりくらいに家族全員で集まれて両親が本当に嬉しそうだったのが印象的でした。
年に一度は集まりたいですね。
10年くらいぶりの菊池家集合

無事に2週間の短い旅を終えカナダに戻って参りました。
来るアルパインシーズンへ向けて鍛えなおしてまいります。
移民のために英語の勉強もしないと。
帰カナダ後、早速クライミング Coock's nest へ。
身体重たかったー 剛士さんありがとうございました。

ご清聴ありがとうございました。
以上、ボブでした。










2019年2月8日金曜日

Vol.160 カナダからの日本バックカントリースキートリップ総括

こんにちは秋山です。
ご存知!?のとおり私は普段はカナダでガイドをしておりますが、昨今の日本のパウダー、通称Japow人気のおかげで、1月中旬から2-3週間は毎年日本でガイディングしております。

ということで、今年のツアーがどんなんだったか? ゲレンデや山で見かける外人達の舞台裏を紹介したいと思います。

●ツアーその1
期間 : 1月21日~28日の8日間
場所 : 白馬で4泊、上高地の中の湯で3泊
お客様 : 8名(カナダx4名、アメリカ人x4名)
知り合った場所 : カナダ人4名とアメリカ人は時期は違いますがカナダのセルカーク山脈にあるロッジで知り合った方々。っていうかその内の2人はそのロッジのオーナーですね。あとのアメリカ人1人は2年前の日本ツアーに参加してくれ、その方のお友達をもう2名誘ってくれました。つまり基本全て会ったことある人、もしくは友人で新規の方はいませんでしたね。リピーターバンザイ。
マテリアル : 全員スキーヤー
滑った場所 : 白馬乗鞍スキー場からの若栗尾根、栂池高原からのヒヨドリ峰と上条、大渚山、安房山南面と北面、焼岳から中堀沢経由で上高地へ
総括 : 今年の白馬は例年より全然少ない雪で始まるまでビビりまくってましたが、前々日に40cm降ったのを皮切りに、60cm、30cm、20cmと毎日のように降ってくれたので、ラッセルはキツキツでしたが、どパウダーの1週間となりました。ふーラッキー!! 通常この1週前にもツアー組むことがあるので、今年はやらなくて正解でした。あぶねー。
お客さんも経験者が揃っていたので、滑りも、歩きも問題なくこなしてくれました。混成ツアーはだれが一人でもレベルが違うと大変なので、これは助かりましたね。

●ツアーその2
期間 : 1月29日~2月5日の8日間
場所 : 白馬で4泊、上高地の中の湯で3泊
お客様 : 8名(イギリス人x3名、スイス人x2名、ベルギー人x3名)
知り合った場所 : イギリス人3名とチャッタークリーク(キャットスキー)で知り合い、その3名が2年前に北海道へ。そして別の友人を誘って今年は長野にリピーターバンザイ。
マテリアル : 全員スキーヤー(3名がレンタル)
滑った場所 : コルチナの北側、栂池高原からのヒヨドリ峰経由で乗鞍スキー場へのトラババース、八方尾根、大渚山、安房山北面、飛騨高山観光(大雨の日)
総括 : どパウダーの1週前のツアーを大成功に収めた我々は意気揚々と白馬に乗り込みましたが、温かい気温で急激に新雪は沈降(しまってくること)がすすみ、軽く深いパウダーというよりは、しっとりとしたクリーミーなパウダーに変わっていました。
まー日本はたくさん降る分、クオリティーはどうしても時間の経過とともに落ちてしまいます。すぐに新しい雪が降るので問題ないのですが、お日様が出ているような日は日斜面の雪はすぐに腐ってしまいます。日本のパウダーは気温との戦いです!
私は知りませんでしたが、ベルギー人はベルギー語の他にみんなフランス語をしゃべることができます、スイス人もフランス語だったのでフランス語のツアーに。一緒に働いたケベック出身のカナダ人マーティンはフランス語が堪能なので助かりました。私のフランス語もツアー中に急上昇。ビアンフェ~。

ということで3週間に渡る日本でのガイディングでしたが、結果は大成功。東京で数日過ごしてからカナダに戻ります。2月中旬から4月頭ままで休みが2日間しかないのが気になりますが、気合い入れて突っ走ります!

ここからは写真でさっくり振り返ると。

バク降りの白馬ないと
ツアー1の顔合わせ
こんな感じの部屋に宿泊しました
白馬のしろうま荘にお世話になりました
食事は美味しくみんな大満足
ツアーの初日は1時間ほどかけてビーコンの練習
こんなのばっかでしたねー
白馬を離れて2.5時間離れた上高地に出発
車は2台、1台は荷物用
蕎麦屋でランチ
毎日こんなご飯食べさせてもらいました。
ダイエットしないとー
素晴らしい日本の疎林
お客さんを松本に落としたあとは2人で観光
ござる、ござるっていう語尾が気になる二人と記念撮影
ツアー2のミーティング
ここはフランス語でしました。うぃ。
大渚山で
若栗トラバースは最高の天気
大きいブナに癒やされる
1日はガイドミーティングを白馬のクラフトビール屋さんで。
ここコンセプトは良いですが高くて、味はいまいちでした。
ヨーロッパ人は文化が入り組んでいるからか、食事についてはチャンジャー。
結局子の人毎朝納豆食べていました
ガイドの着ているモンベルを気に入ってみんな買ってくれました。
モンベルアンバサダーとして役目果たしたか?
最終日は大雨が降ったので観光に。
飛騨高山にいきました
6500円の飛騨牛ランチ
自腹で払う気でしたが、ご馳走してくれました。あざーす。
毎晩いろいろな酒をみんなで試しました

ちょーかわいー、ッテ言葉をみんな気に入っていました

2019年1月16日水曜日

Vol.157 八方尾根・今年の積雪状況

今週のブログ担当・谷が多忙につき、二週連続でカネイワがお届けします。連続して山スキーの話題になってしまいますが、何卒お付き合いくださいませ。ところで、前回書き忘れてしまったのですが、私は昨年11月末、シーズンの目標だった「5.12a」を一本(ようやく)登れました!という訳で、今は気分を切り替えてスキーを楽しんでおります。12aがようやく登れた話は、また雪が少なくなって話題に困る頃に報告させていただきます。

八方尾根から見た白馬三山(鑓は左に隠れてます)19/1/13撮影

さて、去る3連休(うち土日の2日間)、白馬に行って参りました。今住んでいる東京の西から白馬村までは高速を利用しても3時間半と実に遠いのですが、それでも行ってしまうのが白馬。それだけの魅力があるのは、3千メートル級の後立山連峰が村から見えるロケーションに加え、アルパインエリアの多彩な滑走斜面、そしてほどよい木の間隔と急斜面を備えたツリーラインでしょうか。この地域は海に近いため冬は天気が悪いものの、その分降雪が多く、天気が悪い日は森林限界以下で遊べるのが良いところと言えるでしょう。ただし、雪があれば...です。

丸山ケルン。19/1/13撮影

では今年の積雪はどうかといいますと...直近では2015-16シーズン並みに少ないような気がします。山もどこか黒々としているし、標高の低いエリアではツリーホールがちらほら…。13日に崩沢を滑った時には、ゲレンデ並みのギタギタ具合とともに堰堤の出方にビックリしました。視界不良であそこに突っ込むと逝ってしまう規模のジャイアント堰堤が丸出しで、全く埋まっていませんでした。天気はというと、単発的な寒気は入るものの、この三連休も三日連続で晴れるという厳冬期にあるまじき有様。そんな白馬は八方尾根近辺から、今回は定点観測でお届けします。

唐松沢標高1300mあたりにある南滝。19/1/13撮影

早速ですが、八方尾根の北面は無名沢より上から滑ってきた場合に出くわす難所・南滝の様子です。13日は手前から複数のトレースがここに突入しており、戻ってきた形跡もなかったため、「行けるだろう」と判断して追従しましたが、こんな感じ(上の写真)です…。写真に写っているスキーヤーがいる辺りは斜度的にもかなり急(体感で55度はある)で、その下は氷が出ています。で、よく見ると誰かが落ちた跡がある(笑)。今後の降雪で状況は変わると思いますが、この時はかなり怖めでした。通過の状況は動画に収めましたので、良ければご覧ください。

3年前の同エリア。16/1/17撮影

そして、これが同じく寡雪だった3年前同時期の写真です。この時は滝を巻いたため画角と写っている範囲が異なりますが、どちらかというと3年前の方が雪が少なく、沢が埋まっていないように見えます。滑って通過した体感でも、3年前は何度かスノーブリッジを渡る必要がありましたが、今回はスムーズに滑れました。

唐松沢下部。16/1/17撮影

そして、私としてはこの時初めて唐松沢の巨大な、氷河のような「万年雪」を見ました(唐松沢は氷河の可能性があるようで、現在調査が進められているようです)。ちなみに、この日我々はDルンゼを滑り、白馬のジョニーさんが不帰2峰を滑りました。いやぁ、よく滑るよなぁ、というような雪付きだったと記憶しています。

不帰2峰。16/1/17撮影
同上。19/1/13撮影

こうして比較するとあんまり変わらない?かも知れませんが、やや今年の方が雪付きが良くて縦溝も少ないようです。なお、私は今回八方池近くにテントで前泊し、早朝からこちらへ向かいました。滑ったのは南峰(写真の左にあるピーク)からS字状に降りるラインです。このラインは2峰の中では上部の斜度が緩く、地形的にも雪崩を避けやすく、最悪転んでもなんとかなりそうなラインのように感じています(あくまで一度転んだ人の個人的な見解です)。

南峰の下部核心。18/2/9撮影
同上。19/1/13撮影

このラインは下部にわかりやすい核心があるのですが、こちらは昨年2月時のものと比べてみました。藪と岩の埋まり具合に多少の違いが見られるようですが、意外とそこまで変わらないような気がします。なお、今回は北峰のドロップポイントも確認しましたが、一昨年の3月にあったような雪のテラスは無く、いまいちどこから侵入して良いのかわからず行きませんでしたが、その翌日ジョニーさんが滑っていたことが判明。相変わらずです!

かりそめの「安全圏」で滑った斜面を振り返るパートナー。19/1/13撮影

滑った後に訪れる安堵と充足感は格別で、パックしていて難しい雪の時もありますが、広大な冬の唐松沢は何度でも来たくなる場所です。もしかしたら今まで歩いたり滑ったりした場所の中でも一番好きかも知れません。今シーズンはあと何回来れるかわかりませんが、短い厳冬期のパウダーシーズンを安全に楽しみたいと思います。

当日の動画です:

2019年1月10日木曜日

Vol.156 おそらくは日本一遠い初詣へ

「遠い」という概念は難しい。もちろん客観的に計測できる距離的な意味もあるし、街だったら道路事情や渋滞、山だったら歩きやすさや難易度等の要因によって、時間的や心理的に感じられる遠さもあるだろう。距離的な面ではどこを起点にするかという問題もあるし、時間・心理面ではどの時期にどのような条件で行くのかによっても変わってくる。その中でヒマで自由な私(妻子は実家に帰った!)たちは、年始に立山へ参拝し、その懐で山スキー三昧できないか、という計画を立てた。正直日本一かどうかはわからないが、これはかな~り遠い初詣である。そして、これは結構な博打である。

雄山神社に向けてツボ足ラッセル

立山は秋、春の山スキーエリアとして日本では名高い。本州で初滑りと言えば「秋の立山」というイメージをお持ちの方も多いのではないだろうか。しかし、昨今の寡雪でアルペンルートが閉鎖になる11月末までに、滑るために必要な降雪が無い年も増えてきた。緯度的に低い位置にある本州では、ここでの初滑りを逃すとあとはゲレンデか標高の低いアプローチを耐え忍んでアルパインエリアを攻める藪スキー、そうでなければもう北海道に行くしかないだろう。ここ3年、我々は間違いの少ない北の大地を選択してきたが、今年は2人だけだったため、本州に留まる決定をした。

未明から始まる美女平までの格闘

冬の立山は遠い。一旦アルペンルートが閉鎖されると、立山登山の基地となる室堂まで、長野県側からは後立山連峰を越えて黒部川を渡らなくては行けないし、富山県側からはシーズン中ならばケーブルカーとバスでアクセスできる広大な溶岩台地を歩いていかなければならない。日本海に近い高山のため雪深く、ラッセルはなかなかに厳しい。森林限界を超えた場所でスキーをするにはある程度の視界も求められるが、冬の立山は基本的に天気が悪い。私の勝手な感覚では未だに厳冬期の立山連峰は「週一で晴れがくれば御の字」くらいの印象だった。木のような目標物が無い高山帯では視界が無ければ滑るのは難しい。つまり、行けたとしてもまともに滑れるかどうかもわからないのだ。

重荷を背負って道路をひたすらラッセルする

それでも今回は私が立山を目指した動機は主に以下である:

1. 人のいない所に行きたい(ゲレンデや街から離れたい)
2. 最近の厳冬期は日帰りばかりなので、山に泊まりたい
3. 藪が少ない快適なスキーがしたい
4. どうせ室堂まで行くならまとめて何日か滑りたい

そして、今回の天気予報にはもしかしたらそれが叶うかも知れない、という幾ばくかの可能性を感じていた。

交代制でずっとこんな感じ

3時過ぎに立山駅の駐車場を出て、夏道に取り付く。ザックの重さは約20キロ、重いのは主に食糧だ。最初はスキーで登り始めるが斜度があり、岩や倒木などの障害物が多い。新雪目算60cmの下には根雪が無く、踏むと笹や岩が出て、ツボ足だと踏み抜く。雪まみになり、やがてびしょびしょに濡れ、呪いの言葉を何度も吐きながら3回は帰ろうかと思ったが、かなりの格闘の末、3時間以上かけて美女平に立った。そこからはひたすら膝〜脛のラッセルを繰り返す。意味などを問うてはいけない。ただひたすら空っぽの頭と雪に向き合うだけである。作詞家だったら一曲書けるくらいの時間があったのかも知れないが、私の中では何も生まれなかった。12時半、出発してから9時間半かけて到達した1520m地点で幕営することにした。

元旦に見た富山市の夜景

明朝、雪が沈降し程よいラッセル具合になった弥陀ヶ原を歩き始める。遠くに富山市の夜景が見えて人里が愛おしく思える一方、同時に「そこには居たくない」という自分を確認し、ほどよい距離感なのだろうと納得する。元々興味が無いせいもあるのだが、正月という雰囲気はまるでない。パートナーが昨晩ラジオで聞いたという紅白の話をしてくれたくらいだったが、正直男女の歌コンテストもサザンの〆もどうでもよかった。そもそも一年の初めというのは便宜的なもので、そういう意味であらゆる一日には意味があるし、反対にさして意味が無いとも言えるだろう。とりあえず今日室堂に着いたとして滑れるのかどうか、それだけが私の関心ごとだった。

天狗平まで来た。室堂までもう少しだ

出発した頃は晴れていたのだが、次第に雲が出てきており、10時前に室堂に着いても立山は見えなかった。仕方なくこの日は沈殿とするが、幸い携帯の電波があるので、スマホの電池さえあれば娯楽的要素には困らなそうに思えた。いつも見ているライブカメラに写り込んで記念撮影をする。以降1月4日の早朝まで停滞が続いた。約2.5日間の長い停滞である。当初1.5日くらいは滑りたいと思っていたのだが、予報に反して晴れ間が見えることはなく、最終日を迎えることになる。

日課となったライブカメラ撮影

俗世間との接触を断つことが、冬山に入る1つの理由のような気がするのだが、なまじ電波と電源があるため、文明の利器を用いて近くのジムにポケモンを置いたり、Twitterを更新したりしていた。また、毎日悪い方向に修正される天気予報を見ながら、滑りに行けないことに苛立ちを覚えたり、このままではラッセルや歩荷といった労力に見合ったリターンがなくなる、などという焦りにかられたりした。ホテル立山は夜間一部灯りがともり、人の気配が感じられる。中に入りたい。こんなことなら例年通り日帰り山行を重ねた方が良かったか、などと後悔の念も入り乱れ、狂おしい時間を過ごした。

とにかく惰眠をむさぼるパートナー

一方で私のパートナーといえば実にのんきなものだった。いわく「ここまで来れただけで満足」と、三が日を過ぎようというのに初滑りどころか初詣すらできていないことすら、気にも留めていない。もともと滑走意欲がさほど高くなく、パウダー滑走よりもラッセルに燃える男なだけに、ある程度理解できることとはいえ、この男の無欲ぶりには驚かされた(このままでは結婚すらできないかも知れない)。思うに、余分な欲求や感情をコントロールできなくては、自然条件よりも自分のことを優先し、危険な結果を招くのが登山である。ただし、欲がなさ過ぎてもなすべきことはなせない。なすべきこととは単純に自分がやりたいことであるが、いかにしてそういうミスの起こりにくい状況を作るのか、というのが実は今回この時季に私が立山に入った最大の理由であった。

5日目にしてようやく晴れた北アルプス。一ノ越より見た後立山。槍も見える

冬の立山というのは実に滑りに適した斜面が多い。だけでなく、スキーでのシールを使ったアプローチもしやすい。しかし、雪崩のリスクも当然あり、自然発生だけでなく人為的に起こされた雪崩によって他者を巻き込んだり、逆に巻き込まれたりするおそれもある。そういう点で、11月の立山は人が多すぎる。自分のパーティだけならともかく、他人の行動をコントロールすることはできない。同時に人が多いことが、危険の認知にも影響をおよぼす。「他の人が行っているから大丈夫」だったり、「彼らと同じように自分をあそこを滑りたい」だったり、「人が見ているから上手い滑りをしたい」だったり、ただでさえ多い煩悩は他者に触れることで増幅される。人がいないからこそ、自分の判断と責任で安全な行動ができる。そこでできることを確認したい、というのが今回の私なりのテーマだった。


快晴の中、雄山神社に初詣へ

1月4日、冬型の気圧配置が終わり高気圧が近づいたことで、未明の空には星が瞬いていた。待ちに待った快晴である。とはいえ、一日天気が良くても一日中立山で遊んでいる余裕はない。この日が下山日となっており、正月から降り続いた雪により帰りのアルペンルートには、深いラッセル地獄が待っているのだ。滑るための行動は10時くらいまでとし、あとは脱出行に注力することにした。そういえばタイトルは「初詣」だったが、正直なところ私はそこまで関心が無く、どちらかというと「初滑り」が重要で、こちらの方が幾分か宗教的であった。

昨シーズンとほぼ同じとなった初滑りライン

雄山に参拝してから立山の最高峰である大汝山を往復し、滑ったのは昨シーズン、11月の立山で滑ったのとほぼ同じラインだった。南面の斜度40度くらいの程よい傾斜をした広い沢地形に、去年と全く同じような浅く、滑りやすい粉雪が溜まっていた。これを終えてから浄土山側に登り返してボウルをもう1本。出だし以外は緩傾斜で雪崩もあまり恐くない。結局のところ風の影響が少なくて程よい傾斜の斜面を、去年ソロだった時と同じように選んで滑っていた。雄山から東面の滑走と登り返しを省いたあたり、より安全な方向に振れたかも知れないが、それは時間的な都合でもある。

左が龍王岳、右のボウル地形を2本目の滑走とした

誰もいない立山を滑る感覚も、滑り終わった後にふり返って見るシュプールも素晴らしかったが、これで全てが報われたかというと、正直よくわからない。下山中も、下山してからも何かもやもやしたものが残っていて、それは今も消えていない。「5日間も山に入って、気持ち良い滑りもあって、最高でした!」と報告できれば最良に違いないのだが、自分が求めていたものとその結果について、未だに消化できていないものがある。

誰もいない室堂(この対面にはホテル立山があり、建物の中には誰かがいる)

おそらく私の不満は、主に思っていたリターンが得られなかったこと、そして、人のいない大自然の中に入りたいという欲求が満たされなかったことに起因するのではないかと思う。前者は自然に対して過度な期待や想像をしたことが原因であり、100%自分の問題である。新年ももうだいぶ明けてしまったが、今年も煩悩と向き合う日々が続きそうだ。一方で、後者は内的・外的両方の要因がある。山中にいても明かりの灯る建物や外部と通信できるスマートフォンがある状況にあっては、大自然など感ずるべくも無く、それを利用するほどに私は弱い。大自然あるいは「ウィルダネス」と呼べるような自然は、私が生まれた時から日本にはもう既になかった。黒部や立山はさらなる観光地化の方向で話が進められており、今後より俗化することは間違いないと思われる。そういう流れについて、いち登山者として、いち市民としてどのような態度をとるべきなのか、そして自分自身はどういう登山をするべきなのか、私にはまだ答えが出せないでいる。

弥陀ヶ原を下りラッセルして帰った

なお、1月4日の下山はたっぷり20時までかかりました。本記録の詳細はこちらにまとめましたので、良ければご覧ください。