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2019年9月27日金曜日

Vol.191 あなたが知らないヤマレコの世界

まだ暑いですが、確実に夏が終わろうとしています。最近はお盆になっても「あなたが知らない世界」が放送されないので、終わった気がしていないカネイワです。突然ですが、みなさま登山系SNSは使っておられますか?

私の勝手なイメージですが、ハイカーや登山者は多いものの、クライマー、沢ヤ、山スキーヤーなんかはこういうものをあまり使っていないイメージがあります。あるいは、アカウントは作ったものの、たまに閲覧するだけで投稿はしないという方も多いのではないでしょうか。記録を投稿するもしないも自由ですし、そもそもSNS自体に否定的な方もおられるかも知れませんが、今回はその辺にはあまり触れずに、おそらくあなたが知らないであろうディープなヤマレコの世界をご紹介できたらと思います。


私とヤマレコの関係

さて、私はといいますと、ほぼ登山初心者だった2012年頃からヤマレコを始め、今も使い続けているので7年半くらいの稀に見るどっぷり系ヤマレコユーザーです。私の場合、「登山」を体系的に学ぶため、同時期に山岳会に入ったのですが、そこでは計画、実行、報告(発表)までが一連の流れでした。その山岳会は4年くらいで退会してしまったのですが、その間に山行報告まで書かないとスッキリしないような人間になってしまいました。それも10キロに満たないようなハイキングからゲレンデでのクライミングまで、かなりどうでもいいようなものまで漏らさず記録してしまっています。


その結果、気がつけば約1%のヘビーユーザーになっていました。上の図は最近ヤマレコに導入された機能で登録された山行履歴から歩いた総距離を算出し、その分布を色分けしたものです。右の「レッド」に分類されているのが私で、左が私の総マイレージ数です。総距離でランキング付けされることに多少抵抗はありますが、それもここでは触れません。ただこれを見ると、登録はしたものの投稿はしないという方が半数近くおり、大半がライトユーザーであることもわかります。

前置きが長くなりましたが、ここでは私がなぜこのサービスを利用しているのか、私が思うヤマレコの便利な機能や使い方について、勝手に述べたいと思います。内容は現時点(2019/9/27)のものであり、今後のアップデートによって内容を更新する予定はありません。また、ヤマレコの全てを正しく説明して伝えるものでもありませんので、予めご了承ください。



ヤマレコをつける理由

絞ると、たぶん以下の3つです。

1.自分のための記録
2.他人の記録を見るため
3.自己表現

1.自分のための記録

第一に、これは言うまでもなく自分のためです。自分が過去にいつ誰とどこの山を歩いたのか、どのように登ったり滑ったりして、どれくらいの時間を要したのか。私はとても記憶力が悪いので、こういうものがないと忘れてしまうのです。「ヤマレコ」というはそもそも「山のRecord(記録)」という意味なので、目的にも合致しています。個人的なノートにしこしこと書き連ねていけば用が足りるようにも思われますが、客観的で比較可能なデータとその量、一覧性でヤマレコは手書きのメモより圧倒的に優れています。



2.他人の記録を見るため

次いで大きな理由となるのが他人の記録を閲覧することです。山というのは、時期やコンディションによって難易度が大きく変わるものですから、直前の記録や過去の同時期の記録が見れるのはとても有用です。ただ、歩くペースや登攀能力、必要な装備などは当然人によって異なりますので、他人の記録を見る際にはその人の実力を見極め、自分に置き換えて考える必要があります。また、これだけを材料とするのではなく、書籍やトポ等のより信頼できる情報、地形図や気象情報等のより客観的なものから、総合的に山行を計画すべきことは言うまでもないでしょう。



ただし、ここで言う「他人の記録」には1つの山行記録や1人のユーザーというだけでなく、何人もの登山者が何年間にもわたり積み重ねてきたデータというものも含まれます。この情報はとても参考になりますし、書物等では代替できません。

他人の記録を見るためなら自分の記録はつけなくても良いんじゃないか、という意見も当然あるでしょう。しかし、自分が閲覧しているものが先人の積み重ねである以上、そこに参加してその一部に貢献することは、未来の登山にもつながる有意義な行為だと私は考えます。もちろん、「見るだけ」もユーザーの自由です。



3.自己表現

Facebook、Instagram、Twitter...あらゆるSNSがそうであるように、ヤマレコの山行記録も1つの表現行為です。記録を発表する際に「誰かに認められたい」とか「拍手(Facebookでいう「いいね!」のようなもの)を多くもらいたい」という感情も当然あるでしょう。「承認欲求」という言葉はよくネガティブな文脈で使われがちですが、誰もが持っているものであり、コントロールさえ失なわなければ特に問題はないと私は考えています。

個人的には、山に登ることが目的であり表現するのはおまけ、SNSなどなくても山に登る、というスタンスであれば良いのではと思います。このあたりは、経験自体を重視する人と、それを表現することをより好む人がいるので、一概にどちらが良いとは言えません。しかし、誰かに認めてもらうため、自分をよく見せるために登山をするのであれば、それは致命的な結果に陥る危険を孕んでいるように思います。

このあたりを掘り下げたい方は以下の論文が参考になるかも知れません。

『佐倉葉ウェブ文化研究室』
自己顕示欲充足システムに飲み込まれる登山者と事故の危険性
~インターネットの普及による山行への影響について『ヤマレコ』を事例にして~
http://websitemap.sakura.ne.jp/monograph/monograph05.html



ヤマレコの利点

ズバリ1.自分の過去データを一覧できる、2.膨大な他人の過去データを一覧できる、この2つです。

1.自分の過去データを一覧できる

私がよく見るのは、自分が何日くらい山に行っているのかです。登山を本格的に始めた当初からヤマレコをつけているので、ここには私が行った山行データのほぼすべてがあります。山に行った総日数は約700日。職業ガイドだと年間200日入る人もいるそうなので、そこまで多くはないですね。ちなみに、会社員時代の最多日数が94日、バム時代で198日です。これには再就職や息子の誕生など、実生活の変化が数値として表れていて参考になります(自分の可能性を考える上で)。今のところ、現在が底で、この数には伸びしろしか感じていません。


どこの山域によく行くのか、も気になります。私の場合、バム時代を過ごした白馬と北アメリカ(ほぼカナダ)合致3割で、それに次いで地理的に近い奥多摩、奥秩父、好きなエリアである槍・穂高周辺が続きます。活動ごとにも分類されていて、山スキーとフリークライミングで半分以上であることもわかります。これは「その割にクライミング能力低いな」というのを繰り返し認識する良い機会になっています。



あと、これは結構ミーハーなのですが、私は登山を始めた頃から百名山をやっていました。というのも、最初はどの山に登って良いかわからなかったからです。今はこれだけを目標に登山をする機会は減りましたが、それでもたまに残っている山のリストや場所をチェックしています。


リストでいつどの山に登ったのかも見れるので、過去の記録を呼び出すときにも役立ちます。好きな山には何度も登るので、その時のコンディション、当時歩いた距離やスピードを確認したり、あるいはただただ思い出に浸るのにも使います。


個々の記録では一般道的な登山道であれば、GPSデータを取り込むだけでかかった時間やペース、合計距離や累計標高差を一発でデータで示してくれます。他人の記録を見る時であれば「歩くペース」によってその人の歩く速さや体力が測れますし、同じルートを歩いた自分の過去の記録と比較すれば、その時と今の体力レベルがわかります。私の場合、小袖乗越から雲取山頂の往復で自分の体力を推し量るなどして、よく活用しています(サブスリーが私の目標?)。


あとは自分が過去に歩いたルート、未踏のルートを確認するためにもよく使います。私は記憶力がほぼ無いに等しいので、こういった便利なものがないと自分がどこを歩いたのか、覚えていることすらままなりません。下図は私が割とよく歩く奥多摩エリアのマップです。主要な稜線ですら完全には押さえられておらず、支尾根や沢となるとまだまだ行くべき場所があることがわかり、モチベーションが高まります。もちろん、拡大すれば国土地理院の2.5万図になるので、これだけで永遠にトリップできます。


ちなみに、このマップは以下でも閲覧可能です(他人のやつはあまり面白くないと思いますが...)。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/showroute_rec.php?uid=23640

2.膨大な他人の過去データを一覧できる

ヤマレコ談議が終わりそうにないので、端折って最後にこれだけ紹介して終わりにします。私はこのデータに「山行計画」という機能からアクセスしていますが、それ以外にも閲覧する方法はあるかも知れません。ヤマレコに登録されたGPSログなどのデータから集められた、「みんなの足跡」データです。これは夏道、雪山などいくつかカテゴリーがあって、それだけを表示することもできます。


私が良く見るのは山スキーの記録なので、こちらを表示します。すると、全く違う世界が広がります。こちらは世界の「Happo One」(外国の方々は「ハッポーワン」と呼びます)で、かなり色んな所が滑られているのがわかります。自分で記録をアップしていて気づくのは、自分の記録したルートの一部は表示されていない、ということです。これは推測ですが、ここに表示されるには一定量のデータが必要なのだと思われます(詳しくはわかりません)。


他方で、稀ににデータとしてよくわからないもの、どう考えてもそんなに人が行っていないだろうルートが示されていることもあります。例えばスキーのラインとして以下のようなものはあり得ないと思うのですが、こんなラインもなぜか克明に記されています。もしかすると、データ入力者がジャンルの選択を間違ったのかも知れません。いずれにせよ、誰がどんな目的でこれらの場所を踏破したのかわからないため、読む方にもそれなりの読解力が求められます。「人が行っているから大丈夫だろう」と安易に活用するといけないな、と思う訳です(自戒を込めて)。


結論

かなり雑ですが結論としては、ヤマレコは記録をつけるためにはとても便利だし、データ量や閲覧できるデータもかなりすごい、しかし上手に付き合ったり活用したりするにはそれなりにコツもいる、というのが私の意見です。ヤマレコの魅力、おわかりいただけただろうか。それでは、長くなりましたので、この辺で。

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