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2019年1月21日月曜日

Vol.158 カナダのドライツーリングのチッピング、そしてチョークによるマーキングについて考える


久しぶりです。谷です。というかあけましておめでとうございます。年明けのガイドの繁忙期が終わったかと思いきや。なんかハリウッドの仕事?をする羽目になり、急遽先週の当番をどろどろスキーヤー兼岩に変わっていただいた形です。カズキほんまありがとー。死ぬほど忙しい二週間が終わり、ようやく普通のアイスガイディングに戻ってるところです。いやー日本でもCMや映画の仕事したけどハリウッド、金持ってますね。ミーハーなんで感動しました。

なんてことしているうちに、書くこと考えてたんですが、12月のアルパインクライミングの記録や今年発売のギア(ノミック、BDウルトラライトスクリューなど)をぶっ壊したりしまくったのでそれについてだとか、前に残した宿題の登山やガイド資格に対する補助金や奨学金など、色々書くことあるんですが、日本の忍者返しの一件を読んで、カナダでも沸き起こっている、ドライツーリングやミックスクライミングのチッピングやチョークでのマーキングについて書いてみようかなと思います。

かなり私見が入るので読みたくない人は、ここでやめた方がいいかもですし、読む人も気楽に読んでもらえたらと思います。

日本で今、問題が起こっているチッピング、グルーイングなど、自然にある課題を人工的に変えるという行為はこのカナディアンロッキーでも90年代まで普通に行われていました。また、それにより、強いクライマー(特にミックス)が生まれたという事実は一応歴史として知っておいていいと思います。ただ、今のこの地域の共通的な考え方は基本夏のクライミングに関してはチッピングはなし!ということですね。わかりやすい。

色々理由はありますが、遠くまで岩場に行く時間もお金もない、ジムないとこに住んでる、もっと難しいものに登りたい、または有名な課題を登りたい(でもみんなが使ってホールドがズルズルだから最初の形にするためにホールドを荒くする)などありますが、
やっぱりだめです。じゃあなたクライミング以外、別のことやればいいでしょって話なんで。クライミング以外にも楽しいことたくさんあるし、所詮は何も生み出してない遊びですから。遊びのために死ぬ必要もないし、遊びのために他のもを傷つける必要もない。ジムが近場になく、岩場に行くお金や時間ないというなら、働く、もしくはその中でできることすればいいじゃんって話です。
ちなみに日本って相当恵まれてますよ。カナダの真ん中の州マニトバなんかに生まれたら
クライミングエリアまで1500キロほど離れてますから。
他の平〜な大陸に生まれた人のこと考えたら文句なんて言えないですよね。

もうこれを話し出したら、世の中なんでこんななの?俺の思い通りになれと言ってるようなものでしょ。自然にあるものを、楽しませてもらっているわけですから、極力何も足さない、引かない。これ別にクライミングに限ったことじゃないです。僕の知り合いの女性が忍者返しの一件について、このような発言をしてて

「自分の娘が将来忍者返しをトライすることはもう永久的にできないと、人の手が加えられたことによってもうあれは忍者返しではない」

という趣旨を言ってたのが心に響きました。

本当に悲しい言葉だなと、クライミングが生涯スポーツと言われる時代、自分の子供たちとその喜びや大変さを共有できないというのはもうほんと、ダメです。そして一部の強強クライマーだけでなく、初中級者の意見や発言する場所もしっかり作らないといけないですよね。山はみんなのものですから(次の世代を含めて)。

さて、ここまではいいとして(ここまでですでに疲れたね。)ここカナダでも冬(アイスアックスとアイゼンによるスポーツドライツーリング)については曖昧な形でした。なぜなら、まずやる人口が圧倒的に少ない、そしてロッキーの岩質がドライツーリングに適していなかったこと、なのにもかかわらずアイスには非常に適していてアイスクライミングのメッカであることなどが挙げられます。またドライツーリング自体、自然の岩を引っ掻いている行為に等しいので、なんとも言えないですよね。やはりロックの方が岩に優しいのは間違いない。

ロッキーの岩質はほとんどが石灰岩で、石灰岩はご存知の通り、海の堆積(サンゴ礁みたいなイメージ)からできており、ミクロの穴が無数に空いており、脆く、急傾斜の岩場が多いです。そして染み出しがすごいです。その染み出しのおかげで冬アイスがどこからかできてきて楽しく登れる寸法な訳ですね。

ただ当たり前ですが、クラックなどの摂理は少なく、ナチュプロで登れるかというと、ほとんどがボルトになってしまいます。さらに摂理が少ないということはフッキングする場所がなく、かなりの数(特にゲレンデ)がドリルによって作られたものになってます。

え?じゃボルトはどうなのって話ですが、カナダはバリーブランチャード(キャンモア在住)パタゴニア初代アルパインアンバサダーの意見が結構、アルパインクライマーには浸透していて、確か2007年のバンフフィルムフェスティバルでの会合で強く述べてますが、もしアルパインの壁で、自分の実力では登れないブランクセクションがあったら俺は登らないと。それは次世代のために残しておくべきだと。そうこうしてるうちに自分のプロジェクトだったマルコ・プレゼリとスティーブ・ハウスが冬のノース・ツウィン登っちゃったよね(笑) みたいな。

未だにそういう経緯を知らないクライマーがボルトをうち足したり、ガイドが安全のためやガイドしやすいために、(特にラペル)打ち足してます、これに関しても議論は尽きないですが、(やはりよくない)脱線が半端ないので戻します。

ボルトないからってこれは無理でしょ。って話。

そして今回カナダで起こった議論の発端は、エルドラドという、キャンモアから車で15分のグロットマウンテンにあるドライツーリングゲレンデで起ったもので、ウィル・ガッドというレッドブルクライマー(キャンモア在住)がエルドラドのあるルートにおいてフッキングする場所に赤のマークをつけてレッドポイントをトライしていたところ、ここの岩場を開拓した一人ラファエル・スワロンスキー(カルガリー在住)ピオレドールクライマーがそれに対して発言したのが始まりです。

もちろん彼らは友達で同じBDアスリートでもあるのですが、畑が違う。同じ超高難度のクライミングをしますが、ラフはアルパインクライマーでウィルはコンペクライマー。違うアプローチで世界を牽引している彼らの意見にみんなが注目してました。

ラフの最初の発言はエルドラドという岩場はなるべく、ナチュラルなフッキングができるルートしか開拓していない。そしてアルパインクライマーのトレーニングになるようにマーキングをして欲しくない、スタンレーヘッドウォールでチョークの跡、見たことないでしょ?という趣旨でした。

それに対してマーキングした、ウィルの言い分はこうでした。

1.ドライツーリング(特に高難度は)非常にオンサイトが難しい。
2.ハンドホールドに比べてフッキングが非常に小さい。
3.手を使わずピックなためなのとブラインドのホールドをフックするのが極めて困難。
4.エルドラドはゲレンデであること(アルパインクライミングではない)


これやった人しかわからないのですが、僕このウィルの言い分よくわかります。
ピックには神経通っていないので、一撃を狙ってる場合本当に難しいですよね。

またラファエルも元々あったフッキングスポットを壊さないため(クライミングエリアやルートを守るという考え方の元)のチッピングについては
容認しているスタンスでした。これは初心者がそのエリアに行ってドライツーリングした場合、結構な確率でホールドや足の置き場を壊すので、それを防ぐために少し穴を大きくしておくということです。

でもその後、色々な意見が飛び交いましたが、まず開拓者であるラフが、エルドラドに数々のヨーロッパクライマーを連れてきていることに言及し、(ヨーロッパは残念ながらドラツーはチッピングのゲレンデが多い。)そのほとんどがマーキングの跡、またはドリルホールドがないことに感激していたそうです(特にスコティッシュクライマーのグレッグ・ボズウェルとフレンチクライマーのジェフ・マーサー)。そして彼らはそのほとんどをオンサイトして帰ったようです。

さらにハフナーやリアルビックドリップなど、先人たちは、チッピングしなくても登れるラインにしかボルトを打たなかったと。ロッククライミングと一緒ですよね。(ただ、これに対してもボルトはいいのって意見もある)それを踏まえた上で、マーキングがなくて登れる、ドリルホールドがなくても登れるならそれが一番いいよねということでこの論争も落ち着く方向のようです。なので今あるゲレンデは今後も維持されますが、今後は新しいチッピングによってドライツーリングのエリアができることはないでしょうね。


もともとウィルとラフは仲良しなので、まあカナダトップクライマーの意見がみんな聞けたのは良かったですよね。結局のところチッピング、岩を汚すマーキングを残す行為など、自然に対して山をやらない人が見ても傷つけたり、汚す行為は良くないですし、クライマーとしても自分以外の人がそのルートをトライするのを邪魔します。


ボルトないからってこれは無理っしょ2

日本も海外の素晴らしいクライマーを平山ユージさんたちがアテンドしたりしていますが、やはり一番いい日本の岩場に連れて行ってあげたいと思うのではないでしょうか?自分の大切な人をクライミング連れて行くときにチッピングしたルートに連れて行きますか?最初に戻りますが、これも一つの答えにならないでしょうか?チッピングのルート登りたいなら、そのルートに行きましょう。そこには歴史が詰まってます。ですが、今、登れるものをチッピングする必要性はやはりどう考えてもないのではないでしょうか?

こうやって他の国でも同じような問題が起こっていること、「知る」ということはとても重要なことかもしれませんね。

自分だけじゃなく、他の人の可能性を削いでしまうチッピングという行為。1000年後の進化した人類なら今、不可能な課題も登ってしまうかもしれないですね。ただ人類のせいでそれまで地球があるかわからないですが(苦笑)。

ではオチがついたところで、また次回。




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